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婚外子が6割のフランスでシングルマザーの7割が「幸せ」と答えるワケ

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シェアハウスをすることで、「子どものいじめ」を防げた

実際にヴァ―ジニーさん自身も、シングルマザーとしてシェアハウスを実践し「毎日が180度変わった」と言う。

「日常生活で誰かと助け合えることで、負担が大きく減りました。仕事が忙しいときにシェアメイトが子どもの送り迎えに行ってくれることも。買い物や家事なども分担しています」

シェアメイトのマルタさんは在宅勤務の為、子どもたちの宿題の手伝いや夕飯の準備などをし、子どもたちにとって「第二の母」のような存在だという。

マルタさんは、微笑みながらこう語る。

「私は、離婚直後の孤独な時期にこの家に来たから、精神的にも皆に大きく支えられました。ヴァ―ジニーとは、子どもたちが寝た後に、よく仕事や人生の悩みを相談しあいます。一人で暮らしていると、ただ悩むだけで、解決策がみつからないもの。でも、家に帰ってきて信頼する人に話すことで、手を取りあって、前に進む勇気が湧いてくる」

また、「子どもへの影響」が一番大きかったとヴァージニーさんは強調する。

「実は、ある日長女の様子がおかしいことがあって。話を聞いても、『何でもない』と言うけど、何か隠している様子で…。私のいないところでマルタにさりげなく聞いてもらったら、『学校でいじめにあっている』と重い口を開きました。おかげで、エスカレートする前に、いじめを止めることができました。両親には話せないことでも、友人のような存在の大人には、包み隠さず話すことができたのだと思います」

ヴァ―ジニーさんは穏やかな目で、宿題をする娘たちを見つめ、こう語る。

「娘たちは今、花開くように、日々明るく成長しています。そんな彼女たちを見ているのが、私が一番幸せと感じる瞬間。これも、マルタが私たちの生活に加わったおかげ。皆で笑い、会話をする――そんな「家族の生活」を送ることができ、毎日喜びを感じています」

「現代は、高齢化や離婚の増加などの影響もあり、孤独を感じる人が多い社会。でも、勇気を出して一歩踏み出し、誰かと”シェア“をすることで、心が温かくなり、人生が変わることもある。厳しい現実にも、もっと強く、軽やかに、明るく立ち向かえるのです」

シェアハウスの実践は、「新しい形の家族」と言うヴァ―ジニーさん(中央右)と、マルタさん(右)=筆者撮影

実際に、フランスのシェハウス専門のウェブサイト「Appartager」の調査でも、68%の回答者がシングルマザーと一緒にシェアハウスの実践をすることに快く思っていると回答。その理由に、家族の温かさや子どもへの愛などに大きな価値を感じるからだという。

このように最新のテクノロジーが、今後さまざまな「新しい家族の形」を生み出す役を担っていくのかもしれない。

日常生活でも周囲と協力し合い、「自由な時間」をつくる

上記のようなシェアハウスの例だけでなく、フランスでは、子どもの同級生の親の間でも、日常的に「協力」をする例がよくみられる。パリに住むシングルマザーで、3歳と5歳の子どもをもつカトリーヌ(40)は、ホテルの飲料部で勤務をしている。彼女は、自身の日常をこう語る。

「子どもの同級生のクラスにはシングルマザーが多いから、皆で助け合っているわ。朝早くに働く母親の子どもを私が毎朝学校へ送っていく代わりに、彼女が子どもたちを学校へ迎えに行き、私の仕事が終わるまで面倒を見てくれるの。学校が休みの日は、他の親2人と支払いを分け合って、ベビーシッターさんに子どもたちのお世話を頼んでいる。週末は、子どもたちは父親の家に泊まりに行くわ」

「経済的には厳しいけれど、朝、一人で静かに読書して過ごしたり、週末に時々恋人とゆっくりデートができるのは、シングルマザーになったメリットだと感じているわ」

「一人で仕事・子育て・お金の管理をすべて抱えようとしても、人間にはリミットがある。同じように助けが必要な人に自ら提案をし、お互いにとって最善の方法を見つける。そうして自分自身の心も満たしてあげないと、結果的に子どもにしわ寄せがいくと思う」

仏シングルマザーの「自由」を遡って考えると、「共同親権」がある

グローバル・マーケティング会社Ipsos(イプソス)の2012年の報告書では、53%のシングルマザーが「お金の不足が日常の一番の問題」だと答えた一方で、「あなたは幸せな女性ですか?」という問いに、72%の女性が「幸せ」と回答した。

この結果について、パリにある橋本国際法律事務所で、離婚裁判などを担当する在仏20年の岩村由木弁護士はこう推測する。

パリにある橋本国際法律事務所で、離婚裁判などを担当する岩村由木弁護士=岩村由木氏提供

「千差万別ですが、不仲な夫婦の関係に終止符を打ち、自由な時間ができることが大きな理由ではないでしょうか。そこを遡ると、共同親権があるのかと思います」

「共同親権では、離婚後に父母の双方が親権を持ちます。フランスでは裁判所の判断によりますが、母親が監護権(子どもの近くにいて、世話や教育をする権利)を持ち、父親には面会交流権が与えられるケースが多いです。その後、母親が平日に子どものお世話をし、父親が週末に一緒に過ごすなど、話し合いで子どもと過ごす頻度を決めます」

フランスを含む先進国では「共同親権」が主流だ。一方で日本では現在、父親か母親のどちら一方が親権を持つ「単独親権」が規定されている。法務省は日本での共同親権の導入について検討するため、年内の研究会設置を決めた。

「共同親権は『離婚は両親の問題で、子どもは成長過程において母親と父親の両方と関係を築くべき』という考えです」
「一方でどちらかの親が監護権を持っていても、もう一方の親に子どもを会わせないといけない(子どもに対して暴力を振るう親の場合を除く)。子どもの進路についても、常に父親と母親が話し合わないといけません。そのため、価値観の違いが原因で離婚した人にとっては、その点が苦痛という声が多いのも事実です」

フランスのシングルマザーたちは、どれだけ忙しくても「自分の時間」を確保することで、「子どもとの時間を、より大切にすることができる」と口を揃えて言う。また、母親が誰かと子育てを助け合うことで、子どもにとっても、多くの人たちと交流ができ、協調性が生まれると考える。そして、それが実践できる背景には、前述の民間のサービス、個人レベルの助け合い、そして共同親権があるという。

日本でも、このように「共有」するサービスや機会などが増えることで、シングルマザーの負担が和らぐのかもしれない。

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