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12月に頼らない「ケンタッキー」劇的回復のワケ

「ケンタッキーフライドチキン」が絶好調だ。昨年まで苦戦を強いられていたが、一転して急回復している。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司氏は「500円ランチを打ち出し、『ハレの日のごちそう』から『普段使いできる店』にイメージを刷新したことが、業績回復につながった」と分析する――。

オリジナルチキン1ピース、カーネリングポテト(S)1個、ビスケット1個、ドリンク(S)1個がセットになった500円の「Sランチ」 - 写真=ケンタッキーフライドチキンプレスリリースより

■営業利益は前年比5.1倍に成長

「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」を展開する日本KFCホールディングスの業績が絶好調だ。11月13日発表の2019年4~9月期連結決算は、売上高が前年同期比8.5%増の380億円、営業利益が約5.1倍の24億6600万円、純利益が約5.2倍の18億9600万円だった。

好調な業績の背景にあるのが、既存店売上高の大幅な伸長だ。19年4~9月の既存店売上高は前年同期比11.0%増と大きく伸びた。続く10月も好調で8.3%増と大幅増を達成している。前年超えは10月まで11カ月連続と快進撃が続く。

もっとも、昨年の夏までケンタッキーは苦戦を強いられていた。18年3月期の既存店売上高は前期比1.9%減、17年3月期が1.0%減と2期連続でマイナスとなっていたのだ。

ところが19年3月期は一転して好調に推移し、4.7%増と大幅な伸びを見せて着地した。そして19年4~9月は前述の通り11.0%増と、中間期ではあるものの、さらに上をいく伸びを見せている。

■「ケンタッキー=特別な日の食べ物」が足かせに

この劇的な好転の理由は、「ケンタッキーは安い」というイメージの定着に成功したことによる。

2019年クリスマス向けの「パーティバーレル オリジナル」イメージ(写真=ケンタッキーフライドチキンプレスリリースより)

かつてケンタッキーには、価格が高いというイメージが付きまとっていた。それが一因となって、「特別な日に食べるもの」と思われていた。特にクリスマスの食べ物というイメージが強いだろう。実際、クリスマス時期の売り上げは極端に大きく、昨年は12月21~25日の5日間だけで年売上高の約6%に当たる69億円を売り上げている。だが一方で、そのイメージが普段使いの需要の取り込みを阻み、業績低迷につながっていた。

そこでKFCはクリスマスなど「ハレの日」の需要に頼らず、お得感を強く打ち出す戦略に舵を切ることで、業績の回復を図った。

この方向性のもとにさまざまな打ち出しを行う中で、特に大きな役割を果たしたのが「500円ランチ」だ。これは複数の商品をセットにして500円(税込み、以下同)に値下げするもので、昨年7月23日~9月5日に、オリジナルチキン1ピースにビスケット、カーネリングポテト(Sサイズ)、ドリンク(同)がセットになった「Sランチ」を500円ランチとしてランチタイム限定で販売。それぞれ単品で注文すると合計金額は920円になるものを、500円という安さで売り出したのだ。

■500円ランチ販売月は売り上げが大幅プラスに

この500円ランチが、反転攻勢の狼煙となった。発売前月に当たる18年6月まで、9カ月連続で既存店売上高が前年割れと、苦境が続いていた。マイナス幅も小さくなく、17年12月を除いて各月3~7%の大幅減となっていた。ところが、同商品の販売を開始した7月は9.0%増と大幅プラスとなり、翌8月は15.4%増と記録的な伸びを見せた。販売が終了した9月も3.3%増だった。500円ランチが大きな貢献を果たしたことがよくわかる。

今年の1月9日~2月28日にも同じSランチを売り出し、1月が5.3%増、2月が18.3%増とそれぞれ大きく伸びた。4月10日~5月14日にもSランチを販売した後、間髪を入れず、今度はタコス風サンド「チキンスライダー」とビスケット、ドリンク(Sサイズ)がセットになった「チキンスライダーセット」を500円ランチとして販売(5月15日~6月11日)。これらがヒットし、既存店売上高は4月が15.1%増、5月が16.5%増、6月が24.1%増とそれぞれ大きく伸びた。

■ちょい飲み、チキンパックもお得に提供

もっとも、6月が大幅増となったのは、創業日を記念して割引販売した「創業記念1000円パック」(オリジナルチキン5ピース)と「同1500円パック」(オリジナルチキン5ピース+ポテトBOX)の影響も大きいだろう。6月12日~7月4日に前者は通常価格より230円割り引いて1000円、後者は380円割り引いて1500円で販売した。これが500円ランチとともに6月の既存店売上高を押し上げた。

オリジナルチキン5ピースとポテトBOX がセットになった「創業記念¥1500パック」 - 写真=ケンタッキーフライドチキンプレスリリースより

「ちょい飲み」でも、500円に割り引いたお得感のある商品を売り出している。4月19日から数量限定でオリジナルチキン1ピースとビールをセットで500円で販売した。販売店舗数が145店と、全体の1割強にしかならないので収益への影響は限定的だろうが、とはいえ500円という価格にこだわりを見せたという点で興味深い。

■500円ランチでリピーターの獲得に成功

こうして販売月の既存店売上高を大きく伸ばしたわけだが、面白いことに500円ランチの販売が終わった後も既存店売上高が伸びた月が少なくない。これは極めて重要なことだ。

前記の通り、昨年7月23日~9月5日に500円ランチを販売したことで販売月の既存店売上高は大幅増となったわけだが、翌10月も4.1%増と好調が続いている。今年1~2月の500円ランチの販売後にあたる3月も、13.5%増と大幅増となった。同様に、販売終了後の7月も3.6%増と好調に推移している。続く8月も6.9%増、9月も4.8%増と大きく伸びた。

これは、500円ランチをきっかけに来店した客が「KFCは普段使いできる」と認識し、リピーター化となったことが大きいと考えられる。KFCの思惑通りにいったといえそうだ。

■消費税増税にも巧みに対応

お得感を打ち出す戦略が功を奏したわけだが、KFCは10月の消費増税への対応でも巧みな戦略を打ち出して、うまく乗り切ったように思う。

前記の通り10月は既存店売上高が8.3%増と大きく伸びている。KFCでは、消費増税に伴う軽減税率の導入後も、店内での飲食と持ち帰りの税込み価格を統一した。その上でサイドメニューやセット商品の一部を10~20円値上げした一方、主力商品のオリジナルチキン単品などは税込み価格を据え置いた。後者の商品を店内で飲食する場合は2%分の実質値下げとなる。これにより割安感を演出することができ、集客に成功したと考えられる。

もっとも、KFCは持ち帰りの比率が約7割と元来高いことも大きく影響しただろう。軽減税率が適用されない店内飲食の比率が高い競合店と比べて持ち帰りで割安感が出るため、それが売り上げ増につながった面がありそうだ。

KFCとしては当然、お得感を打ち出す戦略を継続して好調な業績を維持・向上させたい考えだろう。消費増税により税込み価格を10円単位で統一したのも、消費者にわかりやすいかたちで価格訴求を行うためであり、今後もこの路線を突き進むだろう。

オリジナルチキン1ピース、コールスロー(S)、ビスケット、ドリンク(S)がセットになった「Wランチ」 - 写真=ケンタッキーフライドチキンプレスリリースより

11月1日には、新しい500円ランチとして、Sランチのポテト(Sサイズ)をサラダの「コールスロー」(Sサイズ)に変えた「Wランチ」を販売(21日まで)。既存店売上高がどこまで伸びるのかに注目が集まる。

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佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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(店舗経営コンサルタント 佐藤 昌司)

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