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「ヤフー×LINE」を公取委が審査するべきなのか

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■巨大プラットフォーマーをどう規制するか

検索サービス大手「ヤフー」などを傘下に持つZホールディングス(ZHD)と、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)大手のLINEが経営統合することで合意した。ZHDの親会社であるソフトバンクと、LINEの親会社である韓国NAVERコーポレーションが共同で株式公開買い付け(TOB)を実施。LINEを非公開化して、ZHDの傘下に置く一方、ZHDはソフトバンクの連結対象子会社として東証一部に上場し続けるというスキーム。ZHDの傘下で「Yahoo! JAPAN」と「LINE」の事業を再編統合していくことで、巨大ITプラットフォーマーへと育てていこうという考えだ。

経営統合に関する共同記者会見で握手するヤフー親会社Zホールディングス(HD)の川辺健太郎社長(左)とLINEの出沢剛社長=2019年11月18日、東京都港区 - 写真=時事通信フォト

そんな中で、注目を集めているのが公正取引委員会の対応。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる巨大プラットフォーマーがサイバー市場で圧倒的な力を持つ中で、独占禁止法の観点からどう規制するかが国際的な問題になっている。こうしたGAFAに後れをとっている日本のITサービス企業が、合従連衡で追随を図ろうとしているのが、今回明らかになったソフトバンクの動きだとみることができる。

■一国内での独占禁止から、世界市場での独占禁止へ

公正取引委員会はこれまで、企業どうしの合併によって特定市場に寡占状態がおき、競争を阻害しないように、合併を認めるかどうか審査してきた。例えば、鉄鋼会社どうしが合併する場合、鉄の供給量の何%を新会社が占めることになるかを重点的にみて、合併を認めるかどうか判断してきた。

国内シェアの過半を占める企業が生まれると、競争がなくなり、企業が独占市場で価格をつり上げるため、消費者に不利益が生じるというのが独禁法の基本的な考え方だ。ところが、最近ではグローバル化によって、国際的な巨大企業との競争が激しくなり、生き残るためには日本国内で圧倒的に市場シェアを握ったとしても、競争はやまないという事例が増えた。逆に、日本で圧倒的な強さを持つ巨大企業を育てないと、国際競争に勝てないという状況に直面するようになった。

こうしたことから、一国の中での独占禁止から、世界市場でみた独占禁止へと、徐々に判断の原則が変化しつつある。

もともと欧州は独占禁止に厳しく、一国内で圧倒的なシェアを持つ企業の誕生に否定的だったが、EU(欧州連合)の誕生以降、EU域内でのシェアという見方に大きく変わり、最近では国際競争を前提にした国際シェアで合併の可否を判断する傾向が強まっている。つまり、EUでは寡占状態になったとしても、国際的に競争状態が保たれるのならば合併は認められるということだ。

■「スマホ決済サービス市場を寡占する」とは言い切れない

今回のヤフーとLINEの統合で懸念されるのは、サービスが急速に広まっているスマホ決済サービス。LINEが展開する「LINE Pay」の登録者が約3700万人、ヤフー傘下の「ペイペイ」が約1900万人とされ、単純合算すると約5600万人に達する。NTTドコモの「d払い」は約1000万人とされ、それを大きく上回ることになる。国内のスマホ決済サービスという視点でみれば、ZHDが市場を寡占し、競争を阻害することになると見ることも可能だ。

ただ一方で、スマホ決済サービスという市場だけで「競争状態」を判断していいのか、という問題もある。スマホ決済は、ネットショッピングや情報提供サービス、SNSなどその他のネット上のサービスに付随して使われるもので、ネットサービス市場全体の中でのシェアを検討すべきではないか、という考え方も成り立つ。

日本で使われている広範なネットサービス全体からみれば、統合してもZHDが市場を寡占したとは言えない、という結論も可能だろう。いずれにせよ、独占禁止状態であるかどうかを判断する「市場」の範囲が、伝統的な製造業などとは違って極めて確定しにくいうえ、それが日々成長し、変化しているということだ。

さらに、日本一国ではなく、国際市場全体でみた場合、今回の統合が寡占とは到底言い切れない。前述の通りGAFAなどに日本企業のサービスは大きく立ち遅れている。こうした日本でのサービスの合従連衡を妨げてしまっては、そもそも日本企業の国際競争力は生まれてこない。

■発想の転換ができていない公取委の現状

だが、日本の公正取引委員会は、まだまだこうした発想の転換ができていない。世界の巨大プラットフォーマーに対抗できる企業を育てることが国益につながる、という主張は政府内にもあるが、公正取引委員会はあくまで「競争が制限されるかどうか」が判断基準だという姿勢を崩していない。

ここ数年、地方銀行の再編統合でも、統合を進めたい金融庁と、合併で競争が阻害されるとする公正取引委員会の意見が対立している。一定地域内で地銀がひとつになることが寡占を生み競争をなくすという理由で、統合に難色を示しているのだ。

一方で、金融庁などからすれば、すでに3メガバンクなどとの間で競争力を失っている地銀を合併・再編していかなければ、地銀自身の存続が危ういとみている。政府の「未来投資会議」などは地銀や乗り合いバスなど、地方基盤企業の独禁法適用判断を柔軟にするよう求めているが、公取委はなかなか姿勢を変えようとしていない。

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