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オープンコミュニケーションってそもそもなんで大事なの?──Slack CEOと情報共有について考えた

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2013年にアメリカでリリースされ、ビジネス向けコラボレーションツールとして、瞬く間に世界中に広がったSlack。その仕組みは、コミュニケーションのあり方やプロジェクトの進め方を大きく変えました。

Slack Technologies, Inc.のCEOスチュワート・バターフィールドさんは、「透明性とチームの連携は表裏一体。スピーディな意思決定と目的達成のためには、オープンコミュニケーションは不可欠」と話します。

オープンコミュニケーションが重要である理由や、企業内のコミュニケーション課題の解決方法について、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久が話を聞きました。


※この記事は、Kintopia掲載記事Open Communication Is Changing the Way Companies Do Businessの抄訳です。

大企業ほどスピードの低下に苦戦、情報共有で少人数企業の速さに

Slackはコミュニケーションのあり方を大きく変えましたよね。1対1が中心だったメールのコミュニケーションから、情報が格段にオープンになりました。

Slackはメールでは個々の受信箱にあったメッセージを、みんなが見ることのできるチャンネル内へ移動させました。

でも、結果的にはもっと透明性の高いものになりましたね。

Slackを使えば、組織全体で同僚が何に取り組んでいるかがわかります。プロジェクトに途中から参加した人や、会社に中途で入社した人も、経緯や蓄積された情報にアクセスすることが可能です。

スチュワート・バターフィールド。Slack Technologies, Inc. の共同創業者及びCEO。起業家、デザイナー、テクノロジスト。 2014年にSlackの立ち上げに参画。以来、150か国以上、600,000社を超える組織が、Slackを活用している。

2003年、インターネット上での情報共有サービスに新しい形をもたらしたFlickrを共同で創業し、CEOとして同社を世界最大級のウェブサービスへと成長させる。TIME 誌「世界でも最も影響力のある100人」や BusinessWeek「トップリーダー50人」をはじめ、Vanity Fair「New Establishment List」、「Recode 100」、Advertising Age「Creativity 50」、Wall Street Journal「Technology Innovator of the Year」など、数々の賞を受賞。

ヴィクトリア大学で哲学分野における優等文学士号を、ケンブリッジ大学で哲学修士号を取得。認知科学、経済学、組織心理学、歴史、科学哲学へも造詣が深い

クローズドなコミュニケーションシステムのメールから、オープンなSlackに移行すれば、組織内の透明性を大幅に高められますよね。

透明性が高まると、組織にとってどのような恩恵があると思いますか。

透明性とチームの連携は表裏一体です。もし関係者が同一の情報にアクセスできなければ、一緒に仕事をするうえで支障が出てきますよね。

共通目的のために各自のアクションを設定するには、情報を共有しなくてはなりません。

さらにチームの連携が一定期間続けば、組織の目的達成度と敏捷性が高められます。

企業の規模が大きいほど、この点に苦労しています。

Slackは、大企業が小規模の企業と同レベルのスピード感を実現できるようにしたいのです。

大人数の従業員が同じ見解のもと、共通の目的に向かって緊密に連携をとって動ける状態にするのが、私たちのミッションだと考えています。

Slackで組織文化を変えられるかは、その組織次第

企業が連絡手段をメールからSlackへ切り替えると、社風に変化が起こりますか?

青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない』(PHP研究所)など

Slackは、社風を変えるうえで非常に有効なツールだと思います。

ただ、導入すれば自然に社風が変わるわけではありません。Slack自体に社風の問題を自然に解決できる機能があるわけではないので。

たしかに組織によっては、Slackをメールと同じように、クローズドに利用することもありえますよね。

変われるかどうかは、組織次第というところでしょうか。

ええ、そうだと思います。ある例を紹介しましょう。Slackの初期、最大のクライアントの1つだったのがIBMでした。

IBMのCIO(最高情報責任者)は、ソフトウェアの開発方法を変えることを望んでいました。ですが、歴史ある大企業で、雇用している開発者の数も相当なものです。開発方法を変えるのは、かなりの大仕事となります。

CIOは、Slackを「社風を操作する1つの方法」と見ていたそうです。そしてSlackを導入することで社風を変え、さらに社員の働き方改革にも成功しました。私はこの「社風を操作する」という考え方を気に入っています。

重要なポイントですね。サイボウズでも、情報共有ツールを開発しており、実際社内でも情報共有を最重視しています。

バターフィールドさんは、どんな社風の企業なら、Slackを有効に活用できるとお考えですか?


