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映画制作でタッグ「斎藤工×永野」時代のノリに反抗する同志

 俳優・斎藤工(38)とお笑い芸人・永野(45)。異色のコンビがタッグを組んだ、映画『MANRIKI』が公開される。ホラー、サスペンス、コメディ……ジャンル分け不可能な本作は、永野の世界観に惚れ込んだ、斎藤のラブコールによって実現した――。

「僕は、観客が数人くらいしかいないころから、永野さんのライブを観させていただいていました。以前から、小劇場で観ていた永野さんのコントに、“映画的な何か” を感じていました。

 テレビでは、『ゴッホより、ピカソより、ラッセンが好き!』の歌ネタで有名ですが、ライブの永野さんは、その独特の世界を映像化したくなるような、完全なアーティストだったんです」(斎藤)

 2016年、ライブを観に来ていた斎藤に、永野はあるコントのアイデアを話した。

「斎藤くんは、本当に何度も僕のライブに足を運んでくれて、毎回感想を事細かに話してくれました。人が、見たくても目を背けてしまう闇。そこにあるおもしろさや真実に、2人とも興味があり、共鳴していたんです。

 僕は、ファッションショーで見た小顔のモデルたちに違和感を覚え、『万力』のコントを思いついた。そのアイデアを斎藤くんに話すと、『それを映画にしたい』と言いだしたんです」(永野)

 小顔に憧れる新人モデルを、「万力」で矯正する「美容整顔師」――。そんな異様な世界を描いた映画『MANRIKI』製作のために、斎藤と永野は、映画監督の清水康彦、俳優でミュージシャンの金子ノブアキ(同作では音楽監督を担当)らと、「チーム万力」を結成。

 永野のコントをもとに3本の短編映画を製作したあと、ついに同作を完成させ、11月29日の公開にこぎつけた。

 企画・プロデュースを2人が務め、永野は原作・脚本も担当。劇中で、斎藤は、永野の分身ともいえる「美容整顔師」を怪演している。斎藤は、永野独特の世界観を映画にするために、奔走した。

「なかなか企画が通らず大変だったのですが、永野さんの脳内を映画的に表現できれば、国内外に発信できると確信し、動きつづけていました」(斎藤)

 そこまで斎藤が、「永野の世界の映画化」にこだわったわけを聞いた。

「いまの時代に、僕は、『人が目を背けたくなるようなもの』をあえて映像化したかったんです。

いまの映画は、作品のパターンが決まってきているように感じます。映画の自由、ドラマの自由より、“安堵感” が時代的に求められている。でも僕は、時代には左右されない、誰にも見せない部分や、膿んでいる闇の部分こそが映画的だと思うんです。

 単独ライブの永野さんのネタは、エッジの利いた映画の領域です。デヴィッド・リンチ監督やニコラス・ウィンディング・レフン監督のように、独特で難解な題材を描きながらも、広く評価されるような世界観を、永野さんは持っているんです」

 一方、永野の思いはシンプルだ。

「この映画は、『ヒットさせよう』『何分くらいの長さに収めよう』といった考えはまったくなく、本当に好きに作ったんです。むしろ、映画を作るというよりも、『自分の中の妄想を、ひたすら広げて画にする』という感じでした。

 作品を観た人が『あれ、こいつら本気じゃん?』と感じてくれたら、最高ですね」(永野)

 斎藤は、「永野さんの世界観は、『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督、2019年)と共通する部分がある」と言う。

「カルトとは言わないですが、『自分の中の何か』が着火するような作品は、アート映画として海外では評価されています。最近は口当たりのいい柔らかい作品が多く、映画を咀嚼する受け手の顎が弱くなっています。

 そのなかで、永野さんの世界は硬いスルメのようで、真剣に噛まないと咀嚼できない(笑)。本来、映画は個人的で、閉ざされたもの。『ジョーカー』がヒットしているのも、個人の深層心理に訴えた部分があるからだと思います。

 口当たりのいいエンタメに対して、どこかでみんな『歯ごたえがない』と感じているのではないでしょうか。こんな時代に、永野さんは絶対に必要です」

 熱く語る斎藤に対し、永野はこんな印象を抱いている。

「斎藤くんには、愛人のような気持ちもありつつ(笑)、友達ではなく、“戦友” というか、『同志』のような思いがありますね。斎藤くんは、世の中の “時代のノリ” に対して反抗的な人で、それは僕も一緒ですから」

 時代の “ノリ” に刃向かうのは、それが簡単に変わってしまうからだ。

「1980年代のノリ、1990年代のノリ、『いまは2010年代だから、このノリでよろしくね!』みたいに、『ノリ』ってその時代だけのもの。だから、本質ではなく、それが評価されているのはストレスなんです。

 テレビでも僕は、そんな空気が大嫌いで、反抗してしまう。だから芸人としてはいまだに浮いているんですけど(笑)」(永野)

 斎藤も、自身には永野と共通点があると語る。

「いまの世の中、皆さん、人からいろいろなストレスを受けていると思います。そのネガティブな要素をガソリンにしているところも、2人の共通点。ポジティブな要素をガソリンにしている人って、信頼できないんです。

 華やかな仕事の現場ではなく、その帰り道に疲れて死んだような眼をしているところにこそ、僕の本質があると思うときがあります。ひとりになったとき、永野さんや僕は、たぶん冷めた眼で世間を見ていると思うんです。そんなときの2人の眼差しは、絶対に似ていると思います」

 最後に斎藤は、永野との未来をこう結んだ。

「僕にとって永野さんは、サッカーの久保建英選手。『この才能を、レアル・マドリードに入れたらどうなるんだろう』みたいな。僕が世界で戦う武器であり、日本映画にとっての武器。

 行定勲監督や青山真治監督も、永野さんの “闇” を高く評価しています。そのすごさに、感度のよい人はもう気がついていますよ。永野さんと一緒に作品を作ったら、足し算ではなく、掛け算になる。

 たとえば、永野さんとももいろクローバーZの高城れにさんのコントライブも、凄まじい相乗効果が生まれています(笑)。永野さんと一緒だと、想像できない領域に行けるんです。

 さっき『戦友・同志』と言ってくださいましたが、僕にとっては『師=マスター』のような存在です」

 永野が世界を席巻する日は近い。斎藤は、本気でそう確信している。

さいとうたくみ

1981年8月22日生まれ 東京都出身 2001年俳優デビュー。映画やドラマなど多数の作品に出演。『blank 13』(2018年)では、監督も務めた。『MANRIKI』では、企画・プロデュース・主演を担当

ながの

1974年9月2日生まれ 宮崎県出身 1995年よりピン芸人として活動開始。シュールなネタで孤高のカルト芸人として評価を集める。『MANRIKI』では、企画・プロデュース・原作・脚本を担当し、自身も出演

【映画『MANRIKI』とは……】

 誰もが小顔を求める現代。ある無名の新人モデルは「顔が大きいから自分は売れない」とコンプレックスを抱えていた。「とにかく小顔になりたい」という願望にとりつかれた彼女は、美容クリニックでイケメン美容整顔師と出会う。彼は「万力」を使って、物理的に小顔を作るという、恐ろしい施術法を用いる人物だった……。5

(週刊FLASH 2019年12月10日号)

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