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- 2019年12月03日 11:11
日本人の英語力、世界で53位は低いのか - 若松千枝加(留学ジャーナリスト)
2/2■英語アレルギーを減らす
留学生の動向から考えると原因は後者、すなわち「大学入学時までの学習方法が間違っているから、それが伸びない原因を作っている」のほうにやや軍配が上がります。間違いとは何か? それは小学/中学校時代に英語を嫌いにさせてしまっているケースが少なくない点です。
日本人の場合、大学生になったとたんに英語が「好き」か「嫌い」かで進む方向がまるで変わります。英語が「嫌い」な学生の、英語に対するアレルギー症状はなかなか強固であり、「好き」派と「嫌い」派の間の溝は大きなものとして存在します。
留学はおろか「海外」そのものに一切興味が持てない、いやむしろ嫌いだという学生。専門課程に進むころには英語の単位が必要ない学部も多くなり、英語学習は自由度の高いものになります。英語嫌いだった学生にとってはようやく苦痛から解放されるといったところでしょう。
一時期、大学生の「内向き志向」なる言葉がよく聞かれていましたが、これは現象の一側面だけを切り取って断じた偏った表現です。実際には海外へ留学する人口は増えています。本当の課題は、グローバルに関心のある人たちとそうでない人たちとの間のギャップです。
海外の語学学校で日本以外からの留学生たちに話を聞くと、外国語が「特に好きでも嫌いでもない」という意見にたくさん出くわします。とりわけ欧州や南米出身学生の場合、英語を学ぶことは単純で自然なことであり、義務でもないし、かといって大好きというわけでもありません。
もし日本人の英語力を全体的に底上げしたいのであれば、英語を使える便利さに気づいてもらうのが近道です。義務感で勉強は続けられません。
「好き」にならなくてもいいから「嫌い」になる学生を減らすために何ができるか、いま社会全体で考えてみたいところです。英語教育のなかで、もしかしたら英語以外の授業においても、その科目を「嫌い」にさせるような要素はないでしょうか。
株式会社アデコが全国の小中学生1,000人に対し実施した調査結果によると、2019年3月の発表では、外国語科目は「嫌い」の4位に入りながらも「好き」の上位5位には入っていませんでした。これは前年度も同じ結果です。
■英語そのものより文化を学ぶ国もある
筆者は3年前にフィンランドのヘルシンキで、ある20代女性にインタビューをしました。フィンランド語が公用語でありながら、多くのヘルシンキの人たちは流ちょうな英語を話します。なぜそんなに英語ができるのか、彼女は自分の経験から理由の一端を話してくれました。「私の小学校では、英語を学ぶ授業というのはあんまりありませんでした。その代わり、いろんな国の文化や社会、歴史について学びます。〇年生では“アメリカについて知りましょう”という授業を英語を交えながらやり、また〇年生では英国について、そしてまた次の学年ではカナダについて、といった具合です。
文法やライティングもやったんでしょうけど……そっちは記憶にないわね(笑)」
■方法論より意識改革
英語力だけがキャリアを決めるわけではなく、やりたくない人までやる必要はないのかもしれません。これからはますますAIが英語力を補佐してくれるでしょう。けれど、英語力がキャリアの選択肢を広げる側面があることは否めません。先日は大学受験への民間試験導入が直前になって延期されるなど議論が右往左往しています。どんな試験が導入されようと、入学基準を満たすためだけの勉強で終わらせないためには、英語学習の方法論以上に意識といった点について考えたいものです。
若松千枝加 留学ジャーナリスト
【プロフィール】
留学ウェブメディア『留学プレス』『女子Ryu』代表者兼編集長。日本認定留学カウンセラー協会幹事。幼少を米シアトルで過ごす。ICU高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。SEIKOでウォッチ営業北米担当を経て留学業界へ。2008年独立。執筆、講演を通してグローバル教育の現実を伝える。
- シェアーズカフェ・オンライン
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