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「武力が安全をもたらすものか、丸腰で行う用水路建設が教えてくれる」中村哲医師の言葉から考える“信念”


 アフガニスタンで銃撃され死亡した医師の中村哲さん(73)の遺体が8日夕方、成田空港に到着した。空港では外務省やアフガニスタン大使館の職員らが見守る中、一緒に帰国した中村さんの妻・尚子さんや長女・秋子さんが花を手向けた後、黙祷が捧げられた。

 中村さんの遺体は9日午前、地元である福岡に帰った。飛行機の到着に合わせ、福岡空港の展望デッキには近郊に住むアフガニスタン人ら約30人が集まり、「守れなくて申し訳ない」「あなたは私たちのヒーローです」などと書かれた横断幕や写真などを掲げた。


 中村さんの遺体は大牟田警察署へ運ばれ、検視や司法解剖などを終えた後、大牟田市の自宅に戻り、11日に福岡市内で告別式が行われる予定となっている。

 ネットでは今、中村さんが著書の中に遺した言葉が注目されている。


 「アフガニスタンでの事業をおこなうことによって、少なくとも私は、世界中を席巻している迷信から自由でいられるのです。世界中の人がとらわれている、その迷信とは何でしょうか。それは、一つには、お金さえあれば幸せになれる、経済さえ豊かであれば幸せになれる、というものです」

 「もう一つは、武力があれば、軍事力があれば、自分の身を守れる、という迷信です。武力が安全をもたらすものかどうか、丸腰でおこなう用水路建設での私たちの経験が教えてくれます。このような、実体験によって、私たちは、幸いにも、この強力な迷信から自由です」(『カラー版アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法九条』中村哲 岩波ブックレットから抜粋)

 中村さんは「いくら薬をつぎ込んでも飢えや渇きは治せない」と、医療だけでなく用水路事業にも従事した。その原動力について、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は次のように推察する。


 「例えば、我々が旅行で海外に行くにしても観光や余暇を過ごすなどいろいろな動機があって、中には『自分でこれがしたい』と自己実現・自己達成といった目的で行くこともあると思う。前述の中村さんの言葉は心理学でいう“信念”だと思うが、人生の礎になるような考え方、ベースが海外での経験の中で築かれたというのは、素晴らしい生き方だと思う。信念は物事の捉え方や行動に影響するもので、『自分がアフガニスタンのためになれる』と強く思ったことが原動力になったと思うし、そのことと人に喜ばれることが両立するというのはこれ以上ない人生だと思う」

 一方、この信念は簡単に持ち続けられるものではないとし、「いわば自分の心の法律だが、揺らぎやすいものでもある。我々が仕事をしていても、ひとつの信念を持ち続けてやっているとは言い切れないと思う。これだけ長い期間、日本から遠く離れた場所で、現地の人のために尽くすということは並大抵のことではない。自分の達成動機が行動とその結果によってブラッシュアップされ、現地の方々が抱く理想との相互作用でここまでやってこられたんだと思う」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

映像:襲撃現場付近の防犯カメラに逃走車

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