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松坂大輔 実は技巧派だった平成の怪物 - 野村克也

野球界には、ときどき「怪物」と呼ばれる者が現れる。 元祖怪物・江川卓、「ゴジラ」こと松井秀喜、投打二刀流で「100年にひとり」と言われる大谷翔平……。
野村克也さんの新刊『プロ野球怪物伝』(幻冬舎)では、教え子である田中将大、「難攻不落」と評するダルビッシュ有から、ライバルだった王貞治、長嶋茂雄ら昭和の名選手まで、名将ノムさんが嫉妬する38人の「怪物」を徹底分析しています。

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松坂大輔は1998年のドラフト1位で西武に入団、1年目から16勝をあげ、最多勝と新人王を獲得する。以降もエースとして活躍し、8年間で108勝をマークした。

ただ、松坂の才能は充分に認めつつも、率直に言って、松坂に対する私の評価はそれほど高いものではなかった。というのは、私がピッチャーにもっとも必要なものだと考える原点能力、すなわちアウトコース低めのコントロールがよくなかったからである。

私は松坂を本格派ではなく、技巧派だと見ていた。以前にも述べたが、私のいう本格派とは、バッターがストレートを待っているときにストレートを投げても抑えられるピッチャーのことを指す。松坂はそうではない。もちろん、ストレートは充分に速いが、ほかにフォーク、カーブ、スライダー、チェンジアップなど多彩にして一級品の変化球を持ち、そのコンビネーションでバッターを打ち取っていく。私に言わせれば、技巧派なのである。

松坂ほどのスピードと球種があれば、いくらでも三振がとれ、抑えられると思われる。ところが、実際はそうではなかった。空振りしてもおかしくないストレートを打ち返されたり、緩いカーブやチェンジアップにも反応されたりするシーンが多々あった。

なぜか。原点能力が低いからである。だから、甘く入ったボールを痛打されたり、変化球頼みになったところを狙い打ちされることが多かったのだ。

2007年にメジャーリーグへ行ってからも、制球難は変わらなかった。フォアボールを連発してランナーをため、大量失点することがしばしばあった。そのうえ、右バッターのインコースへのコントロールも悪かった。だから、インコースとアウトコースのコンビネーションがうまく使えず、攻め方が苦しくなり、単調になることが目立った。もう少し原点能力が高ければ、アメリカでももっとすごい成績をあげられたと思う。

レッドソックスとメッツで通算56勝をあげたあと、松坂は日本球界に復帰した。彼のフォームを見て、私は「もう復活は無理だろう」と思った。

松坂は2012年に右ひじの手術を受けた。その後遺症なのか、明らかに投げ方がおかしかったのだ。どこかをかばっている投げ方をしていた。首をやたらに振っていたのがその証拠だ。肩が痛くて腕がいうことをきかないから、首を振ることになるのである。実際、ソフトバンクでの3年間で一軍登板は1イニングだけだった。

その後、テストを受けて2018年、中日に入団。6勝をあげ、オールスターにも出場、カムバック賞を受賞した。久しぶりにピッチングを見たら、ずいぶん投げ方がよくなっていた。かなり治ったのだろう、首を振ることが少なくなった。もはや150キロは投げられないが、スピードよりコントロールを意識するようになったようだ。

2019年は春季キャンプでファンから腕を引っ張られて右肩を負傷し、出遅れてしまった。現役晩年を迎えたかつての怪物は、来シーズン以降いかなる変貌を見せてくれるのか。私は楽しみにしている。

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