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動物の殺処分と安楽死を考える「アニマルウェルフェア」

滝川クリステル氏(代表理事)による挨拶 ⒸJapan In-depth編集部

Japan In-depth編集部

【まとめ】

クリステル財団、動物の殺処分と安楽死を考えるシンポジウム開催。

・独には殺処分施設なく、適切な理由なく動物を殺す事は法律で禁止。

・私たち一人一人が動物福祉について考える事が大事。

動物福祉を推進する一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル(以下、クリステル財団)は、11月16日、動物保護の最前線に立つゲストと,動物の殺処分と安楽死について考えるシンポジウムを東京都の青山学院大学本多記念国際会議場で開催した。

青山学院大学で開催された、クリステル財団主催の「フォスターアカデミー」は、ヨーロッパ最大の動物保護施設「ティアハイム・ベルリン」からスタッフのアネット・ロスト氏を始めとするゲストを招き、動物の殺処分と安楽死についての議論を行った。

冒頭、財団の代表理事滝川クリステル氏が登壇した。滝川氏は「今日はこの場で皆さんの声を伺い、ディスカッションして殺処分について深く切り込んでいきたい。」と述べ、殺処分について、いかに動物に苦痛を与えない方法を作るのかの議論を促した。会場には約300人が集まったほか、メディアの姿も多く見られた。

続いて、クリステル財団の事務局長である堀江雄太氏が、財団の活動の一つである「パネル・フォー・ライフ」という取り組みを紹介した。QRコードが印刷された等身大の保護犬猫のパネルを様々な場所に置き、そのパネルを見て興味を持った人がQRコードを読み取ることで、飼い主を待っている犬猫の情報にアクセスできるものである。堀江氏はこのプロジェクトについて、「オンラインとオフラインを繋いだ取り組み」と述べた。

▲写真 QRコードが搭載された犬の等身大パネル ⒸJapan In-depth編集部

基調講演では、「ティアハイム・ベルリン」の、アネット・ロスト氏が登壇した。

ティアハイム・ベルリンは現在180人の職員が在籍し、約1400頭の動物を保護しているドイツで最も古い歴史を持つ協会の一つである。現在、約400匹の猫を保護しているが、親子、病気とケガ、リハビリ、野良猫などセクション毎に分けて、異なる保護をしているという。また、一般の猫とシニア猫の部屋を分けるなど、猫と里親のマッチングの確率をあげている。

動物の安楽死についてロスト氏は「ドイツにはシェルターや殺処分施設がなく、適切な理由なく動物を殺すことは法律で禁止されている」と説明した。しかし、重度な行動異常を持つ動物に対しては、倫理委員会が召集され、12項目の判断基準に基づき安楽死を認めることが可能であることが紹介された。「本当に苦しんでいて生きる喜びが見つけられないと判断された場合、安楽死も動物福祉である」とロスト氏は述べた。

ロスト氏の講演後、滝川氏がロスト氏に「今一番必要なことは何か」と質問した。これに対して、ロスト氏は「協会は年間1000万ユーロ(約12億円)を必要とするが、政府による補助がなく、財政の60%は一般の寄付によるものであるため、経済的な支援が必要だ。」と答えた。

▲写真 ロスト氏に質問にする滝川氏 ⒸJapan In-depth編集部

後半は「動物のニーズを満たす」について、加隈良枝氏(帝京科学大学 准教授)の講演が行われた。加隈氏はアニマルウェルフェアを「人間による動物の利用を認めながら、動物により良い生活をさせる考え」と定義付け、動物の心、体、自然状態を理解し、動物にとって何がベストなのかを中心に考えることが重要だとの考えを示した。

次に、佐伯潤氏(日本獣医師会理事)が「殺処分方法の方法の理想と現実」について講演した。佐伯氏は安楽死について「獣医師に認められた最後の治療法」であり、獣医師もまた本当に正しい決断と選択をしたのかと悩み続けている、と話した。「安楽死=獣医師の敗北」という一般的な考え方に対して佐伯氏は「医者にとって死は敗北ではない。」と述べ、「動物を苦痛からどう解放してあげるかを考えることが重要である」と自身の思いを語った。

最後に、17年間アメリカでシェルターメディスンを勉強した田中亜紀氏(日本獣医生命科学大学助教)は、「安楽死はサイエンスでありメディスンである。そして科学であって動物に対する尊厳である」と述べた。そのため、安楽死による痛みは最小でなければならず、動物の状態を配慮してその動物に合った安楽死の方法を探す必要があると訴えた。

また田中氏は、アメリカの殺処分ゼロのプレッシャーによる悪影響にも触れた。アメリカではどんなに良いシェルターでも安楽死を実施すれば叩かれるため引き取りの拒否、年単位のケージ生活、多頭飼育崩壊の助長などの問題が起きている。それによって譲渡ができず、殺処分もできないというジレンマが生じている、と紹介した。

▲写真 登壇者クロージングセッション 左から堀江氏、田中氏、佐伯氏、ロスト氏、野原氏(通訳)、加隈氏、司会者 ⒸJapan In-depth編集部

その後、殺処分ゼロに関するクロージングセッションが行われた。佐伯氏は「臨床現場でやれることは臨床現場でやる、安楽死に対する正しい理解が必要だ。」と述べた。

加隈氏は「現場の人が知識を増やすだけではなく、飼う側も正しい知識を持つべきである。」と述べた。田中氏は「法律で全部の問題を解決できないが、しっかりと整備することが大切だ」と訴えたのに対してロスト氏は「国と国のシチュエーションを比較するのが難しい。国によっては状況が違うし抱えてる問題も異なる。」と動物福祉の課題を提起した。最後に堀江氏は「こういう機会をきっかけに、1人1人が何をできるのかを考えることが大切だ。」と全体をまとめた。

▲写真 会場の様子 ⒸJapan In-depth編集部

来場していた高校生の三浦花連さんは「安楽死の話がとても印象的だった。人間でも難しい話なのに、動物は自分の意思を伝えられないからもっと難しい。」と話した。

▲写真 来場者の三浦花連さん ⒸJapan In-depth編集部

一般男性の岩熊さん は「命と幸福について考えさせられた。会場に女性が多かったが、男性にも興味を持ってもらうために、動物福祉による自分自身のメリットを理解してもらう必要がある。」と話した。

▲写真 来場者の岩熊さん ⒸJapan In-depth編集部

【訂正】2019年11月18日

本記事(初掲載日2019年11月17日)の本文中、「1000万円」とあったのは「1000万ユーロ(約12億円)」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

誤:これに対して、ロスト氏は「協会は年間 1000万円 を必要とするが、政府による補助がなく、財政の60%は一般の寄付によるものであるため、経済的な支援が必要だ。」と答えた。

正:これに対して、ロスト氏は「協会は年間 1000万ユーロ(約12億円)を必要とするが、政府による補助がなく、財政の60%は一般の寄付によるものであるため、経済的な支援が必要だ。」と答えた。

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