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秋吉 健のArcaic Singularity:格安SIM市場はどう変わる!? 2019年の消費者動向やMNOの料金施策からMVNOの現在と未来を考える【コラム】

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■OCNモバイルONEの新コースで見えてきた「MVNOの泥沼」

堅調なユーザー増加と認知度向上を続けるMVNOおよび格安SIM市場ですが、不安材料がないわけではありません。最も懸念されるのは客単価の低下です。

MMD研究所による調査では、格安SIMを選ぶ理由の実に74.2%が「料金が安そうだから」、「お得感がありそうだから」と答えており、そのほかの理由は10%前後から一桁%に留まっています。

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ここまで見事に料金以外の要素へ興味を持たれないのでは、戦略の幅を持ちようがない

さらにユーザーの契約実態でも61.4%が月額3000円未満の契約(うち、31%は月額2000円未満)で、月額7000円~1万円未満の契約が最も多いMNOとは大きな隔たりがあります。

棲み分け、と言えば聞こえは良いですが、つまり人々はMVNOに料金以外の要素をほとんど求めておらず、付加価値による収益力の増強が非常に困難であるという裏付けでもあるのです。

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契約している月額料金の傾向も見事に正反対だ

格安料金である、という一点にしか興味を持たれないということは、企業体力勝負の不毛なディスカウント合戦に簡単に陥ってしまうということです。

ただでさえほどんどのMVNO事業が安定した黒字化を達成できていない中、こういった消費者の意識は業界にとって非常に危うい傾向にあると言えます。前述したようにMVNOへの認知は進み、その仕組みや料金体系への理解は深まっていますが、それは単に「MVNOは安い」という認識のみである可能性が高いのです。

仮に、通信の不安定性などのデメリットの部分を理解していないユーザーが安易にMVNOを契約し、その後「まともに通信できないじゃないか!」とクレームを入れるような事態が増加するとなれば、業界全体の信用や信頼を損ねる事態も招きかねません。

OCNモバイルONEではこういった懸念への対策として、月額料金を一段と安くする代わりに通信速度制限時の低速通信を2段階とし、さらに通信速度を絞ることでトラフィック全体の負荷を軽減して回線全体としての通信安定性を向上させる施策を打ち出していますが、もはやMVNOに残された施策(戦略)と言えば、こういった「さらなる低料金と少しでも通信状態を安定化させる小手先のやりくり」くらいしかないという証左でもあるのです。

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MNOから回線を借り受けて運営するというMVNOの事業形態上、価格と通信環境にはどうにもならない「壁」が存在する

■健全な価格競争であるために

MVNO各社がそれでも事業を継続している理由には、MVNOという事業単体での収益化をあまり重視していない、という点も留意しておくべきでしょう。

例えば楽天モバイルなどは、MVNOを楽天グループが誇る自社経済圏(エコシステム)を動かす動力源として位置付けてきました。楽天モバイルの契約者が楽天グループのサービスを利用し、ポイントシステムなどでさらに楽天関連のサービスや提携企業の商品を購入することで、グループ全体の利益を何倍にも増やすという流れです。

その流れの中でなら、MVNOは赤字事業でも大きな問題はありません。逆に言えば、そういった自社の経済圏や別サービスへの誘導路としてMVNOを活用できない、もしくは活用が弱い企業は、今後ますますMVNO運営が苦しくなっていくのではないでしょうか。

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OCNモバイルONEの月額980円にも「OCNの光回線とのセット割」というからくりがある。自社サービスへ引き込むための導線だからこそ安くできる

MNOの新たな低料金戦略は、確実にMVNOの価格競争にも拍車をかけています。ユーザー数を順調に伸ばし続ける一方で、その客単価を下げざるを得ない業界状況となりつつあります。そしてその流れは、MNOの料金低下への指導と要請を政府が推し進める限り続くものです。

行き過ぎた市場競争は、市場のみならず事業としての健全性を失わせるきっかけにならないとも限りません。通信料金を安く抑えることは誰もが望むところですが、歪んだ仕組みによる低料金の実現であってはならないと考えます。

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MVNOも、価格以外の要素で競い合える市場であって欲しい

記事執筆:秋吉 健

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