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日本の縮図かどうかは分かりませんが

 私の勤務先ですが、営業社員の約3割が東京本社に勤務しています。そして残りの7割が、全国の地方拠点に勤務しています。一方で売上については東京エリアの伸びが突出しており、2019年度の上半期は東京の営業だけで全社の受注の70%に到達しました。東京の3割の営業が7割を稼ぎ出し、地方の7割の営業が3割を販売する――皆様のお勤め先はいかがでしょうか。

 もっとも私が入社した頃は、ここまでではありませんでした。東京本社に勤務する営業社員は2割程度で、その全社に占める売上比率も4割に届くかどうかという水準だったのです。そして当時から会社全体の人員はあまり増えていないのですけれど、東京に勤める営業社員の受注が伸びていくのに従って、全社の売上も順調に伸びているようです。

 人を増やさず業績を伸ばしているのですから、まぁ上手く行っているように見えるのかも知れません。ただし、地方の拠点は閉鎖が相次ぎ、地方拠点の営業社員一人当りの売上は伸びていなかったりします。ひたすら、東京の営業だけが会社を引っ張っている状態です。そうした面では一概に、上手く行っているとは言いがたいところもあります。

 東京本社に君臨する営業部門のトップは、東京エリアの傑出した伸びを「自分の指導の結果」と信じ、「東京のやり方を地方に展開する」と称して東京勤務の営業社員を次々と地方に転勤させています。しかし、東京で顕著な売上を達成したはずの営業社員が地方に行くと、会社の思惑とは裏腹に営業成績を大きく落としてしまうのが常だったりするわけです。

 そうして地方に移って数値を落とした営業の姿を見て、我らが部門長は肩をすくめて語ります――「○○はもう一度、こっちで指導してやらなきゃダメだな」と。実際のところ、地方で成績を悪化させた営業社員が東京に戻って再び大きな受注を取ってくることは珍しくありません。やはり部門長の直々の指導あってこそ、と会社では考えられているのですが、どうしたものでしょう。

 東京の営業ばかりが傑出した成果を上げ、地方の営業は低迷している、東京の営業を地方に送っても成果は乏しく、地方の営業を東京に連れてくると劇的に数値を伸ばす、この原因を会社では(東京の)トップ層による指導機会の差に求めています。ただ私には、東京本社の偉い人との接点ではなく、顧客層の違いにこそ原因があるように感じられるところです。

 比較的少額の商材を主力としていた過去の時代は、東京と地方の営業で極端な受注額の差はありませんでした。なぜなら手頃な価格の商材であれば「地方にしか拠点のない中小零細企業」も十分な顧客となっていましたし、「大企業の地方拠点が持っている決裁権の範囲」でも取引がまとまったわけです。これなら、地方と東京で大きな差は付きません。

 ところが会社の売上目標が引き上げられ、取り扱う商材も高額なものが増えるにつれ、「東京だけが伸びる」傾向は顕著となりました。「地方にしか拠点のない中小零細企業」にとって私の勤務先が重点商材と位置づけるサービスは完全にオーバースペックでしかなく、「大企業の地方拠点が持っている決裁権の範囲」では契約が難しい金額でもあったことから、地方の営業には重荷にしかならなかったのです。

 一方で「全国各地に拠点を持つ大企業の東京本社」を相手に営業をかけられる東京本社の営業社員にとって、商材の大型化は売上増大の絶好機でした。より規模の大きい顧客にアタックできるだけではなく、顧客企業の本社と契約できれば、当然ながら顧客企業の地方拠点の契約も同時に付いてくるわけです。これで東京エリアの営業の売上は倍増、しかし地方の営業は伸びが見られず……

 私の勤務先の例は、少し極端かも知れません。しかるに通信技術が発達し、情報化社会が進む中で、経済活動における地理的要素の重要性はむしろ高まり続けているのではないでしょうか。敢えて地方に進出するのは人件費の安さを当て込んだコールセンターみたいな代物くらいで、より成長性の高い産業ほどテナント料も人件費も高く付く東京に社屋を構えるものです。

 ただ現代の会社経営において東京に拠点を置くことが重要である反面、日本社会全体からすると東京への一極集中は既に限界を迎えています。上述の通り、通信技術の発達と情報化の進展は、この問題の解決とはなっていません。全国どこでも同じように仕事ができるようになるどころか、「東京にいないと」できないことの方が増えているわけです。

 この辺の解決方法に簡単なものはないのかも知れません。しかし最低限、現状に自覚的である必要はあろうと思います。東京の営業ばかりが大口受注を獲得し、地方の営業が売上を低迷させる姿を前に、「あいつ(地方の営業)は、やっぱり俺が直接指導してやらないとダメだな」みたいに語る会社の偉い人の姿を見ていると、頭が痛くなってきますね。

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