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月5800円借り放題「服のサブスク」が儲かるワケ

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定額制で料金を取るビジネスモデル「サブスク」がブームだ。売切りが当たり前だった商品も、サブスクで提供する試みが始まっている。だが、マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏は、「サブスクは『魔法の杖』ではない。難度は通常のビジネスよりもむしろ高い」と指摘する——。

※本稿は、永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ekaterina Aleshinskaya

■トヨタも始めた「サブスク」

いま、サブスクリプションモデル(サブスク)が大流行(おおはや)りだ。サブスクとは、毎月定額制で料金を取るビジネスモデルのことだ。身近なところでは、雑誌や新聞の定期購読もサブスクの仲間だ。定期購読のことを英語で「サブスクリプション(subscription)」という。電気・水道・ガス・電話もサブスクだ。私たちの身近にあるサービスなのだ。


永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)

このサブスクがいま、様々な分野に拡がっている。2019年にトヨタはサブスク「KINTO」を始めた。高級車レクサスであれば、月額約20万円で3年間に6種類のレクサスブランド車を乗り換えることができる。プリウスの場合は月額約5万円。車両代・登録時諸費用、税金・任意保険・自動車税が含まれる。

消費者がモノを所有することにこだわらなくなった。いまや、買取りが常識だったモノにまで、サブスクが拡がっているのだ。

このサブスクが大きな注目を浴びているのは、ビジネスとして魅力的だからだ。まず売上が安定する。解約しない限り顧客はお金を払い続ける。売上が安定すればビジネスのリスクも減る。売り切りよりも価格が下がるので、新規顧客にアプローチしやすくなる。だから、「ウチもサブスクをやれば売れる」とサブスクを始める会社が増えている。しかし、サブスクをすれば成功するほど、世の中は甘くない。

■米国では大成功、日本では大失敗のサービス

2013年、「Tokyo Shave Club」は男性用カミソリの定期購入サービスを始めた。月額600円で4枚刃が3枚届く。しかし、新規顧客が増えずユーザー数は低迷。2018年5月、サービスを終了した。

これは、米国で大きく成功したビジネスモデルを日本に輸入したものだった。ちなみに米国では、4年間で会員数300万人・売上200億円というビジネスに育っている。米国ではカミソリは店頭で鍵付きケースに入っており、店員に頼まないと買えない店が多いという。だから定額サービスは魅力的だった。しかし、日本ではカミソリはコンビニでも買える。アマゾンで買えば安いし、すぐ届く。サブスクよりもお手軽だし、お得感もある。日本の顧客にはカミソリの定期購入サービスに入るメリットは少なかったのである。

普通に買える商品をサブスクにしても、顧客の手間が増えるだけなので、誰も買わないのだ。

■高級バッグが使い放題の「ラクサス」

サブスクで成功するには、まず、新しい顧客体験を創り出すことが必要だ。たとえば、今まで高くて手が出なかったものを安くする。あるいは面倒なものを簡単にする。

そして、サービスを継続するためには収益化も必要だ。これらが両方とも実現できないサブスクは、早めに見切りをつけて撤退すべきだ。成功するサブスクは、これらをクリアしている。

月6800円で30万円以上もする57ブランドの高級バッグが使い放題、というサービスで急成長を遂げているのが「ラクサス」だ。ラクサスは女性にとって悪魔のように魅力的なシステムである。ラクサスのサイトを妻と一緒に見ていたら、普段は冷静な妻が「え? これも使えるの?」「え? これも月6800円」と次々とバッグをクリックして魅入っていた。

女性にとって高級バッグ選びは一大イベント。なにしろ30万円以上の投資である。買った後に「なんか違う」と思ったら、ショックは計り知れない。男性にはなかなか理解できないが、女性にとってバッグ選びはある意味「苦痛」なのだ。

ラクサスは、返済期限なし・いつでも交換可能にして「高級バッグを選ぶ苦しみ」から女性を解放した。価格比較サイトなどを見てから申し込んでいる人が多いという。

ラクサスに入れば、女子会にはシャネルのショルダーバッグ、仕事にはエルメスのトートバッグ、デートにはセリーヌのハンドバッグ、というようにTPOで使い分けられる。いつも同じカバンを使う男性は「どこが違うの?」と思ってしまうが、女性にとってはまったく違う。

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