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ビデオ判定「VAR」はジャッジの敵か味方か ワールドカップレフェリーの見解は【インサイド・フットボール 第2回】

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VARはサッカーそのものを変えてしまうのか

また、VARを導入することでPKを含め得点に関わる反則数は増えると思います。それはワールドカップで取ったデータで明らかですね。

2010年ワールドカップ PK数 15
2014年ワールドカップ PK数 13
2018年ワールドカップ PK数 29

PKはVARを導入している他のリーグでも増えていると聞きます。ペナルティエリア内でディフェンスがボールにプレーしようとしていても、ボールに触れることができずに相手選手に接触し、その接触で相手選手が倒されるとPKを取られます。これまではディフェンスのチャレンジがボールに触れていたのかいないのか、わからず反則とならなかった事象が明らかになります。また、同じ理由でハンドの反則数も増えると思いますね。

VARは警告についての確認は行わないので警告数はこれまでと変わらないのではと思います。退場については、可能性があればすべての事象をVARはチェックします。チェック後に退場ではないが警告は必要だということになれば、警告が示されることになります。

独・ブンデスリーガのVAR用モニタールーム。ディスプレイが多数並ぶ Getty Images

レフェリーの視野外での反則が少なくなるのではないかと期待しています。同じようにPK数も次第に減ってきてほしいと思います。

もっとも、私はサッカーというスポーツそのものが変わらなければいいと思います。VARがあると、ディフェンスはリスクを冒せなくなりますよね。たとえば、シュートブロックに行こうと思っても腕を上げたり、広げることができないので不自然な動きとなりコースへの移動が遅れてしまうとか。そういうことが起こると、プレーの質を落としてしまうことになるのではと思ってしまいます。

VARが入ることで判定の精度は高くはなり、ミスも少なくなりますが、得点後すぐに喜ぶことができなかったり、また映像を確認するために試合が中断されるなどスピード感や醍醐味がどう変わっていくのかわからないところがあります。

レフェリーを人間が務められない時代がやってくる?

また、最近の競技規則改正はVARを使うことを前提としているようにも思います。人間の目では確認が難しいことを求められているように感じます。

もしかすると、レフェリーを人間が務められない時代が来るかもしれないと思いますね。そんな遠い将来ではない、近未来では副審がAIになっているかもしれない。映像のクオリティがどんどん上がってきていますから。

それでも、レフェリーの仕事は判定だけではなく、熱くなっている選手をなだめるなどのゲームコントロールということもあります。そういうコントロールはとても大事ですから、レフェリーがいなくなるということは今のところないでしょう。でも選手が判定の細かい正確性を求めると、最後にはゲームコントロールという言葉もなくなるかもしれないですね。

VARトレーニング当初、レフェリーはVARに呼ばれてモニターを見るのにドキドキしたようですが、今はそんなことないようです。VARがあるからといってプレッシャーになるというものではないと思いますね。

試合中、モニターを確認するレフェリー Getty Images

それにこれだけSNSが広がってくると、レフェリーたちにかかるプレッシャーは私が現役のレフェリーだった時代よりはるかに大きくなりました。また、今はスタジアムの中で試合のリプレイを見られないのはレフェリーだけという状況ですから、そういう不幸な状態は解消されます。

私の誤審は、今だったらきっとVARから「ビデオを見ろ」と言われるでしょうね。そうしたら私も選手も救われたと思います。

ただレフェリー側からすると、救われたと思うだけではなく、なぜ見えなかったということを追求していかなければなりません。そうでないと成長はないですから。

一番大切なのは自分の目で見て正しい判断が下せるということで、VARの介入は無いにこしたことはないのです。2020シーズンからJ1リーグにてVARを導入しますが、サッカーの本質を失わないよう、VARを適切に使えるよう準備したいと思っています。

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