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『新宿鮫』作者の大沢在昌氏、ここ30年の新宿の変化を語る

 11月19日、警察小説『新宿鮫』の作者・大沢在昌氏が、新刊『暗約領域』出版記念トークショーを開催した。大沢氏はこの日、ファンからの質問にこたえる形で、作品の舞台である新宿の、ここ30年間の変化を語った。

『新宿鮫』シリーズは、新宿署で働く鮫島警部を主人公としたハードボイルド小説。イベントでは、こんな質問が飛んだ。

「『新宿鮫』が書かれたのは1990年。あれから約30年が経ち、日本の裏社会も大きく変わったような気がします。1990年と今、鮫島の活躍を描く上で、変わったことはありますか」

 大沢氏は「厳密な新宿を丸ごと書いているわけではない」と断りつつ、「ただ、おっしゃるように、新宿の街は本当に変わりました」と語りだした。

 大沢氏は「きれいになったし、表面的には暴力のにおいが姿を消している」と言うが、「これはむしろ、すごく危険な状況を見つつあるなという気がするんです」と警告する。

「警察小説が好きな方ならおわかりでしょうけど、各所轄の『組対(組織犯罪対策部)』、昔で言えば『4課マル暴』は、自分の管内にいる組員の顔は大体わかっていた。

『あいつは今、“勤め” に入ってる』『あいつは、はねっかえるから危ない』っていうのがわかっていたんですが、今はもう組員の顔がわからない。(組側も)名簿すらつかめない状態にして、組員であることを隠している。

 じゃあ、この新宿から暴力団が消えたかっていうと、消えていないわけです。彼らも昔のように、わかるような姿かたちで街を闊歩しているわけじゃない」

『新宿鮫』シリーズの2巻となる『毒猿』を書いた1991年頃、新宿には、現在とはまったく違う景色が広がっていたという。

「ある喫茶店がすごくおもしろかった。客の半分がヤクザで、残りの半分は水商売のお姉さん。座って観察してると、ガラス張りの窓の外を、別の集団が歩いてくる。ガラスのこっち側にいるのが『おい』、向こうも『あぁん』って、ガラス越しで睨み合っていると、(喫茶店の)中にいるのが『おい、ヤクザにはかまうな』って。いや、お前もヤクザだから! っていう、笑えるようなことがあって。そういうのも、今はなくなってます」(大沢氏)

 では、今、ヤクザたちはどこに身をひそめているのか。大沢氏はこう話す。

「彼らが食っているものは、水面下の、目に見えない仕事。それは、たとえば不動産だったり金融だったり、本当に一般企業とまったく変わらない。極端なことを言うと、新宿でレストランを経営したり、資金を出したりしている。オレオレ(詐欺)とかで稼いだ連中が、カタギになろうとして、まず一番やりやすいのが飲食業なんですよ。元手がありますから」

 大沢氏は最後に「『新宿鮫』では、暴力団の現在位置みたいなことは書かないようにしています。存在が当然のものとしてあるだけで、あらためて説明することはしません」と話していた。新宿の闇は、より深い場所に潜り込んでいるだけで、確かに存在しているようだ。

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