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自然エネルギーに関わる経験や知識で、日本は10年以上遅れている―古屋将太氏インタビュ回答編ー

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認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・古屋将太氏
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BLOGOSと、「知」のプラットフォームSYNODOSがタッグを組んでお送りするインタビューシリーズ「SYNODOS×BLOGOS 若者のための『現代社会入門』」。前回は、認定NPO法人環境エネルギー政策研究所の研究員である古屋将太氏へのインタビュー自然エネルギーの普及には“コミュニティ・パワー”が不可欠~認定NPO法人環境エネルギー政策研究所・古屋将太氏インタビュー~を掲載いたしました。今回は、読者からいただいた質問や意見に古屋氏が答える回答編をお届けします。【BLOGOS編集部】

ぶっちゃけドイツはどうなのよ?


―今回の質問は焦点を絞りたいと思います。「そうは言っても、ぶっちゃけドイツはどうなのよ?」と。読者からの反応をみましても、いわゆる自然エネルギー先進国の現状について疑問を持つ方が多い印象でした。「太陽光発電の強みを喧伝されるドイツですが、総発電量から見れば割合は3%ほどで、風力の半分にも及んでいません」といった意見です。

たとえば以下のような記事もあります。
参照記事
太陽光発電は全体の3%!? 「脱原発」維持に向けて現実的な方策を模索し始めたドイツの厳しいエネルギー事情とは―現代ビジネス

上記の記事にあるように、ドイツの電力事情は実は非常に苦しいという見方もありますが、実際にはどういう状況なのでしょうか?

古屋氏:2011年のドイツの電源構成は、ドイツエネルギー・水道事業者連合(BDEW)によると、自然エネルギー20%、天然ガス14%、石炭19%、褐炭24%、原子力18%、その他5%となっていて、自然エネルギーの内訳は風力8%、太陽光3%、小水力3%、バイオマス5%、廃棄物1%です。

日本では自然エネルギーが1%程度なので、ドイツは大幅に先行していることがわかります。なので、これから日本が取り組む自然エネルギーの「初期普及」における課題と、ドイツがいま直面している課題は、ステージが違うということをまず押さえておく必要があります。

―なるほど、それは重要な視点ですね。そうした「ステージ」の違いを考慮せず、一足飛びの議論や意見が多すぎるように感じます。

古屋氏:そうですね。お示しいただいた記事の中では、送電線設置の遅れが指摘されていて、それはまさに自然エネルギーが20%あたりを超えるようになると必ず浮上する課題です。それはデンマークも同様で、欧州全体でも今後のさらなる分散型電源の普及にどのように対応するかが計画されています。もともと欧州全体で「2020年までに自然エネルギー20%」、ドイツでは「2020年までに35%、2030年までに50%、2050年までに80%」という目標があり、長期的な見通しの中で送電線の拡張が議論されているので、どうやって課題を解決していくかを試行錯誤している最中だということです。

―風力についてはいかがでしょうか?

古屋氏:風力については、土地利用計画であらかじめ立地可能な場所が決まっていて、90年代から取り組んできたので陸上風車のポテンシャルはかなり開発されています。今後はリパワリング(出力の大きな機種への建替え)や洋上風車に注力していくことが計画されています。洋上風力は、デンマークですでに商業化した案件が複数ありますし、イギリスも北海で大規模な開発を計画しています。

もちろん、陸上風車とは前提が異なるのでいろいろ課題があるとは思いますが、それに対応する研究開発は着実に進んでいます。というのも、私がデンマークの大学院にいて見たのは、ヴェスタスやジーメンスなどの風力発電企業から奨学金を得て、世界各地から大勢の博士課程の学生が洋上風力の技術開発に取り組んでいる風景でした。課題解決に向けてすでに人材が育っているということです。

―世界は次世代エネルギー開発に向けて、着実に人材を育ててきていると。

古屋氏:さらに太陽光の話に戻しますが、太陽光についても、もっと丁寧に見る必要があります。例えば、ドイツのQセルズの法的整理などを取り上げて、「ドイツの太陽光産業はうまくいっていない」とよく言われています。たしかにパネル製造の面では中国の進出によって競争が激化しています。しかし、太陽光発電システム全体で見た場合、ドイツの屋根上太陽光発電の費用の60%近く(ケーブル、架台、インバーター、施工等)は国内の製品と労働力に支払われているという分析があります(図1)。こういった細部まで見れば、むしろパネル自体を中国から安く調達して全体コストを下げて普及を進めつつ、パネル以外の部分が国内経済に貢献しているといえるわけです。

図1. ドイツ屋根上太陽光発電システムの国内/海外製品内訳
出典:Craig Morris (2012) “German Solar Bubble? Look Again!” http://www.boell.org/web/index-Craig-Morris-German-Solar-Bubble.html

また、「太陽光は高いコストで普及させてきたが、いまだに電力全体の3%に過ぎない」という指摘については、私からすれば、すべての自然エネルギーで1%程度の日本の現状に比べて「太陽光だけで3%も供給している」というか、これは「太陽光発電が電力供給の中ですでにひとつの役割を果たしている」という意味の数字に見えます。

そもそも自然エネルギー資源はそれぞれ特性も経済性も異なるわけですから、太陽光だけで数十%とか、風力だけで数十%とかいう話ではなく、小水力や地熱やバイオマスとあわせて、どうやってそれぞれの特性を活かしつつ経済性とのバランスを見ながら組み合わせていくのか、という問題なので、これまでの大規模集中型電源択一的な発想から変わっていく必要があるのではないでしょうか。

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