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【読書感想】吉田豪のレジェンド漫画家列伝

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 週刊誌で漫画を長期間連載するということそのものが、かなりのハードワークで、マメでしっかりした人じゃないと難しいのです。

 そう考えると、赤塚不二夫先生の遊びっぷりなどは、逆にすごい。
 赤塚先生の場合は、アシスタントに優秀な人がそろっていて、ひとりでやる仕事の負担を減らせていたからこそ、だったのでしょう。

 マンガの絵のクオリティの平均というのは、年々アップしていく一方なわけで、いまのマンガ家は大変だろうな、と思うのです。

 この本のなかで、とくに僕の印象に残ったのは、ちばてつや先生の回でした。
 ちばさんのお母さんが、書いたマンガを「検閲」していて、性的なことを描きにくくなってしまった、という話や(読み切りでキスシーンを描いただけでも怒られたそうです)、弟のちばあきおさんの思い出も語られています。

 僕はちばさんが、あきおさんをマンガの世界に導いたことを後悔している、という話を聞いたことがあったんですよ。
 このインタビューのなかでも、ちばさんは、「忙しさのあまり、弟さんたちをマンガの道に引き込んでしまったけれど、自分も描いて苦しかったから、あんまりこういう世界に入らないほうがいい、と思っていた」と仰っています。

ちばてつや:ましてや、あんなに器用な男(ちばあきおさん)が毎日苦しんでましたから。でも、やっぱりいいものが描けたときはすごいうれしそうな顔してて、それは私も母親も気がついたし、母親は「てつや、もう止めなさい。あの子が苦しんでいるのもう見たくないよ」なんて言うぐらいでしたけど、どんどん漫画を描くようになっていったんですよ。

でも、あんまり創作の苦しみみたいなものを感じたんで、もうちょっと彼が鼻歌まじりでできる、もっと得意なものがあったんじゃないかなってずっと思ってたんでね。結局、41歳で亡くなりましたけど、それまで描いたものを私はあんまり見てなかったんですよ。あとで読んでみたらとてもいい話を描いてたし、ホントにいい仕事したなと思ったんで、短かったけど本当にいい人生だったなといまは思っています。

──忘れられない作品を遺した人ですしね。

ちば:よく言われるのが、「ちばさんよりも弟さんの作品のほうが好きでした」って。

──え! そんなこと言われるんですか!?

ちば:「ちばさんの作品も読むけど、どっちかっていうとあきおさんの『プレイボール』とか『チャンプ』とか、ああいうのが大好き」って言われて、どうもありがとうって。

──カチンとはこないんですね(笑)。

ちば:それはないです。うれしいですよ。

 僕は子どもの頃、ちばあきおさんの『キャプテン』『プレイボール』を読んで、ものすごく感動した記憶があるのです。谷口キャプテンが大好きで。
 僕自身は、あんな努力とは無縁な人間なのですが、あのひたむきさには、そんな人間をもひきつける魅力があったのです。

 お兄さんのちばてつやさんが、こうして、「短い人生だったけれど、いい仕事をして、本当にいい人生だったといまは思っています」と仰っているのを読んで、僕は涙が止まらなくなりました。
 これを読めただけでも、この本を手にとってよかったなあ、と思っています。

 なんだか真面目なところばかりを紹介してしまいましたが、『コブラ』の寺沢武一先生の、どこまで信じてよいのかわからないインタビューとか、『とどろけ!一番』の、のむらしんぼ先生の波瀾万丈の半生など、「何なんだこの人は!」と言いたくなる回もたくさんあります。

 武論尊さんの回では、『北斗の拳』のケンシロウの胸の7つの傷について、「完全にファッションとして『つけといてくれ』と言ったのだけど、後で『なんだ、シンがつけたことにすればいいじゃん!」と思いついた」というエピソードが語られています。

 そう思いついたとき「俺は天才的だなと思って自分で惚れぼれした」そうです。
 こういうエピソードは、読んでいてニヤニヤしてしまいますし、確かに「天才的」ではありますよね。
 
 少年マンガから青年マンガまで、幅広い「レジェンド」たちが、それぞれの個性を丸出しにして語っている、貴重なインタビュー集だと思います。
 これを読んでいると、手塚治虫先生や、藤子・F・不二雄先生と吉田豪さんの化学反応が見てみたかったな、と考えずにはいられないのです。

fujipon.hatenadiary.com

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