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慰安婦問題に迫る映画「主戦場」 英エセックス大学の上映会でデザキ監督が語ったことは

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英南部エセックス大学で上映された「主戦場」イベント(筆者撮影)

 第2次世界大戦時の慰安婦問題を主題にしたドキュメンタリー映画「主戦場」が、このところ、話題になっている。

 「KAWASAKIしんゆり映画祭」(10月末から11月4日)では、安全性を理由にいったんは上映中止とされながらも、最終日に上映が実現したことで大きな注目を集めたばかりだ。

 日本で、慰安婦問題と言えば…どう表現したらよいのだろう。

 例えば、日本語のウィキペディアでは、以下の説明になっている。

 旧日本軍の慰安婦に対する日本の国家責任の有無に関する問題。慰安婦問題にはさまざまな認識の差異や論点があり、日本・大韓民国・アメリカ合衆国・国際連合などで1980年代ころから議論となっている。慰安婦は当時合法とされた公娼であり民間業者により報酬が支払われていたこと、斡旋業者が新聞広告などで広く募集をし内地の日本人女性をも慰安婦として採用していたことなどから国家責任はないとの主張がある一方、一般女性が慰安婦として官憲や軍隊により強制連行された性奴隷であるとの主張もある。

出典:(ウィキペディア)

 筆者自身は、「河野談話」を踏まえ、日本やほかのアジア諸国の女性たちが兵士たちに性的サービスを行っていたこと、今でもその時の後遺症に苦しんでいる人やその遺族がいることを事実として認識している。

 しかし、国がどの程度関与していたのか、どんな女性たちだったのか、本人の同意があったのかどうかなどについては、国内で意見が分かれていることも承知している。欧米で英訳として使われる「sex slave(性の奴隷)」という言い方に反論する、あるいは怒りを表明する人も少なくない、ということも。

 日系アメリカ人ミキ・デザキ氏が監督した「主戦場」は、保守系政治家、タレント、歴史修正主義者、リベラル系学者などのインタビューと並行して、元慰安婦や慰安婦の遺族への取材映像、証言のアーカイブフィルムなどを交えた作品だ。

 デザキ氏にとって、監督第1作目の映画である。上智大学大学院の修士課程卒業のために作ったという。

 慰安婦問題という論争を呼ぶトピックを真正面から取り扱ったこの映画は、公開当時からじわじわと人気を高めた。

 初夏、筆者は一時帰国中に「主戦場」を渋谷のある映画館で最初に見た。場内は満員で、上映後は次の回を見ようとする人の長い列ができていた。観客の年齢層は20代から70代ぐらい。

 日本人にとっては、つらい過去を指摘されるような、慰安婦問題。これを取り上げた映画を多くの日本人が映画館に列を作るほど見たがっていることに、筆者は驚いた。何らかの回答を得たい、という気持ちが強いのだろうか。

 まだまだ決着していない、戦後の大きな問題であることは、確かだ。

エセックス大学で、上映会

エセックス大学で話すデザキ監督(筆者撮影)

 「主戦場」は、今秋、欧州各国で上映会が開催されており、デザキ監督も映画と一緒に各国を回っている。

 11月6日はウィーン、その後は英国、フランス、ノルウェー、ドイツ、イタリア、スイス、スウェーデンなど、12月上旬まで上映ツアーが続く。

 筆者は、11月11日、英南部エセックス大学での上映会に行ってみた。

 講義型の教室には数十人の観客がいた。大学ということで、学生・院生が多いが筆者を含む中高齢者の姿もあった。

 映画を映し出す役目は監督自身である。

 夏に見た時に見落としていた個所が、よみがえる。「当時は、女性はモノとして見られていた」という元日本兵の素朴な物言いが心に残る。

 さまざまなことが筆者の頭を駆け巡った。

 慰安婦たちが日韓の政治的な道具にされたことへの怒り、女性たちの境遇への思い、女性として、たった一人でも意に反する状態に置かれた女性がいたことの衝撃、そのような行為をしながらも日々戦い続けた兵士たち、そして今もなお、レイプや性的虐待が敵を攻撃する手段として使われていること(ボスニア戦争、ルワンダ内戦、ナイジェリアのボコ・ハラムによる少女たちの拉致など無数にある)などだ。日韓のみで起こったことではなく、第2次大戦のときだけでもない。今現在、形を変えながら発生していることなのだ。

 映画は、最初と最後の方に元慰安婦の映像を入れた。最初の映像は役人に怒りをぶちまける元慰安婦の姿。最後の方はつらさ、悲しみを語る元慰安婦のアーカイブ映像だ。

 作品は保守系・歴史修正主義的な人々の言論とリベラル系学者の見方を「両論併記」的に対比させているが、最終的には、慰安婦問題に対する日本側の責任を問う姿勢が出ていたと筆者は思う。この慰安婦たちのつらさ・痛み・苦しみに対し、日本側はどう対処するのか、という問いである。これは筆者が日本人だからそう思ったのかもしれないが。見る人によって、様々なメッセージを受け取る映画なのだろう。

 この点で、この映画は今年同じく話題となった映画「新聞記者」(東京新聞の望月衣塑子記者が書いた本を基にしたが、実際にはフィクション。新聞記者と内部通報者が政府の悪事を暴こうとする)とは、別の着地点を選択したように筆者は思った。

 筆者は「新聞記者」を高く評価しているものの、最後に内部通報者が心変わりをしたのか、あるいは実名を出して暴露することを決心したのかをあえて描いていない点を残念に思った。いずれかを選択することによる、制作側の覚悟を見たかった。

 翻って、「主戦場」は慰安婦たちの方に最後は軸足を置いた。「中立」ではない。その評価は観客に委ねられた。

 欧州にいる方は、スケジュールを確認して、上映イベントに足を運んでみてはどうだろうか。観客が映画監督に直接問いかけをすることができる機会はあまりないだろうから。

欧州の上映会スケジュール(英語版「主戦場」のウェブサイトから)

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