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慰安婦問題に迫る映画「主戦場」 英エセックス大学の上映会でデザキ監督が語ったことは

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監督との一問一答から

 上映後の監督との一問一答の一部を伝えたい。

ーしんゆり映画祭での上映中止の決定とその後について

 「上映中止の決定は、脅しの懸念があるという理由でした。『懸念』です」

 「幸運なことに、映画監督の是枝裕和氏がこれは検閲であると発言してくれまして、大きなニュースになりました」

 「最終的に上映可能となりました」

 「日本ではこのような形で表現の自由が制限されることがトレンドになりつつあります」

 「今、ケント・ギルバートを含む5人に提訴されています。結論が出るまで、1年、あるいは10年ぐらいかかるかもしれません」

 ーその訴訟についての映画が次の作品になるのでしょうか?

 「いいえ、そういうことはありません(笑)」

 「予告編が混乱させるものだったようで、左派系の人はこんな映画は見ないと言い、右派系はまさに私たちの主張を出すものだと言って歓迎したのですが(会場、笑)」

 「アメリカではこういう訴訟は、スラップ訴訟(注:提訴することによって被告を恫喝することを目的とした訴訟)と言われています。これは、基本的には表現の自由を抑制するものです」

 「刑事責任を問う訴訟もあって、少々心配していますが」

 「私の学位を取り消すべきだという主張をしている人もいます」

―元慰安婦が涙を流す映像が最後の方に出てきます。なぜもっとこうした映像を使わなかったのですか。

 「同様の質問をした人は、たくさんいました」

 「あの映像は最近見つかったものですが、あのような種類の映像を頻繁には使いたくなかったのです。その理由は、慰安婦の映像はこれまで、政治的な文脈の中で使われてきましたし・・・」

ー過剰に感情的にしたくなかったのでしょうか。

 「そうですね。慰安婦制度の否定論者は、慰安婦の証言動画が感情的で、作為的だとして批判します。そう言って、論破しようとします」

 「逆に、日本で、ある学生が言ったのですが、なぜ最後にあのような映像を入れたのか、と。それまでは論理的に話が進んできたのに、なぜ最後にあのような感情を刺激するような動画を入れるのか、と。1分、いや30秒ぐらいの動画でさえ、そう言われるのです」

 「一部の日本人は、こうした証言は全くの嘘だと言います。ですから、『感情』という部分をなるべく取って、扇情的にはならないようにしたかったのです。こういう映像は日本やアメリカでもよく使われますし、感情を刺激されるのですが、同時に、慰安婦たちが微笑んでいる動画も簡単に見つかるのです」

ー日本の方は、この映画をどのように受け止めているのでしょうか。右派保守系の方でしょうか、それともリベラル左派系なのでしょうか(筆者の質問)。

 「一般的に言うと、日本人は右派系の考えの側にいると思います。私の母もそうですし、あるリベラル系の(日本人の)先生がいるのですが、私が慰安婦についての映画を作っていると言うと、『ああ、あれはみんな嘘だよ』と言いました。ですので、私が知っている人に限ると、左派系の人でも、(慰安婦問題は)韓国による嘘だと思っているようです」

 「映画を見た人は、ツイッターで判断すると、『衝撃だ』、『日本政府がこんなことをやっていたとは知らなかった』とか書いていますね。前向きの評価でした。50の劇場で公開されましたし、ドキュメンタリー映画としては大ヒットです」

 「唯一、ネガティブな見方をしていたのは、極右の人々です。『こんな映画は見るんじゃない』、と言っています。この映画を人々が見ることを怖がっています。上智大学の生徒の一人がこう言いました。『(慰安婦問題について)左派系の人々の意見を聞いたのは初めてだ』と。それで考えが変わったそうです」

 「若い人の大部分が慰安婦問題を知らないのです。このため、非常に大きな衝撃として受け止めるようです。理解するために2-3回見る人もいます。一般的に言うと、反応は前向きだったと思います」

―現在の日韓の政権で、問題は解決に向かうと思いますか?

