- 2019年11月28日 17:15
ローマ教皇が「ゾンビの国・日本」に送った言葉
2/2「私たちは『魂のセルフィー』を撮ることはできない」
自分の姿を鏡で見ていても、成長し、自分のアイデンティティや良さ、内面の美しさを発見することはできない。われわれはあらゆる種類のガジェット(道具)を発明したが、「魂のセルフィー」を撮ることはできない。なぜなら、幸せになるためには、私たちはほかの誰かに自分の写真を撮ってくれ、と頼む必要があるからだ。私たちは自分の殻から抜け出て、他人に心を向けなければならない。特に助けが必要な人に。自分の姿にばかりとらわれないことだ。鏡の中の自分を見つめていれば、鏡は壊れてしまうのだ。
(中略)賢人はこう言った。知恵を蓄えるカギは正しい答えを見つけることではない。尋ねるべき正しい質問を見つけることだ。誰もが、「どう答えるべきかをわかっているだろうか」「正しい答え方ができるだろうか」を考えるべきだ。そして、その後には、「私は正しい質問の仕方を知っているだろうか」を問わなければならない。正しい答えで、試験は受かるかもしれないが、正しい質問なしで人生の試験に受かることはできないのである。(中略)私はあなたのために祈りましょう。あなたが正しい質問をし、鏡を忘れ、相手の目をのぞき込むことができるような精神的英知を得て、成長していけるようにと。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg
いかがだろうか。このスピーチで、教皇が訴えたかったのは、他者のために、他者とともに、支え、支えられて、生きることの大切さではないだろうか。
教皇が「世界一他人に冷たい国」で鳴らした警鐘
翻って、日本は「国は貧しい人々の面倒を見るべき」と考える人、ボランティアや寄付をする人、人助けをする人の比率が、他国に比べて極端に少ない「世界一、他人に冷たい国」である)。
集団主義のくびきからの逃避願望が強く、一人がかっこいい、他人のことなど構っていられないという極端な個人主義の傾向が強まる中、人とのつながり、人への思いやり、優しさの価値を説くことなどダサい、ととらえる向きもあるように感じる。
そうした空気感の下で、日本の孤独大国化は一気に進んでいる。世界の多くの国々で孤独は「現代の伝染病」として、喫緊の、そして最も重篤な社会問題として取りざたされ、政府や企業など社会が一体になって、対策に乗り出している。
しかし、日本では「孤独はかっこいい」「人は一人で耐えるもの」「孤独は自己責任」といった論調が非常に根強く、結果的に、引きこもりや高齢者の孤立、社会的に孤立者による犯罪、孤独死など、「孤独」に起因する多くの社会事象の解決に手が付けられていない状況だ。
鏡に映る自分にとらわれて他の人と向き合うのを恐れる日本人
教皇がこうした日本の現状を看破し、あえて、強い言葉で訴えかけたのは偶然ではないだろう。コミュニケーションやコミュニティの研究をする筆者が日々実感するのは、多くの日本人が、鏡に映る自分の姿ばかりにとらわれて、他の人と向き合うことを恐れるようになっていることだ。
「自分を見つめろ」「自分らしく」といった大号令とともに、人はどんどんと内向きになっている。その先にあるのは一億総コミュ障化と孤独化、というわけだ。
こうした日本の、いや世界の社会問題を、「ゾンビ」や「セルフィー」などというキャッチーで当世的な言葉を用いて、あぶり出し、人間の根源的な幸福の本質を突く教皇の圧倒的な洞察力と言葉力。
その豊かな表現力を、「コミュ力が高い」などという下世話な評価をすることは恐れ多くてできないが、彼を駆り立てる強い信念が、世界中の多くの人の感情を突き動かしているのは間違いないだろう。
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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーション・ストラテジスト
早稲田大学政治経済学部卒、英ケンブリッジ大学大学院国際関係学修士、元・米マサチューセッツ工科大学比較メディア学客員研究員。大学卒業後、読売新聞経済部記者、電通パブリックリレーションコンサルタントを経て、現在、株式会社グローコム代表取締役社長(http://glocomm.co.jp/)。企業やビジネスプロフェッショナルの「コミュ力」強化を支援するスペシャリストとして、グローバルな最先端のノウハウやスキルをもとにしたリーダーシップ人材育成・研修、企業PRのコンサルティングを手がける。1000人近い社長、企業幹部のプレゼンテーション・スピーチなどのコミュニケーションコーチングを手がけ、「オジサン」観察に励む。その経験をもとに、「オジサン」の「コミュ力」改善や「孤独にならない生き方」探求をライフワークとしている。
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(コミュニケーション・ストラテジスト 岡本 純子)
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