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岩手二戸市公民連携「オガール流」

トップ写真:カダルテラス金田一 出典:カダルテラス金田一

出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)

【まとめ】

・二戸市温泉施設の建て替えを民間へ。公民連携の「稼ぐまちづくり」プロジェクト始動。

・民間事業者は法改正で都市公園の整備参入に追い風。

・岡崎正信と公民連携アドバイザー契約、オガール流を広める。

人口減少時代、ハコモノやインフラをどうするか。全国どこの自治体も避けて通れない。ハコモノは時間がたてば、確実に、老朽化する。ある時期を迎えれば、建て直しを迫られる「時限爆弾」のようなものだ。しかし、これまで通りの公共事業のやり方で建て直すのは、将来世代に対して無責任である。人口減少に伴う税収減の中、建設費に伴う借金、さらには完成後の維持・管理費がのしかかるからだ。

岩手県二戸市も、この問題に悩んでいた。ここは内陸部北端にあり、青森県に近い。人口は2万7000人弱ほどだ。課題は、金田一温泉にある日帰り温泉施設「金田一温泉センター」の建て替えだった。温泉センターは1998年にオープンし、地元住民や日帰りの観光利用客を中心に年間10万人が利用していた。しかし、老朽化が進み、化粧板が落下する事件も発生した。

▲写真 金田一温泉センター 出典:著者提供

▲写真 金田一温泉センター 出典:岩手県二戸市

建て替えをどうすべきか。今後も人口減少が見込まれる。建て替えには、税金が数億円かかる。そこで二戸市は大きく舵を切ることとなった。整備するのも、運営するのも、民間に切り替えるという道を選択したのだ。旧来型の行政主導からの大転換と言える。

二戸市はまず、「二戸市公民連携基本計画」を策定し、市内の3地区を「公民連携推進地区」として設定した。「金田一温泉周辺地区」もそこに名を連ねた。そして二戸市における公民連携の「稼ぐまちづくり」の先陣を切るプロジェクトとして進んでいくこととなった。

温泉センターは、市の都市公園内に整備されていたことから、一体的に再整備を行い、「稼ぐ都市公園」としての再生を目指すことになった。担い手は、株式会社カダルミライ。金田一温泉郷の活性化を目指して2018年7月に設立されたまちづくり会社である。この会社は地元メンバー3人が、事業を通じた地域活性化の意義と必要性を実感したことから設立された。2019年3月に正式に事業者として選定されたところである。

▲写真 株式会社カダルミライの経営メンバー3名 出典:株式会社カダルミライ

このプロジェクトには、もう一つ追い風があった。国の法律改正で、新たな制度が導入されたのだ。この制度で、民間事業者は都市公園の整備に参入しやすくなった。設置管理許可期間の延長などの特例措置が設けられたのだ。その結果、飲食店や売店の設置と公園施設の整備を一体的に進めやすくなった。老朽化する都市公園の再整備は待ったなしの課題だ。国にとっては、民間マネーを役立てようという考えだ。

温泉センターは2019年3月末に閉館し、既に解体が完了している。株式会社カダルミライが提案する新施設「カダルテラス金田一」は、日帰り温泉の機能に加え、ビジネス利用者・合宿者向けの部屋で構成する宿泊施設やフードコート型の飲食部門などを備える計画となっている。2020年度中には、整備が完了する見込みだ。

▲写真 イメージ『二戸市公民連携事業構想(金田一温泉周辺地区)』 出典:カダルテラス金田一

新施設は、民設民営の施設。そのため、金融機関の融資による資金調達を実施する。補助金一辺倒の従来型のハコモノとの違いはここだ。その際、大事なのは、収支見通しとなる。直営の日帰り温泉や宿泊施設などがどれぐらい儲かるか。それがベースとなり、整備にかけられる金額が逆算で算出される。金融機関はその収支計画を厳しくチェックし判断する。

新施設の整備にあたり、特別目的会社(SPC)である「株式会社カダルエステート」が設立された。この会社が施設を保有。資金調達を行い、整備事業を行っている。この会社をつくったのは、運営会社である株式会社カダルミライだ。会社を分離したことで、連鎖倒産を防ぐことができる。

今回のプロジェクトは民間事業なので、リスクはある。二戸市では「資金調達に向けた収支計画の精査、サービスの作り込み、オープンに向けた営業努力と情報発信等を徹底し、地域や利用者とともにプロジェクトの発展を目指していくほかない」としている。

株式会社カダルミライ・株式会社カダルエステート両社の代表を務める大清水吉典氏は、生まれも育ちも金田一温泉。地元高校を卒業後に地元企業へ就職し、今も家族とともにこの地域に暮らしている生粋の地元人である。

同氏は、「もちろん、カダルテラス金田一という施設を、民間自立の施設としてきちんと営業していくことが、まず第1の目標です。しかし、このプロジェクトの究極目標は常に、金田一温泉郷の活性化にあります。」と語る。会社の設立当初より口にしてきたという「地域に明かりを灯す」というミッションの達成に向け、まずは目の前のことひとつひとつを着実に進めている。

▲写真 株式会社カダルミライ 代表大清水吉典氏 出典:株式会社カダルミライ

人口3万人に満たない自治体が、どうしてこんな複雑なやり方を実現できたのか。それには理由がある。「公民連携アドバイザー」の契約をしたある人物の存在だ。それが、以前このコーナーでもお伝えした岡崎正信。岩手県紫波町のオガールプロジェクトを担う人物であり、官民複合施設「オガールプラザ」等の社長を務める。

▲写真 紫波中央駅前都市整備事業(オガールプロジェクト) 出典:オガールプロジェクト

オガールは、「稼ぐインフラ」と言われる、役場と民間が連携した一大事業だ。「日本一高い雪捨て場」と揶揄(やゆ)されてきた駅前空き地だったが、今では年間100万人ほどが訪れる街に生まれ変わった。岡崎が、当時の町長からの信頼を受け、紫波町のエージェント(代理人)として、資金調達、建設、運営、管理まで担った。全国の自治体が熱視線を送っているオガールのやり方が、二戸市に広まったのだ。今後も、導入する自治体は続くだろう。

オガール発の公民連携は、日本のハコモノやインフラの建設のあり方を変えようとしている。裏を返せば、補助金頼りの行政は時代遅れとなっている。

前例のない人口減少に見舞われている日本経済。霞が関ではなく、現場発のニッポン再興が求められている。

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