 「現政権ではその可能性はゼロだと思います。若い人の反応を見ると、どれほどひどいことが起きたかを理解して、謝罪へという動きが出そうなのですが、現在の政権では・・・。希望はありますが」

 「日本の若い人が政治的にアクティブ(活動的)であれば別なのですが。実際にはそうではありません。韓国社会では、政治的にとても活動的です。でも、日本社会では歴史的な理由、過去のデモが粉砕されてきたことなどから、人々は政治的活動が実を結ぶということを想像できないのです。韓国では、民主化の動きがあって、成功例があります」

 「日本では変化にとても時間がかかるのです」

―証言記録はあるのでしょうか。兵士の証言記録はどうでしょうか。一般公開されていますか。

 「韓国語ですが、あります。ほかにも(山崎朋子の)『サンダカン八番娼館』もありますし」

 「(中国帰還兵のインタビューをおさめた)『日本鬼子(Japanese Devils)』というドキュメンタリー映画があります。しかし、中国からの帰還兵の証言ということで、重要視されていません」

 「東京には、『アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館』があって、ここにも証言がおさめられています」

―映画の中に出てきた偏向している人々について、どこに行けば資料があるのでしょうか。

 「右派系は左派系を、左派系は右派系を『偏向している』といいますが、まず『偏向している」というのはどういう意味でしょうか」

―極端な考えを持っている、ということでしょうか。

 「例えば、(歴史学者)吉見義明の本を読めば、偏向しているということになるのかどうか、ですよね」

 「人間である限り、誰にも偏向はあります。歴史学者が書いた本を読んで、私は理解を深めています。歴史修正主義者で、ほかの人の本を読まない人が書いた本ではなく(注:映画の中に、ほかの人が書いた本を読まないという人が出てくる)。歴史修正主義者のほとんどが歴史学者ではありません」

 「私が見るところでは、99.99%の歴史学者は、こうした女性たちが性の奴隷であったと考えていると思います」

 「まるで地球温暖化を否定するようなものです。ほとんどの科学者が実際に発生していると考え、1%がこれに同意していません」

 「映画を通して、私は(慰安婦問題について)両方の意見を出そうとしました。最後は、見る人が決めることです」

―保守・右派系のシフトについて、日本は特別なのでしょうか。それとも世界の動きなのでしょうか。

 「日本がますます右傾化しているということを、多くの人が指摘しています。先生が国歌を歌っているかを生徒がチェックするという学校もあるそうです」

 「超国家主義の学校を作ろうとしている、という話もあります。教育勅語を言わせる学校です。右傾化が進んでいると思いますが、それは自民党が作っているのでしょう」

 「米国のスティーブ・バノン(トランプ米大統領の元側近)が日本に来た時、安倍首相はトランプ以前にすでにトランプだったと言ったそうです」

―この問題について、保守・右派系を動かしているのは何でしょうか。

 「自分たちの祖父は間違ったことをしていない、韓国人はうそつきだということでしょうか。自分たちがこんなことをやるはずがない、と。ある登場人物がこう言いました。『そんなことは中国人ならするだろうけど、自分たちはしない』と」

「問題を指摘すると、日本人は自分が個人的に攻撃されていると思う」

藤田先生(撮影筆者)

 モデレーターの一人で、エセックス大学の人権フェロー、藤田早苗先生は以下のように述べた。

 「慰安婦問題は政治問題でもありますが、これは人権の視点からはユニバーサルな問題でもあります」

 「愛国主義というのは、厄介なトピックです。日本の問題を指摘すると、日本人は自分が個人的に攻撃されていると思うのです」

 「そういう面もあって、慰安婦問題についてきちんとした議論や謝罪ができないのではないかと思っています」

 「日本の問題を批判すると、その人がバッシングにあいます。私自身も反日本と思われて、サイバー上でバッシングにあいました」

 「今、韓国をヘイトする、中国をヘイトするという気運が高まっていて、私はとても懸念しています」

 ***

 上映後の雑談の中で、監督が次の作品の構想を立てていることを知った。どのような作品かについてはまだ公表していないという。

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