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山本太郎&れいわ現象の熱を綴じ込めた4時間超大作映画「れいわ一揆」

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共同通信社

第32回東京国際映画祭でのワールドプレミアで原一男監督による新作映画「れいわ一揆」を観た。今年7月の参院選で大きな注目を集めた新党「れいわ新選組」から立候補した女性装の東大教授・安冨歩の選挙活動への密着を通して「れいわ」の選挙戦を追いかけたドキュメンタリーだ。

撮影1ヶ月・編集3ヶ月の突貫製作

原一男と言えば「ゆきゆきて、神軍」(1987年公開)で日本映画のオールタイムベストに必ずその名が挙がる、ドキュメンタリー映画界のリビング・レジェンドだ。原はこれまでの映画作りを、妻でありプロデューサーである小林佐智子との二人三脚による「疾走プロダクション」で行ってきた。何年にもわたる長期撮影と、通常1~2年という編集作業による腰を据えた製作環境が原作品の常だった。だが、今作「れいわ一揆」は撮影1ヶ月・編集3ヶ月という異例の突貫体制が敢行された。

それを促したのは原の教え子にあたる島野千尋プロデューサー。彼女は、いまこの時代に起きている事象を原の眼を通してスピーディーに世に放ちたい、初夏までの撮影をすぐさま秋の東京国際映画祭にぶつけたい、その思いを叶えるために、製作時間を存分にかける「疾走プロダクション」の作り方とは真逆の速攻重視の新レーベル「風狂映画舎」を設立し、原一男を動かした。

そうして圧倒的なスピードで初公開にこぎつけたドキュメンタリー映画「れいわ一揆」は、原監督みずから「言葉に重きを置いた作品」であると説明が成された。選挙戦への密着は、演説、スピーチ、交渉、対話、説明、主張、反論、愚痴、祝辞・・・、様々な言葉が飛び交う時間への密着となる。その膨大な量の言葉の中から、監督の胸に響いた言葉たちが映画の時間を紡いでいったのだと。

監督の思いを受け止めつつ、この映画を観ながら随所に感じたのは、さまざまな「熱」だった。熱の源は山本太郎。山本の放つ熱が誰かを熱し、発熱を促し動き出す。その熱は人から人へ、場所から場所へと伝導を繰り返す。

無理スジな局面を猛進していく山本太郎の情熱。その熱に感応する誰かの微熱。冷ややかに傍観する誰かの平熱。選挙の経過と共に徐々に上昇していく候補者たちの憤熱。その熱を浴びて高まる人々の反射熱。この映画はそういった熱を捉え、熱の行方を追った、同時代の記録だった。

安冨歩が馬を連れて遊説する狙い

共同通信社

作品の縦軸を担うのは、れいわ新選組の比例候補のひとりである安冨歩だ。安冨は程なくれいわ本体から離れて一人となり全国各地での遊説を始める。地方都市、農村、市街地の公園、そこで映し出される各地の風景は、その場所にかつてあったであろう熱が過ぎ去ったような風景に見える――それは単純に人が少ないとか、人の営みが放つ気配が薄いとか――そういう各地の風景だ。

安冨は遊説のパートナーとして各地に馬を連れて回る。馬は安冨がこの社会の在り方を問うシンボルだ。馬はかつてこの社会の日常風景にいた。だが、近代から現代へ、経済を至上とする社会システムが更新されていく中で、不要とされ、排除され、失われたもの、その象徴として安冨は日常風景の中に馬を出現させる。

それは一見、人目を引きつけるアトラクションでありつつ、馬にふれる接触体験、馬が街中にいる違和体験として人々の感性の奥底を刺激する。安冨は馬をトリガーに、現代社会が葬った多様な価値のひとつを取り戻す、もしくは新たに構築する、そんな未来を呼びかける。安冨はそのために必要なアプローチを「秩序の裂け目」と称した。

「選挙活動=(イコール)選挙カーによる候補者名連呼」という、固着した効率へのアンチテーゼも含めて安冨は馬を連れて街から街へと練り歩く。人馬一体の選挙活動だ。安冨の佇まいはマイペースで穏やかだ。馬の肉は熱を冷ますというが、まるで安冨は自身の熱を馬に託したかのように選挙活動は淡々と進んでいく。

安冨が演説する傍らには常に音楽家・片岡祐介が帯同し、打楽器やピアニカの音が鳴る。馬と音楽の小さな見世物ユニットが北から南へと全国を回る独特の選挙活動。行く先々はどうにかすると楽しげな野外巡業のようになり、有権者ではない子ども達が主役になったりする。

その行程中、片岡祐介によって幾度も繰り返される旋律がある。<♪When Johnny Comes Marching Home /ジョニーが凱旋するとき>――アメリカの古い民謡だ。(安冨はこの楽曲に関し「キューブリック映画へのオマージュ」だと説明している。)いい映画にはいい音楽が伴う。この旋律に耳慣れるにつれ、映画はロードムービーとして立ち上がってくる。

そして、安冨歩の旅は日本各地に点在する問題を照らし出すうちに、次第に放熱を始める。抑えきれずに溢れ始める熱。それは、れいわ新選組に可能性を求めて品川・新橋・新宿へと集いを広げていく群衆の熱とリンクする。

「熱」の旅――、その出発と帰還を捉えた令和元年夏の記録、それが「れいわ一揆」だ。そしてこの映画もまた旅人なのかもしれない。今作がエピソード1であると捉えるなら、現実はエピソード2に向けて刻々と動いている。

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