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「ステマ」がなぜ許されないかが分かる映画『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』

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  ディズニー映画『アナと雪の女王2』をめぐり、複数の漫画家がSNS上に感想の漫画(主に褒めている)を同時間帯に一斉に投稿し、「これはありのままじゃないんじゃないか?」と、ここ数日にぎわせている。いわゆる「ステマ」疑惑で、ディズニーサイドは「認識はなかった」と否定しているが、きわめてグレーである。

 しかし、意外とこの騒動についてネット広告に詳しくない人からは「何が悪いのかよく分からない」という声も漏れ聞こえている。
 
 「ステマ」の何が悪いのか。それを知るためには、「『ステマ』が野放しになったら何が起きるのか(起きたか)」を知るといい。それを端的に教えてくれるドキュメンタリーが、Netflixのオリジナル映画『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』である。本作は、あるアプリのプロモーションをめぐって起きた悲惨な事態を活写している。

www.netflix.com

 前フリをすっ飛ばすと、この出来事は「『ステマ』を使って成し遂げられた、“ワールドクラスのグルーポンおせち騒動”」といえよう。世界は広い。しょぼいおせちなど目ではなかったのだ。
 
 発端は、米国のカリスマ経営者ビリー・マクファーランドが、自社アプリ「ファイア」(FYRE)のプロモーションで、バハマの島を買い取っての数千万人規模を動員する野外音楽フェスを企画したことだ。

 出来事はイベント本番の数ヶ月前から起きていた。ビリーらは、世界的なモデル、セレブリティ、インフルエンサー何十人もを島に招待し、豪遊させる。その模様を撮影し、スタイル抜群の金髪美女らが青い空、白い砂浜でキャッキャウフフするやたらきらびやかな動画が広告として投下された。

 さらに、招かれたセレブらが一斉にフェスについてSNSに投稿。ただしこのとき、大金と引き換えになされた投稿には、誰も「PR」とはつけていなかった。お察しの通り、ここで大規模な「ステマ」が行われた。セレブらの「ステマ」投稿の威力は絶大で、フェスの存在は一気に世間で認知され、高額のチケットはあっという間に売り切れてしまう。
 
 しかし、これは「バハマで史上空前の音楽フェス」という絵に描いた餅が、人々を不幸にしていく過程の始まりだった。

 それ以降、映画の半分以上を占めるのは、ビリーらアホな上層部の思いつきで始まった無謀な企画を、NOと言えない部下らが、血のにじむような思いをして実現するために奔走する過程や、出資者らを平気で騙していくビリーの本性についてだ。複数の当事者と、撮影された当時の映像をもとに紐解いていく。

 早くからネット上に公開されていたイベントの完成予想図から、全速力で離れていく現実のイベント会場の圧倒的なしょぼさ。それでも止まらないデスマーチは、中止のカードを切らないまま、開催日を迎えてしまう。大金を叩きフェスを楽しみにやってきた一般参加者らが直面する悲劇は、是非自らの目で確認してもらいたい。もちろん、このブログはPRでは一切ないのでご安心を。むしろ、毎月1300円ほど徴収されている側である。

 映画を観ると、「ステマ」はあくまで騒動のほんの導入部分にすぎない、という印象を受けるかもしれない。しかし、「ステマ」が見過ごされてしまったがこそ、起きた大惨事である。

 本作には「なぜ『ステマ』を許してはならないか」が濃縮されている。特にSNSは、発信者が「自分の声」で語っているから魅力だ。その言葉が威力を持つのは、発信者の本音という「信頼」が担保されているからにほかならない。SNS上での「ステマ」は、実態のない「信頼」を金で買えてしまう、ということなのだ。

 今回の『アナ雪2』の騒動に関しては、「ステマ」に騙されて劇場に行ったところで、映画が上映されていなかった…というようなことはありえないだろう。しかしクチコミを装ったステルスの宣伝が消費行動を促した、という意味では全く同じなのだ。

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