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『ブラタモリ』も『いだてん』もインチキ?~ファンタジーの文法とは

ブラタモリは事実関係が間違っている?

『ブラタモリ』が高視聴率を得て長期化するにあたり、タモリがぶらつくエリアは東京近辺から全国、果てはイタリアにまで広がっている。ただし、広がれば広がるほど綻びが見えてくることも確かだ。先日(12/7)の花巻特集も大分ガタガタしていた印象は拭えない。

番組は宮澤賢治の足跡を辿ることに軸に置いていた。賢治が生徒たちにオルガンを弾いて聴かせたこと、花壇を作って販売を試みたことなどが語られていた。賢治はそれ以外にも生徒たちに楽器を演奏させたり、レコードを聴かせたりしているが、なぜそんなことが可能だったのかについては番組では一切触れなかった。

実は賢治は高利貸しの息子なのである。というか、宮澤家一族は花巻一の大地主(現在もそうらしい)で、要するにお金持ちのボンボンだったから、オルガンやチェロ、レコードを買ったり、花の種を取り寄せたりすることが出来たわけだ。ただし、これはタモリも指摘していたように、こんな人間はこの時代、とりわけ農村部の保守的な人々にとっては受け入れがたい存在で、まあ変人扱いされていた。これらの活動主体であった、私邸を改造した私塾「羅須人協会」の活動もたったの七ヶ月だ。番組ではこうした背後の事情は一切語られることはなかった。多分、視聴者の多くがハッとさせられたのは、『銀河鉄道の夜』の列車が蒸気機関車ではなく電車(当時、花巻駅から花巻温泉、および西鉛温泉に延びる花巻電鉄。細いので「馬面電車」と呼ばれていた。)であったことくらいではないか?銀河鉄道999は蒸気機関車だったし。ちなみに花巻は妻の実家で30年以上、年2回ほど通い続けている。

というわけで、まあイイカゲンと言えばイイカゲンなのだが、実はこれにツッコミを入れることは正直、意味がない。この番組を丁寧に見ている視聴者の中から、しばしば、この「イイカゲン」という指摘を耳にするのだけれど、はっきりいって、それは「あなた何か間違ってませんか?大人気なさ過ぎると思うんですけど」と、僕はツッコミを入れたくなる。

先ず、『ブラタモリ』はどのカテゴリーに属する番組なのかということを考えてみて欲しい。これは「バラエティ番組」なのだ。言い換えればタイトル通りタモリがブラブラ歩いて勝手なことを喋り続けるというエンターテインメント。だから、事実関係についての厳密性は二の次で良いのである。以前『進め!電波少年』のコーナー「猿岩石ユーラシア大陸横断ヒッチハイクの旅」で、沢木耕太郎の『深夜特急』を踏襲するかたちでヒッチハイクだけ(『深夜特急』はバスだけ)で香港からロンドンまで行く企画があったが、実はバンコクからコルカタまでは空路で移動していたことが露呈し問題になったことがあった。だが、この時プロデューサーの土屋敏夫は「この番組はバラエティですから」といって一蹴し、さらに空路で猿岩石が渡ったビデオを特番で放送している。

つまり、これを「史実や事実に基づいた番組」と考えている方が間違っているわけだ。逆に言えばブラタモリの面白さは、そうした事実確認や発見ではなく、タモリがブラブラ歩いてあらぬ事を言い続けるところにある。ま、そんなことは一般人ならわかっていることだとは思うけれど。

『いだてん』は時代考証が間違っている?

これが、もっと酷くなると『いだてん』への批判になる。二つの東京オリンピック(一つは未開催)を巡った群像が展開されているだけれど、番組では嘉納治五郎(役所広司)は、ただのオリンピックオタクだし、金栗四三(中村勘九郎)が聖火ランナーになるためにオーディションに参加したなんて事実も、もちろんない。いや狂言回しとして登場する古今亭五りん(神木隆之介)にいたっては完全に架空の人物だ。ところがこうした「事実の歪曲」を気に入らないと言い出す輩か存在する。

これも同じように「大人気なさ過ぎると思うんですけど?」とツッコミを入れたくなる。

『いだてん』は歴史を参考にしたファンタジーである。ファンタジーは事実はどうであれ、勝手にフィクションに仕立て、面白ければそれでよいという「ファンタジーの文法」があるわけで、目くじらを立てる方がやはり大人げないと言えないだろうか。

たとえば、ファンタジーの典型に『スターウォーズ』がある。あれは、根拠も何もない壮大なほら話であって、われわれはそれを楽しんでいる。科学的考証もメチャクチャ。なんせ宇宙のどこに行っても引力があるんだから。増して言わんやディズニーアニメなら動物と人がベラベラ喋るんだよ(笑)。『水戸黄門』も同様だ。水戸から出たこともない光圀公が全国行脚をする。これは真っ赤な嘘、しかも、歴史に忠実にシーンを描こうとすれば御老公、助さん、格さんは(二人は架空の人物)当時の日本人の一般的な歩行スタイルであるナンバ(右手右足、左手左足が同時に前に出る)でなければならない。ところが彼らは明治以降に培われた近代的歩行術を身につけている。

まあ、これらはわれわれが「完全な嘘話」と認識しているから、何の不満も起こらないのだけれど、では時代劇、取り分け大河ドラマのそれはどうだろう?何のことはない、これもメチャクチャでしょ。当然、『いだてん』もまたこれら過去の大河ドラマの立ち位置で視聴者はファンタジーとして捉える必要があるのだけれど、なまじ、これが近現代史なので話が生々しく、そこで事実関係との齟齬にツッコミを入れたくなる輩が登場するのだ。

バラエティはバラエティ、ファンタジーはファンダジー。科学や事実に基づくのではなくエンターテインメントとして楽しむおおらかさが必要じゃないんですか?この手の間抜けなツッコミがレビューには多すぎるような気がするので、ちょっとツッコミを入れてみました。

いやー、『ブラタモリ』も『いだてん』も傑作。本当に面白い!

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