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第432回(2019年11月28日)

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3.社会保障協定

2017年(最新統計)の国保被保険者数は2945万人。うち外国人は99万人で、全体の3.4%。全国平均ですから、都市部では10%を超えていると推察できます。

年齢別外国人比率は、0歳から19歳4.3%、外国人労働者の中心年齢層20歳から39歳は11.8%、40歳から64歳2.8%、65歳以上0.4%。今後、経年とともに定住外国人が増加・高齢化し、全体でも1割を超えるでしょう。

国保に占める外国人比率の上昇は、定住外国人の増加に加え、政府等による医療ツーリズム勧奨も影響します。自費診療、公的医療保険の適正利用であれば問題ありませんが、そうでない事例が漸増している可能性があります。

対策も講じられています。2016年以降、海外療養費申請に「海外渡航証明」「診療内容照会同意書」添付が義務化されました。健保組合の扶養審査においては、被保険者から仕送り証明書の提示を求めるようになりました。

さらなる対策が必要なことも少なくありません。例えば保険証。顔写真のない現在の保険証は、なりすましや不正使用の温床になっています。

保険証と在留証明書(外国人在留カード等)の記載方法統一も課題。漢字表記、ローマ字表記が区々であったり、スペリングが異なったり、是正を要する点が多々あります。

病院へのソーシャルワーカーや医療通訳の配置も必要。病状や事情を十分に聴取することは、不正防止に直結します。

上述の3親等内扶養親族の受診に関しては、来年4月以降、日本在住要件を新設。つまり、海外在住親族を扶養対象から除外。外国人母国での血縁関係や扶養実態の確認は困難であり、不正利用の可能性があることに対応した要件厳格化です。

但し、内外無差別が原則。留学中の日本人子弟や海外赴任者の帯同家族も対象から除外されるため、厚労省は省令で例外を定めます。

このように、外国人に対する不正防止策は日本人にも不便を伴うので、制度のデグレード化には要注意です。

医療だけでなく、年金も課題を抱えています。日本の年金受給資格発生加入期間は10年。技能実習生や特定技能外国人が10年未満で帰国する場合は保険料の払い損になります。

そこで、帰国外国人には資格喪失対価として脱退一時金を支給しますが、保険料総額より少ないため、やはり払い損。そこで加算案を検討中。日本人が自分の意思で脱退する場合にも同様の対応をしないと逆差別になります。

逆の問題もあります。10年で年金受給権が発生するため、何度か来日就労して10年を満たせば日本から年金を受給できます。日本的には低い受給額でも、母国では十分な金額となる場合もあります。そのことを目的に来日し、受給権を得る動きがあるそうです。

母国に社会保障制度のある外国人、海外赴任の日本人は、両国で保険料支払い義務が生じます。保険料二重徴収防止のため、各国は社会保障協定を締結。日本の場合、今年9月現在、20ヶ国との間で発効済。署名済3ヶ国、交渉及び予備協議中2ヶ国です。

協定締結相手国に5年未満で派遣される場合には、相手国の年金保険料等の徴収を免除。5年超派遣の場合には、相手国の社会保険のみに加入し、日本の年金保険料等の徴収は免除。両国での加入期間は通算されます。

最多の在留・就労外国人の母国である中国との社会保障協定が9月1日発効(昨年5月署名)。中国には、養老(年金)、医療、労災、生育、失業の5社会保険(5険)があります。協定は5険のうち養老が対象。その他の保険料は納付義務があります。

中国において「董事長」「総経理」等(つまり社長等)の肩書がついていても、日本の年金制度適用被保険者であれば協定の対象になります。

協定適用のためには、日本年金機構に「適用証明書」交付を申請。中国社会保険料徴収機関に対して「適用証明書」を提出する必要があります。

なお、上海では外国人の社会保険加入は任意。今後どのような取扱いになるかは上海次第。上海進出の日本企業の関心事項です。

外国人労働者の平均年齢は日本の労働人口の平均より若く、社会保険財政にはプラスという意見も聞きます。

米国は、外国人は労働者や納税者として国家の利益になるという認識で運営されてきました。英国も同様。ロンドン大学の研究によれば、2001年から2011年の移民の納税額と移民への公的サービス額を相殺すると、10年間で3兆円以上の財政貢献があったそうです。

これらは、移民国家である米英ならではの主張。しかし、その米英でも外国人排斥の社会的傾向が強まっていることは周知のとおり。トランプの主張やブレグジットは典型例です。

上述のように、外国人定住者が今のペースで増加すると、やがて高齢者に占める外国人比率も上昇します。

その時になって慌てることは、1980年代から少子高齢化が懸念されていたにも関わらず、対応が後手に回って深刻な事態を迎えている現在の二の舞です。社会保障制度をグローバル化に対応させることが急務です。

(了)

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