世界の15歳を対象に3年ごとに3分野の力を調べる、学習達成度調査(PISA)で、日本は2018年の「読解力」の平均点が落ち、順位も前回の8位から15位に下がったことが、わかりました。経済協力開発機構(OECD)が、加盟国を含む79ヶ国・地域の15歳を対象に2018年実施した結果を公表したものです。
低下は、2回連続になります。数学的応用力は5位から6位に、科学的応用力も2位から9位に後退しましたが、文部科学省はトップ水準を維持している、と分析している、と報じられています。
3分野の全てでトップは、中国でした。日本からは、統計手法に基づいて抽出した183校から6100人が参加しました。「読解力」は、多様な形式のデジタルテキスト(ウェブサイト、投稿文、電子メールなど)を活用し、複数のネット上の情報を読み比べたり、事実か意見かを見定めたりする能力などを問うもので、コンピューター上で選択肢をクリックしたり、文章を打ち込んだりして解答します。
例えば、モアイ像で有名なラパヌイ島(イースター島)でフィールドワークした大学教授のブログなどを取り上げ、記述から教授が調査を始めた時期を選択肢から選んだり、教授が指摘するモアイ像を運んだ方法の謎について文章を記述したりという問題がありました。
PISAの結果によって、日本では、ゆとり教育を見直したり、これまでに大きな影響を受けています。客観的なデータで見直すことは必要だと思いますが、あまり小手先の見直しでバタバタするのは、よくないと思います。
今回、「読解力」が下がったことについては、日本は授業でデジタル機器を使う時間がOECD加盟国で最低レベルで、生徒が慣れない出題形式に戸惑ったことは考えられる、とされています。前回からコンピュータを使った調査になっている、ということです。小中高校のパソコンは児童生徒5.4人に1第、教室の無線LAN整備率も4割しかない、とのこと。授業でデジタル機器を利用する時間が、日本はOECD加盟国中で最も短く、宿題にコンピュータを使う割合も3.0%(平均22.3%)で最下位でした。
文部科学省は、パソコンを増やす方針を出していますが、それを使いこなしてICT教育ができる教員を養成することも大事だと思います。OECDの教育・スキル局長は、「インターネット上の情報は真偽がわかりにくく、答えも一様ではないので、複数の出所の情報を比較し、事実か意見かの区別をつけることも求められる。こうした意味での読解力を付けるには、デジタル機器をただ使うのではなく、どう使えばよいのかを教えることが大切だ」と語っています。
また、日本の授業では、作者の意図を読み取ることが中心で、複数の文章に書かれた意見を読み比べ、自分なりの考えを築き上げるような力の育成が不十分、という指摘もあります。日本では、教員が諸外国と比べても忙しすぎて、考えさせる授業をすることができない、とも言われていて、これは抜本的な見直しが必要だと思います。
また、貧困な家庭では学力が低いという格差の問題も出てきています。この結果を受けて、問題点を分析し、長期的な視野で取り組むことが求められると思います。
記事
- 2019年12月04日 17:03
学習達成度調査(PISA)「読解力」日本15位で続落
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