記事

遺伝子組換え/ゲノム編集食品のリスクはどの程度?! ~ノーベル賞学者リチャード・ロバーツ氏の一問一答~

1/2
ウィキペディアより
By paloma.cl - originally posted to Flickr as Interviewing
Mr. Roberts, Nobel Prize 1993, CC BY-SA 2.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5383603

 "リスクの伝道師"SFSSの山崎です。本ブログでは、毎月食の安全・安心に係るリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方を議論しておりますが、今月は11月25日に東京一橋講堂で開催されたリチャード・ロバーツ氏講演会での遺伝子組換え作物(GMOs)に関する議論についてご報告したいと思います。なお、講演会の概要は以下のとおりです:

◎CIGS International Symposium
 「バイオテクノロジーは食料問題と環境問題を解決するか?
 リチャード・ロバーツ(ノーベル賞受賞者)講演会」

 https://www.canon-igs.org/event/20191029_6054.html
 日 時:2019年11月25日(月)13:00-15:30
 会 場:一橋大学学術総合センター2階 一橋講堂
 参加費:無料 (日英同時通訳あり)

<イントロダクション>
  杉山 大志 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹
<基調講演>
"150 Nobel Laureates support GMOs"
  リチャード・ロバーツ(Richard J. Roberts) ノーベル生理学・医学賞受賞者
<パネルディスカッション>
 モデレーター:杉山 大志
 パネリスト:リチャード・ロバーツ、
      小島 正美 「食生活ジャーナリストの会」代表
      須田 桃子 毎日新聞 科学環境部記者

 最初から筆者の率直な感想を述べたいと思う・・ 「やはりノーベル賞学者は違う!」 講演においてもパネルディスカッションにおいても、言及されるひとつひとつの言葉が明快だ。洞察力のある科学者は、われわれ一般大衆の素朴な疑問に対して、科学的事実を毅然と明快に説明してくれる(「よくわかっていない」などと不安を煽る偽専門家とはまったく違う)。

 まずロバーツ氏の講演タイトルから、ズバリ核心をついている:"150 Nobel Laureates support GMOs" すなわち、「150人のノーベル賞学者たちは遺伝子組換え作物(GMOs)を支持している」という意味だが、ほとんど「それでもあなたたちはGMOsが危険だと思うの?」と問いかけているようだ。さらにロバーツ氏はうったえる。彼は欧州委員会から医療についての講演依頼を受けたときに、開発途上国における食糧危機の話をしたとのこと:「世界中で8億人が空腹のまま眠りについていることをご存知か?そう考えると、(開発途上国で飢えている人々にとって)食料はまさに医薬品(と同じ)なんだ!(FOOD is MEDICINE)」 これは言い換えると、「GMOsは世界の食糧危機を救う切り札なのに、なぜ反対するのか」ということだ。

 欧米や日本などの先進国では飽食の時代にあり、カロリー過多による生活習慣病が蔓延する中、何百万トンという大量の食品ロスを各国で生んでいる。それにもかかわらず、開発途上国で飢えに苦しんでいる人々が求めている食糧、すなわちGMOsには反対するという本末転倒を人類が続けてもよいのか、とうことで、ノーベル賞学者たちが中心となり、2013年よりGMOsキャンペーンを展開しているとのこと。

 GMOsを支持する科学者はモンサントなどアグリビジネス企業から献金を受けているから信用できない、などという"陰謀論""御用学者論"が、よくSNSで拡散されているが、ロバーツ氏らはそのような研究資金を一切もらっていないノーベル賞受賞者の集団150人(今回来日して会ったノーベル賞学者の大村氏もサインするそうなので151人になるとか)であり、純粋に科学的な視点からGMO反対派(具体的には"Greenpeace")に対して以下の異論を唱えている:「GMO食品は危険だから世の中から排除すべきなどと、一般大衆を怖がらせる活動は止めるべきだ」

 ロバーツ氏はさらに、いくつかの論点からGMOsが危険とはいえないことを解説された。

・いま我々が食べている野菜や果物などの農産物は、すべて野生の植物ではなく、人類がいくつもの品種改良を重ねて生み出したものである。具体的にはトウモロコシを例にそれを説明された。言い換えると、すべての農産物は野生種の遺伝子が改変されてできた人工的産物であり、我々はずっとそれを食べて生活しているが、何か健康被害が起っているだろうか?

・Greenpeaceの主張:「従来の育種(Conventional Breeding)は安全だが、精密な育種(Precision Breeding: GMOs)は危険」 同じ遺伝子改変なのに? なぜ前者は"自然"で後者は"不自然"?

・自動車に新たなカーナビ(GPS)を搭載するときに、自動車を全部解体してカーナビを組み込むのが従来育種、カーナビだけを取り換えるのが精密育種(GMOs)。カーナビだけ取り換えた車が危険だと思うか? 「飛行機のGPSシステムを自動車に搭載したら、車が空を飛ぶかも・・」とGreenpeaceは言いたいのか。

 筆者は過去のブログでゲノム編集食品を「高速品種改良」と呼んだが、ロバーツ氏はGMOsを「精密育種」と呼んでいる。たしかに従来育種よりも「速く品種改良できる」ことよりも、「精密に品種改良できる」というほうが、そのプロセスのイメージがわきやすいかもしれない。いづれにしてもロバーツ氏は、重要なのは育種の「方法」(従来育種かGMOか)ではなく、「最終産物」と強調された。たしかに、農産物のリスク/安全性を評価するには最終産物の形質がどうかに依存するわけで、どんな方法で品種改良されたかは関係ないと考えるのが合理的だ(そう考えると「ゲノム編集食品」という呼称も本来不要で、強いて言うなら「精密育種食品」?)。

あわせて読みたい

「遺伝子組換え食品」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    野村克也氏「イチローは超一流」

    幻冬舎plus

  2. 2

    安倍首相の虚偽答弁 新たに判明

    田中龍作

  3. 3

    生理の妻へ食事配慮 批判の声も

    BLOGOS しらべる部

  4. 4

    韓国より低成長 認めぬ安倍首相

    PRESIDENT Online

  5. 5

    口座手数料より銀行がすべきこと

    内藤忍

  6. 6

    朝日が早期退職募集 新聞の明暗

    AbemaTIMES

  7. 7

    沢尻被告「つながりを一切断つ」

    AbemaTIMES

  8. 8

    桜追及で越年? 野党の戦略に疑問

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  9. 9

    宗教の垣根超えた中村医師の活動

    AbemaTIMES

  10. 10

    雅子さま「体がガクリ」の瞬間

    NEWSポストセブン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。