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「国民はエンドユーザー」大阪造幣局に見た硬貨づくりへの情熱 - 土屋礼央のじっくり聞くと

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BLOGOS編集部

土屋礼央が気になる人や業界にとことんインタビューする連載企画「じっくり聞くと」。今回訪れたのは、日本人にとって身近な「硬貨」を製造する造幣局(大阪市北区天満)だ。

硬貨に隠された日本人の技術力の高さや、「令和」のデザイン決定、そしてキャッシュレス決済が進む時代のなかで問われる硬貨の未来まで、じっくり聞いてみた。





造幣局創業は国家の威信をかけた明治維新のプロジェクト


土屋:広報の眞鍋仁規さんにじっくりお話を伺っていきたいと思います。まずは造幣局の歴史を聞かせていただけますか。

眞鍋:造幣局の創業は明治4年。文(もん)・朱(しゅ)・分(ぶ)・両(りょう)の4進法だった貨幣の単位が、現在の「円」の10進法に変わりました。明治維新という激動のなかで、国際的な信用を得るために新しい貨幣制度の導入が急がれたのです。

土屋:ここに並んでいるのは、その前例のない時代に新しい貨幣制度を作った方々ですか?


眞鍋:そうですね。例えば造幣局の設備は香港から買い付けましたが、仲介したのが長崎のグラバー園で有名な商人のトーマス・グラバーでした。その時の税関長は、NHKの朝ドラ『あさが来た』でディーン・フジオカさんが演じた五代友厚です。

土屋:ほかにも大隈重信や、伊藤博文など錚々たるメンバーが並んでいますね。なぜ東京ではなく、大阪に造幣局ができたんでしょうか?

眞鍋:これだという確たる理由はないのですが、複合的に考えると4つほど挙げられます。

まず王政復古の大事業に大阪の経済界が貢献したこと。さらに同時期、大阪遷都論があったこと。それから当時の江戸の治安が悪かったこと。造幣局を立ち上げるにあたって、外国人の協力が必要でしたが、当時、外国人は襲撃の対象でした。

そして4つ目は、やはりお金を造るところは「天下の台所」だろうと。これは後付けのようですが(笑)。

大阪のなかでも、この場所になったのは、重たい機械を運ぶためには水運に頼る必要があり、川に面して、かつ広い場所という好条件を満たしていたからです。

土屋:ちゃんと理由があるんですね。

眞鍋:新政府にとっては外国との信用を築くための重要なプロジェクト。非常に大きなプレッシャーがあったようです。

外国人の「どうせできない」を跳ね返した日本人の技術力


眞鍋:製造するための機械は、閉鎖した香港造幣局のものでした。それらの機械を使って製造するため、「お雇い外国人」と呼ばれる技術者が必要でした。また、貨幣を造るには、金型が非常に重要です。当時、外国人は金型に関して「日本人にはどうせ作れない」と思っていたようですが、加納夏雄という彫金師に試作の金型を彫らせてみたところ、これが素晴らしい出来。日本独特の模様として採用されました。

土屋:今、これが新貨幣として出たら、めちゃくちゃかっこいい。日本は長い間鎖国していましたが、こういう細かい技術に優れていたんですか?

眞鍋:技術自体はレベルの高い人がたくさんいました。ただ工業というものに馴染みがなかった。機械技師や写真技術に優れた人材の活躍で日本の造幣技術は発展しました。また、造幣局はさまざまな文化を日本にもたらしました。工場では機械を回すので、着物は不可。そこで従業員に作業服を貸与しましたが、これが洋服普及の走りとなりました。

また安全上、帽子を被るので「ちょんまげはダメだから切れ」という通達があったり、帳簿をつけるのにインクが必要であったりと新しいことだらけ。外国人に合わせて日曜日を休日とする文化が取り入れられるなど最先端の職場でした。

土屋:いつの間にか憧れの職業になっていたんですね。

眞鍋:それから設備の転換期がやって来ます。手彫りで金型を作っていましたが、明治の終わりから大正にかけて、機械で金型を彫る縮彫機が出現。最近では、彫る機械もコンピュータ制御になり、レーザーで彫刻するようになりました。

なぜ硬貨の中心には穴が空いているのか?