1つの傾向として、透明性が高く、風通しのよい企業とは相性がいいと思います。

たとえば、アメリカ最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツは、社風の透明性が高いことで有名です。実力主義をとっており、全社員がアイデアを競うことを奨励しています。

社員同士の関係がフレンドリーなスタートアップも、Slackをうまく活用できると思います。

一方、Slackと相性が良くない社風はありますか?

中間管理職が権限を行使するために、情報を共有したがらないような組織です。Slackは、情報をクローズドにしづらいので。情報共有を望まない企業がSlackを使用しても、あまり成功度は高くならないでしょう。

大人数で情報共有するにはどうしたらいい?
Slackではみんなが同じ情報にアクセスできるようにする

Slackは、短期間で爆発的に成長しました。

小規模のスタートアップから、大規模なグローバル企業に成長するうえで、どのような変化を感じましたか。

大企業と小規模の企業には、対照的な2つの傾向があります。私たちはその両方を経験しました。

小さい規模の企業では、社員全員があらゆることに携わるのが簡単で、意見も気軽に言えます。一方、企業規模が大きくなるにつれ、それは難しくなります。フィードバックをする人の数が多すぎるからです。

そして、大規模になると、オープンな場所でされるべきコミュニケーションが、ごく限られた人数のグループ内でやりとりされるようになります。

この問題に対処するため、Slackではあるルールを設けました。

どのようなルールでしょうか?

現実的な範囲で、できるだけチャンネルの参加者を増やして規模を大きくし、コミュニケーションをとるようにする、というルールです。

もちろん、すべてのコミュニケーションが1つのチャンネルに集中してしまうと、混乱が起こります。チャンネルはテーマごとに分けられるべきです。

いずれにせよ、どの場合もコミュニケーションがオープンであることが理想です。チャンネルの情報を検索できますから、あとからチームに入った人がキャッチアップできますしね。

新しいメンバーが決定事項のプロセスを理解できるように、情報をオープンにしておくことはとても大切ですね。

ただ、情報があまりにも多くなりすぎて、フィードバックの対処が大変だという側面もあります。サイボウズでもその点によく苦労しています。

Slackでは、膨大なフィードバックにどのように対処していますか?

お客様から得られるフィードバックはすべて大切にしています。

毎週、何万件ものフィードバックが届きますし、お寄せいただいた質問にもお答えしています。社内の場合も、常にフィードバックをもらいますし、真摯に受け止めるようにしています。

ただ、社内のすべてのフィードバックを取り入れ、返事をする必要があるとは考えていません。


だれもが自分の意見を発信し、フィードバックができる環境を整え、その都度判断して対処しているということですね。

サイボウズでも、同じようにだれもが意見をオープンに言える環境づくりを徹底しています。

経営会議はだれでも参加できます。会議の内容や意思決定のプロセスも社内全体に公開し、フィードバックをもらえるようにしています。

その話を聞いて、アフガニスタン戦争で駐留軍司令官を務めたスタンリー・マクリスタル氏の書籍『TEAM OF TEAMS <チーム・オブ・チームズ>』を思い出しました。

彼がまず優先したのが、「意識の共有」と名づけた構想です。これは、軍の作戦に関わっている全員が最新の情報を共有し、各チームが他のチームの決定事項をもとに、意思決定を下せるようにする考え方です。

マクリスタル氏は、90分の打ち合わせを週6回、7000名以上の兵士と電話会議をしていました。そして、その7000名のメンバーは、何十万人もの兵士を統率していました。

軍の全員が同じ情報を共有し、メンバーのこれからのアクションについて、具体的に知らされていたということです。

7000名ですか!? すごい人数ですね

ええ。当時、軍ではフィードバックのプロセスが煩雑になり、意思決定が遅くなっていました。

小さいチーム内では、多数の詳しい情報を共有し、全員がお互いを把握することができます。

しかし、組織が拡大すると、各チームは孤立してしまうことがあります。「チーム・オブ・チームズ」の手法は、大きな組織が小規模だったころと同じレベルで、見解やつながりを共有できるようにするものです。

指令官が、全体に関わるビジョンを自分の軍隊と共有しているということですね。

Slackでは、どのようなビジョンを社員と共有しているのでしょうか?

Slackのビジョンは、あらゆる規模の組織が、スピードを維持できるようにすることです。そして、「ビジネスライフをよりシンプルに・より快適に・より有意義に」することもミッションです。

プロジェクトの優先順位の戦略は非常に重要で、そのための情報も常に共有しています。

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