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ビートたけしが語る「無差別殺人」という呼び方への違和感

最新刊『芸人と影』が話題のビートたけし

 最近は、不特定の人を通り魔的に殺傷する事件を「無差別殺人」「無差別テロ」などと呼ぶことが多い。新刊『芸人と影』を上梓したビートたけしは、「この呼び方は間違っている」と語る。そのワケとは――。

 * * *

 2019年に起こった事件で特に腹が立ったのが、川崎で起こった20人殺傷事件だった。51歳の岩崎隆一って男が、スクールバスに乗るためにバス停に並んでた小学生や保護者を次々と襲ったんだよな。で、20人を切りつけた後、自分の首元を刺して自殺しちまった。

 それで、その男が何でこんなむごいことをやったか、動機も何もかも分からないままになってしまった。この事件では11歳の女の子と、39歳の外務省職員が刺されて亡くなっている。

 犯人は引きこもりだったらしいけど、こういう犯罪の何が許せないかって、たいてい「自分より弱い人間しか狙わない」ってことだ。

 こういう事件を、世間ではよく「無差別テロ」とひとくくりにする。だけど、オイラはこの呼び方は間違っていると感じている。不特定で無関係の人に襲いかかるって意味じゃ確かに「無差別テロ」なんだけど、その一方で自分に向かってこない子供をターゲットに選んでる“差別テロ”じゃないかってさ。こういうヤツラの暴力は、決して自分より強そうな相手には向かわない。卑怯この上ないぜってね。

 もしも誰かを道連れにして死ぬ気だっていうんなら、もっとデカいことをやってみろよ。

 オイラの映画『3―4x10月』じゃ、クライマックスで主人公がヤクザの事務所にガソリン積んだタンクローリーで突っ込んでいくけどさ。そういう「自分より強い相手」に向かっていく気合いはないんだからね。

 命を捨てる覚悟があれば、悪人に立ち向かってもいいし、北朝鮮に乗り込んで拉致被害者を命懸けで救出しようとしたっていい。だけど、そんなことは思いもしないわけだよ。カッコ悪いにもほどがあるよ。

 こんな胸糞悪い事件は、大阪の大教大附属池田小を襲った宅間守以来だよな。宅間は「死刑にしてほしい」って自ら望んでて、オイラは事件当時、「絶対アイツの望み通りにしちゃいけない」ってジャンジャン色んなところで話したんだよな。だけど、結局すぐに死刑にしちまった。

「死んでも構わない」ってヤツにとって、死刑はまるで懲罰にならないのにさ。  この川崎の事件の犯人もそうだけど、自分の人生をちゃんと生きようと食らいつかないヤツは、人の「死」についても軽く考えちまう。こういう甘えた大人を、これ以上増やしちゃダメだよ。

※ビートたけし/著『芸人と影』(小学館新書)より

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