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上映中にスマホ開くなバカ! 「画面見なくても分かる」映画なんてねえからな


 昨日、スマホで見ながら思わず「アホか!」と、声を上げてしまったニュースがあった。

www.moneypost.jp

「なぜかと聞かれると『なんとなくスマホが気になるから』というのが正直なところですね……。映画って2時間じっとしているのが結構耐えられない。そんなに長い動画を観ることって普段ないので。YouTubeは長くても20分くらいじゃないですか? 本当に2時間ずっと面白ければスマホは見ないと思いますけど、映画って見なくても話がわかるシーンがあるから。そういう時間はLINEやTwitterをチェックした方が合理的な気がします」(Aさん)

 たった2時間スマホを我慢できないなんて病気です。病院行ってください二度と出てこないでくださいありがとうございました、という感じである。

 ぼくもネットメディアの中の人の端くれである。この記事だって、針小棒大で極端な例を取り上げているだけの気がする。
 けれど、いくら「針」であろうと、鑑賞体験を台無しにされることは大いにある。よりにもよって、上映中の真っ暗な劇場で、スマホなんて起動された日には、なおさらだ。

 これを読んだときに思い出したのは、大学の講義だ。講義中、後ろの方の席でぺちゃくちゃしゃべる珍獣どもがいたのだが、あれはなんなのだろう? そのトークを俺らに聞かせたいの? M‐1出るの?? 不思議だった。

 出席をとるタイプの授業ならまだ分かる。ああ、マジメに授業を受ける気がないけど単位だけはほしいのね。分かりやすい。小悪党である。

 問題は、出席を取らないタイプの授業で、そこにやって来ては騒ぐ珍獣は、意味が分からなかった。なんだそれ? 狙いがわからん。サイコパス! 純粋に怖いよっ!

 映画上映中にまでわざわざやって来てスマホを開くやつは、出席を取らない授業で騒ぐやつらの理不尽さに似ている。

『カメ止め』監督、そりゃねえよ…

 映画ファンや関係者の多くがSNSで怒っているこの話題だが、映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督だけは、ちょっと別角度から意見をしていた。

 スマホなんて観てられなくなるような面白い映画を作ってやる――なるほど、たしかにクリエイター然とした、聞こえのいい主張かもしれない。

 しかし、こっちだって1900円払っているのである。「ゾッとしてる」じゃないよ。切り捨てたくなるのが普通である。今はダメでも、いつかは分かってくれる…では困るのだ。

 以前にも書いたが、映画館で隣り合う客なんて完全な風景である。目障りか、そうでないかしかない。珍獣は「はずれクジ」であり、そいつの心根を改心するとか、啓蒙するとか、その後なんて知ったこっちゃない。

iincho.hatenablog.com

 また、ここで取り上げられている若者はおそらくスマホ中毒者である。例えばマーシーが、沢尻エリカが、面白い映画を鑑賞していようと、ああ、一発打ちてえなと思うことは止められない。それと同じである。

「画面見なくても理解できる」という過信

 話を戻す。記事中、地味に一番カチンときたのは以下の箇所だ。スマホを観てしまう理由として、出てくる登場人物が2人とも同様のことを言っていた。
 
「映画って見なくても話がわかるシーンがあるから」
「スマホを見つつ、映画の内容を理解することもできます」

 分かるわけねえから。

 映画は、「約2時間、じっくり腰を据えて鑑賞すること」を前提とした総合芸術だ。視聴率を参考にして展開を改変できるテレビドラマなどと違い、終わりから始まりまで緻密に構成されている。

 上田監督よ、だいたいあなたの『カメラを止めるな!』だって、最初の数十分はあえて「どこかおかしなゾンビ映画」をやるではないか。その「ゾンビ映画」がフックになっているから、後半の怒涛の展開、爆発力が生まれるのではないか。

カメラを止めるな!


 

  スマホ中毒者らは、おそらく『カメ止め』の前半で見限ってスマホを開いてしまい、後半盛り上がってきたところも堪能できないだろう。なぜなら、前半を観ていないから。意味がなさそうなシーンにも、あとで思いもよらぬ意味が生まれる。それが映画の醍醐味ではないか。

 それだけではない。映画には「観なければ分からないこと」が無数に隠されている。さまざまな文化的、歴史的、宗教的な“暗号”が隠され、過去作へのオマージュ、パロディーも頻繁に使われる。「画面を見なくても分かる」なんてありえないのだ。

 浅慮なやつにかぎって、「見なくても理解できる」とか言い出すのである。まさに無知の無知。知らないことを知らない動物たち。自然へお帰り。

 ちなみに、「画面を見なくても理解できる」のはむしろテレビドラマだ。テレビドラマが映画よりレベルが低いといいたいのではない。テレビドラマは、「ながら視聴」を前提として作られている。夕飯を作ったり、洗濯物を畳んだり、それこそスマホを眺めながら観てもらうことを前提に作られているのだ。だから説明ゼリフが多いし、映画に比べるとストーリーも比較的予想が付きやすい。それは、意識的に造り手がそうしている似すぎない。でも、映画はそれとは違う。

 だから、「見ずに分かる」なんてありえない。それは、ちょっとませた、お釣りの計算ぐらいはできるようになった小学生が「これ以上、勉強ってする意味がありますか?」と聞いて、大人を困らせるのに似ている。

 そういう子どもは頭がいいのではない。頭がいいように見えて、実は周回遅れ。それどころか同じトラックにもまだ立てていないのだ。 

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