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在韓米軍撤収で米軍の「不後退防衛線」アチソンラインが復活する~対馬防衛を含めて我が国の防衛戦力のあり方を見直す好機

さて在韓米軍撤収という事態が現実味を持ち始めてまいりました。

11月22日午後6時、日韓軍事情報包括保護協定=GSOMIAが失効するわずか6時間前に韓国政府は電撃的に失効回避を表明いたしましたが、韓国に対して繰り返し強い口調でGSOMIA延長を求めたアメリカの圧力が影響したのは衆知の通りです。

今回のGSOMIA危機では、米韓の間で取り返しのつかない心理的な「傷」を双方に負わしてしまったようです、韓国では反米感情の高まりが、一方の米国では韓国への同盟国としてとしての信頼の失墜が、起こっているのです。

まずは同盟国アメリカの圧力にギリギリまで抗った韓国政府の同盟観と、最後までGSOMIAは破棄すべきとの意見が過半数を占めた韓国の対米強硬世論です。

GSOMIAの危機は一旦回避されましたが、対米感情の悪化という傷が残り、この傷が広がりかねないのが在韓米軍の駐留費分担金問題です。

韓国政府は在韓米軍の駐留費用の一部920億円余りを負担していますが、アメリカ側は一気に5倍以上となる50億ドル、日本円でおよそ5400億円を要求しています、現在協議は中断されています。

文政権を支持する革新派の京郷新聞は11月15日に社説で「トランプ政権の利己的で思慮の浅い振る舞いは韓米同盟に対する韓国国民の疲労感を募らせるだけだ」と強く批判、同じく革新派のハンギョレ新聞は11月21日の1面の見出しでトランプ大統領を「マフィアのようだ」と書きました

文政権に反対する保守派・朝鮮日報も11月13日の社説で「とんでもない要求には応じることはできない」と批判し、アメリカの合同参謀議長が「アメリカがなぜ同盟国のために人命と財産を犠牲にするのか」と問題提起した事を分担金増額への圧力と捉え「韓国国民は北朝鮮と中国とロシアからの安全保障のために核武装をはじめ全ての決断を下すしかない。それならば韓国に在韓米軍は必要ない」とまで言い切りました。

(関連エントリー)

「在韓米軍、韓国が核武装すれば必要ない」~朝鮮日報社説の極論は日本にとり対岸の火事ではない
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2019/11/13/164132

韓国の保守派は基本的に親米ですが、その代表格である朝鮮日報が核武装まで持ち出したのは、米韓関係の悪化どころか、米韓同盟が大きく揺らぐ状況、具体的には在韓米軍の撤収すらあり得る状況への大きな危機感の表れだと言えます。

(参考記事)

日韓GSOMIA失効は一時回避したが…在韓米軍撤退への備えを
高まる韓国の反米感情とアメリカの分担金高額要求がもたらす日本の危機
https://www.fnn.jp/posts/00049105HDK/201911222225_WatanabeYasuhiro_HDK

一方、米国において同盟国韓国の不信感は史上最悪と言っても過言ではなさそうです。

韓国は日韓の歴史認識問題を朝鮮半島の安全保障の問題へと拡大させ米国を巻き込んでしまったのです。

アメリカ政府は、すでに2017年の朝鮮半島クライシス以来、相当数の米軍家族を韓国から避難させていますが、文在寅政権が、軍事機密の塊であるアメリカの最新鋭兵器のインテリジェンスの保全ができるとは到底思えない」という理由で、アメリカ政府はすでにF-35Aステルス戦闘機だけでなく、あらゆる分野の兵器の韓国への売却を見直す検討を始めていると言います。

最新兵器供与の延期もしくは停止の先には、在韓米軍の撤退あるいは大幅削減があり、「在韓米軍なき後、たとえ朝鮮半島有事が勃発したとしても、日本に海兵隊を展開しておけば、十分に対抗できる」(アメリカ軍関係者)としています。

アメリカ政府は、在韓米軍を撤退させることによるリスクよりも、韓国に米軍を駐留させたままにしておくことのリスクのほうが大きいと判断しているのだそうです。

(参考記事)

GSOMIA維持……それでも文在寅政権はアメリカに切り捨てられる!「もはや国家としての統制が取れていない」 トランプ政権は同盟国といえども容赦はしない - 「文藝春秋」編集
https://blogos.com/article/419541/

1950年1月、当時の国務長官だったディーン・アチソン氏は、日本・沖縄・フィリピン・アリューシャン列島に対する軍事侵略に米国は断固として反撃するとした「不後退防衛線(アチソン・ライン)」を演説で示しました。

この演説は防衛ラインから朝鮮半島を除外しており、結果として朝鮮戦争の誘因になったとされています。

もし在韓米軍撤収となれば、日本の第一列島線、沖縄から日本に至るところが中国・北朝鮮、もしくはその傘下に入ってしまうかもしれない韓国との最前線になってしまいます。

つまり、米軍の「不後退防衛線」アチソンラインが復活することになります。

安全保障政策に想定外の事態などあってはなりません。

「在韓米軍撤収」、アチソンライン復活となれば、対馬防衛を含めて我が国の防衛戦力のあり方、日本に在留する米軍との協調体制など、全面的に見直す必要がありましょう。

防衛省関係者含め日本政府は、ぜひこの機会を好機ととらえ在韓米軍撤収時の防衛議論を深めていただきたいです。

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