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空家法施行後の空き家の現状~空き家総数は増加している一方、「腐朽(ふきゅう)・破損がある空き家」は減少 - 吉田 資

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■要旨

全国の空き家数は、過去30年で394万戸から846万戸となり、2倍以上増加した。空き家率(空き家戸数が総住宅戸数に占める割合)も上昇を続けており、2018年の空き家率は13.6%に達した。都市部、地方部を問わず、空き家の増加は対策を講じるべき重要な問題となっている。

こうしたなか、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」)が施行された。「空家法」では空き家対策に取り組む主体を「市区町村」に定め、各自治体が「空家等対策計画」を策定することを求めている。

本稿では、空き家問題を考えるにあたり、2019年9月30日に公表された総務省「平成30年住宅・土地統計調査」を用いて、市区町村別にみた空き家の現状を確認したい。

■目次

1――はじめに
2――空き家の増加要因
  1|社会要因:世帯数増加を上回る住宅の新規供給
  2|制度要因:住宅用地は固定資産税等が減免される
  3|経済要因:解体費用の負担問題
3――空き家の現状
  1|「戸建て」と「共同住宅等」の空き家の概況
  2|市区町村別にみた空き家の現況
4――「空き家対策」と「空き家の増減」の関係
  1|空き家対策の現状
  2|「腐朽・破損がある空き家」の現状:「戸建て」、「共同住宅等」ともに減少に転じた
5――おわりに

1――はじめに

総務省「住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家数は、過去30年(1988年~2018年)で394万戸から846万戸となり、2倍以上増加した。空き家率(空き家戸数が総住宅戸数に占める割合)も上昇を続けており、2018年の空き家率は13.6%に達した(図表1)。

適正に管理されない空き家の増加は、公衆衛生や治安の悪化、景観の阻害など、地域の生活環境に悪影響を及ぼす。生活環境の悪化は、不動産価格の下落や地域コミュニティの機能低下等を招きかねず、地域経済への影響も大きい。また、大都市の郊外部では、高度経済成長期に開発された大規模団地等で空き家問題が顕在化しつつあり、都市部、地方部を問わず、空き家の増加は対策を講じるべき重要な問題となっている。

こうしたなか、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、「空家法」)が施行された。「空家法」では空き家対策に取り組む主体を「市区町村」に定め、各自治体が「空家等対策計画」を策定することを求めている。

本稿では、空き家問題を考えるにあたり、2019年9月30日に公表された総務省「平成30年住宅・土地統計調査」を用いて、市区町村別にみた空き家の現状を確認したい。



2――空き家の増加要因

本章では、空き家の増加要因を(1)社会要因、(2)制度要因、(3)経済要因の3つの観点で整理する。

1社会要因:世帯数増加を上回る住宅の新規供給
総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、世帯数は2014年度から2018年度の5年間で、約211万世帯増加した。これに対して、住宅新設着工戸数は、2014年度から2018年度の5年間で約467万戸、住宅の滅失戸数は約56万戸となり、結果、5年間で約200万戸の余剰ストックが生じた。つまり、日本の住宅市場は供給過剰な状況が継続しており、空き家増加の一因となっている。このような状況で「住宅総量の目安」や「住宅供給の目標」を設定し、空き家の発生を抑制すべきという議論も見られる1が、実現には至っていない。

また、先行研究2では、新築・持家重視の政策が長期間にわたり進められてきた影響で、「家を買う」=「新築の家を買う」という図式が定着し、中古住宅市場が成熟しなかったことも空き家増加の一因と指摘されている。

今後も、新築を中心とした住宅供給および住宅取得が継続すれば、空き家は増加し続けることとなる。

1 泉水健宏(2019)「空き家対策の現状と課題-空家等対策特別措置法の施行状況を中心とした概況」参議院常任委員会調査室「立法と調査」No.416
2 鈴木賢一(2018)「空き家対策の現状と課題-空家法施行後の状況」国立国会図書館「調査と情報」No.997


2制度要因:住宅用地は固定資産税等が減免される
先行研究3では、住宅が建設されている土地に適用される「住宅用地特例処置」(固定資産税等の減免)が空き家の発生要因の1つであると指摘されている。

具体的には、住宅が建設されている土地は、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1まで減額される(図表2)。この特例処置は、2015年5月の空家法施行まで空き家を含めたすべての住宅に適用されており、居住に適さない家屋を解体せずに放置するインセンティブとなっていた。



3 北村喜宣(2018)「空き家問題解決のための政策法務-法施行後の現状と対策」第一法規

3経済要因:解体費用の負担問題
空き家増加の要因として、家屋解体等にかかる費用の問題も挙げられる。相続等を契機に空き家を取得した所有者は、費用負担の問題から空き家のままにしていることも多い。国土交通省「平成26年空家実態調査」によれば、「空き家にしておく理由」として、「物置として必要」(44.9%)との回答が最も多く、次いで「解体費用をかけたくない」(39.9%)との回答が多い。解体費用は、建物の立地、規模、構造により異なるが、木造の場合は4万円/月・坪、鉄骨コンクリート造の場合は7万/月・坪程度が目安といわれている4。解体重機が入れない細い道路に面した住居などでは、解体費用が更に嵩むことになり、大きな負担となる。

4 NPO空き家・空き地管理センター調べ

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