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神奈川県文書情報漏えい問題-人は知らないほうが幸せなこともある?

先週金曜日(12月6日)の朝日新聞のスクープ記事に驚いたことは先週書きましたが、その後、廃棄HDDをヤフオクで転売したブロードリンク社の社員は解雇処分となり、逮捕されました。本事件は間違いなく、今年最大の企業不祥事だと思います。

私の事務所もたくさんの保存文書を一定期間経過後に廃棄していますが、かならず溶解処分を行います。といっても、私が溶解の現場に立ち会うわけではなく、専門業者の「溶解証明書」を受領することによって廃棄処分を終えた、としています(たしか裁判所は職員の方が溶解の現場を確認している、と聞いたことがあります)。つまり、「溶解証明書」を発行したとしながら、重要文書を保存されてしまうリスクは必ずあるわけで、もうそこは専門業者さんと私との信頼関係しかないわけです。

HDDの廃棄処分というのも同様です。神奈川県も富士通リースも最後は「信頼」しかないわけで、もし「ほれみろ!そんなことだから重大事件が起きたではないか!」と言われますと、廃棄処分に要する費用が高額となり、その分は国民が負担せざるをえないということになるのでしょう。今回は、「それを言っちゃおしまいよ」と「パンドラの箱」を開けてしまうことになるのではないか・・・、そこが今年最大の企業不祥事と考える理由です。個人情報漏えいのリスクは事前防止を中心に考えるのか(その事前防止の高額な費用は誰が負担するのか)、それとも情報漏えいが頻繁に起きることはしかたないが、起きたら早期に発見する、発見したら個人の側で自己防衛をきちんとする、漏えい者には厳罰を科すという事後防止を中止にに考えるのか。

12月8日の朝日朝刊社会面の記事では、当該元社員は同様のHDDを570件ほど転売していたと報じられていますから、社会に及ぼす影響は計り知れないのではないかと。そもそも朝日新聞が本件をスクープできたのは、①IT企業の経営者の方が、たまたまネットで当該HDDを入手できたこと、②当該経営者の方が、仕事用に使いたいので中身の安全性確認のために市販の復元ソフト(1万円以下だそうです)でデータの復元作業を行ったこと、③数百万件に上るデータから情報の重大性に気づいたこと、④IT企業の経営者の方が(なにゆえか)これはたいへんなことだと思って(県ではなく)朝日新聞に情報提供を行ったこと、⑤朝日新聞が元社員(当時は社員)とコンタクトをとり、元社員は(これもなにゆえか)取材に応じて事実を認めたこと(朝日は裏付けがとれたこと)といったことが「たまたま」重なったことによるものです。毎度申し上げるとおり「企業不祥事は時の運、社会が作り上げるもの」です。ただ、運といっても確率論の上での「運」ですから、その確率を減らす努力を行う、これがコンプライアンス経営です。

「こんな事件が起こらなければいいけどな」と思っていたところに、朝日のスクープによって本当に最悪の事件が起きていることを(国民は)知らされてしまった。神奈川県知事は「マスコミは『文書、大規模流出』といっているが、県の情報がネット上に大量に出ているわけではない」と釈明しています。しかし1万円以下の復元ソフトで「差押え情報」などのを含めた個人の納税情報が閲覧できる状況に置かれている、という事実はもはや否定できず、多くの国民・県民を不安に陥れてしまったことは間違いないでしょう。上記のような偶然が重ならなければ、国民は自分の重要な情報が流出していること(可能性)を知らないままに、幸せに生きていけたはずです。不謹慎ではありますが、これが現実だと思います。

さて、神奈川県民を含めて、多くの国民が「もはや個人情報はどうなるのか」といった不安を抱えて生活しなければならない以上、どうやって「不安」を「安心」に変えていくことができるでしょうか(もはや不都合な真実を知ってしまった以上は「安全」は取り戻せないはず)。「今回の事件は偶然が重なったから発覚したものであって、そんな偶然はめったに起きないから、たとえ個人情報が漏えいされても悪用されることは杞憂にすぎない、ということなのか。「いや、それは許されない」ということで、もし不安を解消したいのであれば、誰がどれだけの負担をもって不安の除去に取り組むべきなのでしょうか。今年、いくつかのベネッセ情報漏えい事件の判決が出され、親会社の責任が認められていることから、こういった事件は関係者の法的責任の有無に関心が寄せられるのかもしれませんが、私はそのような法的責任問題よりも、今後も普通に起きることが予想される大量の重要個人情報漏えい問題に、国民がどう対処すれば安心できるのか、そこに関心を持って事件の行方を見守りたいと思います。

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