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大量生産・消費から少量生産・消費への転換こそが、「豊かさ」を維持するための方策 - 「賢人論。」第106回(中編)河合雅司氏

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『未来の年表』、およびそれに続く『未来の年表2』、『未来の地図帳』(ともに講談社現代新書)が累計86万部のベストセラーになった河合雅司氏。同シリーズは、人口減少・高齢化時代を迎える日本に警鐘を鳴らすだけでなく、最悪の事態にならないための提言を個人や地域ごとに示している点に特色がある。中編のインタビューでは、本の成り立ちと、日本が向かうべき方向性について、語ってもらった。

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

『未来の年表』は少子高齢化への解決策を示す本でもある

みんなの介護 「輸血用血液が不足する」「食卓から野菜が消える」「47都道府県は維持できない」など、『未来の年表』シリーズは人口減少と高齢化に向かう日本のショッキングな未来を予言しています。危機を前にして、見て見ぬ振りをしがちな多く人々の目をひいたことがヒットの理由のひとつだと思いますが、いかがでしょう?

河合 人口減少も少子高齢化も言葉としては誰もが知っているわけですが、具体的に何が起こるのかを知る人はほとんどいません。なるべく理解しやすい例を挙げて説明しようと書いたのが『未来の年表』シリーズだったわけです。

この本の話ではありませんが、つい先日、あるコラムに「2045年には人口が7割減になる自治体が出てくる」と書いたところ、編集者から「『7割減』ではなく、『7割になる』の間違いではないですか?」と問い合わせがありました。日本の未来の深刻さがまだまだ理解されていないのだと実感しました。

みんなの介護 『未来の地図帳』の巻末には、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(2018年)」をもとに作成した「各市区町村の2015年→2040年の人口増減率」の一覧表が収録されています。そのうち、3万人以下の市区町村の中で70%以上の人が減る地域は23地域に及ぶとありますね。

河合 未来の予測というのは、研究者が中心になってなされますが、それぞれ専門分野の枠の中で話が展開されるために視点がミクロ的になりがちです。しかしながら、現実の社会はさまざまことが互いに影響し合ってます。

そこで、俯瞰的に未来を捉えることができないかと考えたわけです。もちろん、それを行うには、専門家の批評にも耐えうるようデータ的な裏付けをしっかりしなければならないわけで、プレッシャーはありましたけど、やる意味は大いにあると思いました。

みんなの介護 ただ、『未来の年表』をはじめとする3冊に共通しているのは、ただ単に未来の深刻さを訴えるのではなく、「こうすれば危機を防げる」という提言がなされていることも大きな特徴ですね。中でも、3つの書で一貫して語られる「戦略的に縮む」という提言には、大いに目を開かされました。

河合 ありがとうございます。これまでさまざまな未来予測の書籍が出版されていますが、多くは来る深刻な社会に警鐘を鳴らすだけでした。いま人々が求めているのは、「では、どうすればよいのか?」という点です。これまで、なかなか具体的な解決策を示すものがなかったので、ここには力を入れました。

最初に出した『未来の年表』は、政治家や官僚たちが何をすべきかを中心に書いた本です。これに対して、続編『未来の年表2』では、個々人がすぐにでも取り組めることを書きました。そして、地域によって人口減少の進み具合が異なるわけですから、『未来の地図帳』では、地域ごとに抱える課題が異なる点にアプローチして解決策を論じました。

人手不足に対応するには「24時間社会からの脱却」が必要

みんなの介護 『未来の年表』の最初の1冊が発表されたのは2017年ですが、河合さんはその中で「24時間社会からの脱却」ということを提言されています。当時はかなり大胆な提言だったのではないでしょうか。

河合 すでにそのころ、ファミリーレストランが24時間営業の店舗を減らしはじめたり、宅配便大手のヤマト運輸が労働者の確保に行き詰まり、再配達の時間帯の縮小など業務の見直しをはかるという動きが出ていました。

対応が遅れていたコンビニエンスストア業界で「24時間営業」の見直しが行われるようになったのは、つい最近のことです。

「24時間営業だからコンビニは成長した」という業界側の言い分もわからないではないですが、そうしたビジネスモデルが人口減少という時代の変化に対応しきれなくなっていることに気づかねばなりません。

みんなの介護 最近、コンビニで働く店員に外国人が増えた気がしますが、「外国人の受け入れ」では時代の変化に対応できないとお思いですか?

河合 足りなくなった人材を外国人で穴埋めするというのは、非常にトンチンカンな政策だと思いますね。足りなくなるのは店員だけではないですよ。

これからの社会で目を向けなくてはならないのは、「働き手をどう確保するか」ということだけでなく、「商品を買ってくれる消費者も減っていく」という事実です。

今後は「大量生産・大量消費」というビジネスモデルは成り立たなくなります。これからは「少量生産・少量消費」へと変えていかなければならない。量から質への転換こそが、人口が激減する中にあっても「豊かさ」を維持するための方策だということです。

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