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企業買収ばかり繰り返す孫正義は「虚業」なのか

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■統合メリットを生かす「スーパーアプリ」開発が必須

だが現実問題として、これだけの規模の買収案件をスムーズに進めるのは並大抵のことではない。ヤフーはニュースに代表される各種コンテンツ事業、ヤフーションピングとヤフオクを中心としたEC事業、PayPayが提供する決済事業などを抱えており、ジャパンネット銀行を通じて金融サービスも提供している。

一方、LINEはメッセージ・アプリを中心に、EC事業、コンテンツ事業、金融事業、決済事業などを行っており、重複するサービスも多い。

両社が持つサービスを統合すれば、消費者の生活をほぼすべて丸ごとカバーできるので、統合メリットを最大限生かすためには、生活に必要なあらゆる機能を盛り込んだ、いわゆる「スーパーアプリ」の開発が必須となる。

ヤフーは中高年層の利用も多く、LINEは若年層に人気なので、その点においては相互補完的といえる。だが利用者の属性が異なる2つの主要サービスを統合するのは簡単ではなく、一歩、間違えると、両方のヘビーユーザーを失うリスクもある。完璧なスーパーアプリを開発できるのか、事業者としての能力が問われているといってよいだろう。

■想定外の追加投資に悩まされるリスクも

重複分野の整理もかなりの困難が予想される。

スマホ決済については、市場が生まれたばかりであり、先行するPayPayとLINE Payが組むメリットは大きいだろう。ヤフ-は、すでに社会インフラとして定着しているジャパンネット銀行を擁しており、金融はこれからというLINEとの間に面倒な重複は発生しない。むしろLINEは人工知能を使った金融サービスの開発に力を入れているので、両者は相互補完できるかもしれない。

だが、ECやメディア、旅行などの分野については、かなりの重複が存在し、サービスの統廃合や利用者のポイント共通化といった作業が残されており、想定外の追加投資に悩まされるリスクもある。

■アマゾンと比べてあまりにも貧弱な物流網

さらに言うと、アスクルとのサービス連携にも大きな課題がある。

現時点において、国内ネット通販の取扱高は楽天が首位となっており、ヤフーがこれを追う図式になっている。だが、楽天とヤフーは、商品のほとんどが出店者による販売・配送であり、楽天とヤフーは出店料を受け取るだけである。一方、アマゾンは多くの商品を自社販売しており、独自配送網の拡充や置き配など、革新的なオペレーションを次々と繰り出している。

商品の販売を出店者に任せている楽天とヤフーは、取扱高こそアマゾンよりも多いものの、サービス品質という点でアマゾンに大きく後れを取っている。ヤフーがアマゾンに対抗するためには、独自の物流網整備が不可欠であり、これが実現できないと、せっかく買収したゾゾの潜在力も100%発揮させることはできないだろう。

■孫正義氏は「虚業」批判を跳ね返せるか?

こうした事情もあり、ヤフーはアスクルが保有する個人向けネット通販「LOHACO(ロハコ)」事業の取り込みを狙っていたが、これが一部のアスクル経営者と対立を生み出し、経営介入強化のきっかけとなった。アスクルの独自物流網はアマゾンと比較すると貧弱な状況であり、アスクルの経営正常化と本格的な物流網の整備にはかなりの紆余(うよ)曲折が予想される。

企業買収ばかり繰り返す孫氏に対しては、常に「虚業ではないか」との批判が寄せられてきたが、ネット経済が成長の限界を迎えたことで、時間を買う買収はそろそろ打ち止めとなる。事業家としての孫氏の真価がいよいよ問われることになるだろう。

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加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家
1969年、宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。
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(経済評論家 加谷 珪一)

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