土屋:基本的に古銭に穴が空いていているのは紐で束ねるためでしょうか。

眞鍋:製造上必要だったためです。日本の貨幣では富本銭が一番古いと言われています。これらの貨幣は鋳造、溶かして造るものです。二枚の型を合わせて、その間に金属を流し込むと、貨幣のもとができる。これを1枚ずつ切りはがすと、周りにバリが出ますから、それをヤスリで削ったり、砥石で研いで仕上げます。そんな作業を1枚ずつやると終わらないので、穴に棒を通して束ねます。丸い穴だとヤスリで削る時に空回りするので、四角い穴となったわけです。

土屋:今の硬貨の穴が丸いのは削る必要がないからなんですね。

変わらぬ硬貨のデザインは偽造防止技術の高さの証明

眞鍋:日本の貨幣は中国からの輸入に頼っていた時代もありましたが、戦国時代になると、金山や銀山を持っている地域が独自の貨幣を作り出していきました。

各地でバラバラだった貨幣を、天下統一の際にひとつにしたのが豊臣秀吉です。江戸時代末期には小判のサイズが小さくなり、価値が下がるなど貨幣制度が乱れました。そういう経済状態の時に黒船がやって来て、開国を迫られた。そこで国際的に通用する貨幣制度を作ろうと明治政府が造幣局を創業したのです。

土屋:外へ向かうにはちゃんとしたものをつくらないといけなかったんですね。

眞鍋:500円の登場は昭和57(1982)年。ただこの時は、今とは違うデザインでした。覚えておられますか?


土屋:僕は最初の500円玉の印象の方が強いです。途中でギザギザが入りましたよね。

眞鍋:偽造防止の技術が入ったほか、色も白から少し黄味がかりました。ほかの硬貨はずっと一緒です。5円は字体が少し変わりましたけど、10円も昭和26年から基本的なデザインは変わりません。

土屋:お札はデザインが変わりますが、硬貨が変わらないのは、金型の問題ですか?

眞鍋:現在は、大きな理由として偽造対策等のために変える必要があるかどうかによります。

土屋:ほかの硬貨のデザインが変わらないということは、造幣局の偽造防止技術の高さの証明でもありますよね。

眞鍋:造幣局には『純正画一』というキーワードがあります。同じものを同じ品質で、作り続けることです。

自動化が進む造幣工場 合理化でコストダウン目指す


眞鍋:では、工場を見てみましょう。貨幣を造る工程としては、最初に金属を溶かします。縦に長いものを伸ばして、順次薄くして打ち抜きます。打ち抜いた円の形を整えるのは、自動化したラインで行っています。


そこまで加工するころには硬くなってきているので焼き鈍(なま)して、再び柔らかくします。熱を入れると汚くなるので洗浄し、綺麗にしたものに模様を付けます。

土屋:これはデジタルで彫っているのですか?

眞鍋:プレスです。今は1分間で最高750枚。規定数を袋に詰めて財務相を通って日本銀行に納められます。

土屋:工場を見学していて感じたんですが、造幣局に勤めている人って、意外と少ないんですね。


眞鍋:機械による自動化が進み合理化が進んだ結果、人手が減りました。適正な価格で作らなければならないというところがありますので、コストダウンは大きな課題となっています。

土屋:どんどん機械化されているんですね。では、場所を移して細かいところをいろいろ伺わせてください。


令和の新硬貨を造幣局で作り始めるまで

土屋:令和というのに発表になって、この造幣局に令和で造るぞっていうのは、いつ知るんですか?

眞鍋:皆さんと同じタイミングです。私は別の取材の対応中でしたので、携帯の速報で知りました。

土屋:そうなんですね。関係者は事前に知っているという話をよく聞きますので、「造幣局も実は先に知ってんじゃないか?」というのが、我々が今回取材しようと思った入り口だったんです。では、造幣局で「令和の硬貨」を作り始めたのはいつからですか?

眞鍋:発表から2ヶ月以上はかかりました。記念貨幣の製造もありましたので、流通分に集中して作業にすることができなかったというのが、ちょっと時間がかかった理由です。

土屋:東京五輪、上皇様の即位30年など、いろいろなことが重なりました。造幣局としてもかなり慌ただしいタイミングだったのではないですか?


眞鍋:そうですね。製造する年の年銘を入れるという原則に合わせるために急いで作らないといけません。先行した500円と100円が、夏にほぼほぼできて、秋には全てが令和に切り替わった状態になりました。

造幣局は財務省との契約で貨幣を作っていて、年度ごとに製造枚数が決められます。財務省と相談をして、製造計画を立てていきます。

土屋:生産枚数の一覧を拝見しましたが、年によって1円玉をほとんど生産していない年がありました。どういった基準で計画を立てるのでしょうか?

眞鍋:顕著な例として、消費税導入や増税のタイミングでは、1円玉の必要が見込まれます。十分な量が市中に行き渡ると、枚数を少なくします。日本銀行が市中の金融機関窓口になっておりますので、枚数の管理をして、財務省がそれに基づき、製造計画を練るというわけです。

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