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小沢健二の新作は、ロスジェネ賛歌であり、ロックである

So kakkoii 宇宙So kakkoii 宇宙 [CD]小沢健二
Universal Music =music=
2019-11-13


泣くがよい、声をあげて泣くがよい。小沢健二の最新作『So kakkoii 宇宙』がリリースされたのだ。13年ぶりの新譜であり、ボーカル入りのアルバムとしては、実に17年ぶりとなる。

ちょうど小沢健二がソロデビューしたのは、私が大学に入学し上京した、1993年のことだった。その夏は冷夏で。55年体制が崩壊したその月に見ていた深夜番組のCMで、彼の先行シングル「天気読み」のリリースを知った。その後、リリースされた『犬は吠えるがキャラバンは進む』はシンプルなようで面倒くさいアルバムというのが率直な印象だった。彼が小山田圭吾とやっていたフリッパーズ・ギターを聴いたのは、その後だった。

彼は2ndソロアルバムの『LIFE』が大ヒットし。私も国立駅前のディスクユニオンでこのアルバムを買い。ウイスキーを飲みながら立川駅南口の繁華街にある日当たりゼロのアパートで何度も聴いた。最高にポップであり、様々な融合を感じ。そして、日本語がこのようにポップスにのるのかと感心しつつ、何度も聴いた。その後も、彼の音源は追ってはいたものの、リリースは途絶え、いつの間にか彼も海外に生活の拠点を移していた。

正直なところ、にわかファンと批判されることを恐れている。とはいえ、彼のソロの音源はほぼすべて気づいていることに気づいた。熱狂的なオザケンファンがいる中で、私のようなメタラーが彼のことを語ることは、勇気がいる。たとえ、メタルライブで前の方で大暴れおり粗暴な男だと思われているようだし、日常的にネトウヨに批判されたり、ブログの自撮り写真についてネット上で誹謗中傷を受けてはいる。それでもオザケンファンの逆鱗にふれるのはやや怖い。

しかし、ポップミュージックとは時代に流れる音楽であり、多くの人に聴かれ、歌われる音楽である。そうであるがゆえに、たとえ、領空侵犯でも、にわかだと言われようとも、私にだって小沢健二について語る権利はあるのではないか。それは微力でも無力ではないのではないか。さらに、いま、ここで小沢健二の新譜について語らなくては、一生後悔するのではないか。そして、この「マニアじゃないとモノが言えない」という空気自体を打破していかなくては、いきなり論理が飛躍するが、民主主義の危機、人類滅亡の危機にもつながるのではないかと直覚し、キーボードを叩くことにした。

このあたりの、文化系面倒くさい問題は、現代ビジネスに寄稿し、沢尻エリカには負けたものの、それなりに拡散し、圧倒的な共感を呼んだので、ご一読頂きたい。



結論から言うと、彼の人間としての深み、成熟と、一方で変わらない時代を見るシャープな視点を感じる1枚である。なんせ、音があたたかい。

アルバムの冒頭を飾る、先行シングルにもなった「彗星」を聴いた瞬間、胸を鷲掴みにされ、黙って泣いた。十数年の、もっと言うと、彼が「渋谷系の王子様」なる本人が望むか望まないのかわからないような「称号」を得た頃からの四半世紀を一気に埋める音だった。語りかけるような歌い方に、引き込まれる。これは、ややノスタルジーが入ってしまうが、自分の四半世紀と重なり、泣いてしまった。いや、そんな中年の面倒くさい思い入れなど別として、人を巻き込むメロディであり、文字数の多い歌詞だった。ホーンセクションの音もコーラスも素敵なようで、実は大変にラウドな音だとも感じた。想いのこもった音だ。

その後も、やはりすでにリリースされている「流動体について」と「フクロウの声が聞こえる」を惜しみなく叩きつける。この出し惜しみのない、展開に圧倒される。十数年間、彼がためてきたものを一気に吐き出され、圧巻なのだが、それをさらりと、歌い上げる彼の才能に圧倒される。

ただ、本作の聴きどころは、この先行リリース3作だけではなく、むしろ、その後の楽曲群である。まさに我々の人生と重なるようなタイトルの「失敗がいっぱい」「いちごが染まる」など佳作がならぶ。意味深なタイトルと、深みのある演奏は、小沢健二と私達が生きてきた時代が詰め込まれているようで、それは複雑につながっている。

目の前で、小沢健二と仲間たちが演奏しているかのような、ミックスも見事だ。とにかく音があたたかい。いや、一聴するとあたたかいようで、実は激しい。だから何度も聴いてしまう。

「薫る(労働と学業)」というやはり、意味深なタイトルの曲でこのアルバムは終わる。そして、小沢健二と私たちの人生は進んでいく。

このアルバムの収録時間が46分であることにもニヤリとした。テープ世代からすると、この数字をみて何かを思い出すはずだ。良い意味で昔のレコードを聴いているかのようなアルバムだった。



止まっていた時計が今動き出したようで、実は私たちの時がずっと動いていたことを確認するアルバムだった。これはロスジェネ賛歌であり、ロックだ。

小沢健二も私たちも歳をとった。テレビ番組に出る彼をみて、正直、老けたなと思った。あの服装でなければ、たとえばスーツを着れば、ルノアールにいる中年サラリーマンのようだ。でも、枯れているようで、深くなっているし、輝いている。

オザケンが続いている。私たちも続けるのだ。ありがとう。

ぜひ、このアルバムを聴いてほしい。もし聴かずに批判する人がいたとしたなら、その人はネトウヨなみに、私と考えが合わない人だろう。

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