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韓国3大紙も「無能外交で恥ずかしい」と嘆いた“朝令暮改”文在寅政権のGSOMIA破棄回避 - 「週刊文春デジタル」編集部

「文在寅大統領の国益のための原則ある外交の勝利だ!」

 韓国・文在寅政権が失効直前の土壇場で日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効を回避すると決めた11月22日。与党「共に民主党」のスポークスマンは冒頭のように述べ、「安保の不安要素を解消したことに大きな意味がある」と政府の決定を手放しで支持した。


急転直下でGSOMIA延長を決めた文在寅大統領(右) © AFLO

 しかし、そんな文在寅政権の急転直下のGSOMIA破棄回避という決断を、多くの国民は冷ややかに見ているという。ソウル駐在のジャーナリストが解説する。

「8月22日のGSOMIAの破棄決定からの3カ月は何だったのかというのが、国民の本音だと思います。そもそも、GSOMIA破棄が迫ったこの1カ月、韓国政府も与党も日本批判を煽って、破棄に向けた世論づくりをしていました。破棄回避が発表された11月22日にも、国会で開かれた党の幹部会議で与党代表が『(GSOMIAは)朴槿恵政府が弾劾直前に導入したもので正統性はない』とまで発言していたくらいです」

 韓国を長年取材するノンフィクションライターの崔碩栄氏も、急転直下の破棄回避に驚いた1人だ。

「22日の午前、与党・共に民主党のFacebookを確認すると、〈韓国政府は、様々なチャンネルを通じて、日本との外交正常化のために努力しましたが、日本政府は不動の姿勢でした。GSOMIAは、私たちの安全保障にとって非常に重要であるが、不可欠なことではありません〉との投稿が更新されていた。これを見て、失効まで24時間を切った後の書き込みですから、さすがに私も破棄を覚悟しました。

 それが一転、夕方には失効回避が発表され驚いて、同じFacebookのページを確認すると〈政府のGSOMIA終了猶予の決定を歓迎します。これは国民の安保不安を解消し、韓米同盟をより堅固にするためにも肯定的に働くでしょう〉と、正反対のことが書き込まれていた。午前の書き込みから7時間しか経っていない。これでは国民に失望が広がるのも仕方ありません」

3大紙も「日本の判定勝ち」

 破棄回避が発表された22日には、韓国ギャラップ社の世論調査が発表され、GSOMIAの破棄を「支持する」が51%で、「不支持」の29%を大きく上回っていた。そんな世論を背景に、今回の決断を文政権は国民にどのように説明しているのか。

「文政権は今回の失効回避について、『GSOMIAはいつでも破棄できるという条件で延長した』との主張を全面に出して、国民の批判から逃れようとしています。とはいえ、その説明は苦しい。韓国の切ったカードは『GSOMIA延長』と『WTO提訴中断』。一方の日本の切ったカードは『輸出管理について局長級対話を再開する』ということだけ。どうみても釣りあっていません。青瓦台もそこを指摘されると苦しいのか、威勢のいいことはいえない状況です」(前出・ソウル駐在ジャーナリスト)

 韓国メディアも冷ややかだ。韓国3大紙のひとつ「朝鮮日報」(11月23日付)は、今回の一件が日本の〈判定勝ち〉と報じた上で、社説では次のように断罪した。

〈結局、得たものもなく抜いた刀を鞘に再び入れることになった。(略)韓日葛藤が韓米葛藤に飛び火するとんでもない事件が発生した。日本には何の打撃も与えられなかった。文政権が反日カードで国内政治の視線を変えようと破棄を強行したことで、名分も失い、身動きもできない状況を自ら招いた。(略)無能外交で恥ずかしい〉

 また、同じく3大紙の「中央日報」(23日付)も、社説で〈強硬一辺倒の未熟な対応策が表した限界だ〉と文在寅外交を一刀両断している。

 これまで文在寅政権寄りの報道を繰り返してきた左派メディアも、今回ばかりは様子が違う。「ハンギョレ新聞」(23日付)は社説で、〈米政府がGSOMIA問題について韓国政府を一方的に圧迫してきたことに対しては、遺憾を示さざるを得ない。(略)米国は韓国国民が感じた不快感を深く認識してほしい〉と、アメリカに“八つ当たり”しながらも、文在寅政権に次のように釘を刺した。

〈GSOMIAの条件付き延長決定がなされたが、解決されたことは事実上何もない〉

流れを変えたのは米上院の決議だった

 文大統領が土壇場で翻意した背景について、防衛省情報本部情報官などを歴任するなど各国軍との情報共有に詳しい元海将の伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授は、21日のアメリカ上院のGSOMIAの重要性を訴えた議決が大きかったと指摘する。

「文在寅大統領は11月15日にアメリカのエスパー国防長官と会談しても、在韓米軍の危惧を理解していなかったのでしょう。業を煮やした米国務省が主導して上院に決議案を出し、それを超党派で可決したのです。この議決は、在韓米軍がGSOMIA破棄にどれだけ激怒しているのかの現れでした。

 アメリカ上院の決議で、特に重要なメッセージだったのは、米国上院外交委員会のジェームス・リッシュ委員長も公聴会で指摘した『GOSOMIA終了は韓国に駐留した米軍の危険を増大させて韓米同盟を損なわせる』という点です。GSOMIAの破棄は、アメリカからすれば、自国民である在韓米軍を危険にさらすことになる。破棄するとの態度を変えない韓国に、上院の決議は“GSOMIAを破棄するなら在韓米軍を撤退させるぞ”と本気の警告を発したに等しいのです。

 この決議の詳報を韓国紙が報じたことで、文大統領周辺もようやく、事態の重大さに気が付いた。慌てた韓国は国家安全保障会議(NSC)を21日、22日と2日連続で開くという異例の対応をとりました。『在韓米軍を危険にさらすのか』というアメリカの“本気の警告”に韓国が屈したのです」

強硬な「反日カード」はあるのか

 ひとまずはGSOMIAの延長が決まったとはいえ、日韓関係が予断を許さない状況であることには変わりない。

「ここまで揉めて延長したGSOMIAを再び破棄することは、日米との関係のみならず、韓国の信用をさらに落とすことですから、選択肢にはなり得ません。それに、もはや韓国に切れるカードもない」(前出・ソウル駐在ジャーナリスト)

 崔氏が心配するのは、手詰まりとなった文政権が繰り出す強硬な「反日政策」だ。

「今回の決定で文政権はダメージを受けました。想像できるのは、今回の“判定負け”を認めたくない文政権が、マイナスを取り返そうとしてさらに強硬な態度をとってくること。

 たとえば、来年3月1日の『三・一節』。日本からの独立運動を記念するこの日は大統領が演説で日本の植民地支配について触れることが多い。来年は韓国の国会議員選挙の1カ月前にあたりますから、破れかぶれになった政権が、徴用工問題の現金化など直面する課題について、日本に強硬な態度をとることで支持を訴えようとする手にでかねません。両国には問題が山積していますから」

 自国メディアから「未熟な対応」と見透かされた文在寅大統領に、次の一手はあるのか。

(「週刊文春デジタル」編集部/週刊文春デジタル)

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