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努力家で高学歴な両親が陥る「教育虐待」のワナ

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教育熱心な親のもとで、元気をなくす子供たちがいる。プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは「大量の課題や細かい管理で子供を精神的に追い詰めていたら、それは“教育虐待”といえる。親も子も自覚しにくいのが怖いところだ」と指摘する――。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

30分でも「ぼーっとしている」のが許せない

近頃、「教育虐待」という言葉が世に浸透しはじめている。

虐待というと、子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、育児放棄をしたりといったいわゆる“ダメ親”を思い起こす人が多いだろう。その対極のように見える教育熱心な親は、一見子供思いの“いい親”に思われがちだが、子どもを精神的に追い詰めるという点では、前者と変わりない。むしろ、やっている方もやられている方も自覚しにくいという怖さがある。

カズマくんの家を訪れた時のことだ。カズマくんは中学受験を目指す5年生。両親は共に高学歴で教育熱心。受験塾には1年生から通わせている。

カズマくんのお母さんは、とにかく勉強をやらせたがる。カズマくんが勉強していない時間が一瞬たりとも許せないようで、次々と課題を渡す。例えば2時間勉強をしたら、30分の休憩が必要だ。この30分が子供にとってはリラックスできる時間で、そのメリハリが効果を上げる。そう、アドバイスをしても、お母さんは聞く耳を持たない。その30分すら休ませたくないのだ。

「ぼーっとしたり、遊んでいる暇があったら、勉強をしなさい! 成績が上がらないのは、努力が足りないからよ!」

休むくらいなら、この30分に勉強をして、クラスを2つ上げてほしい……。たくさん勉強をすれば成績が上がると信じているのだ。

頑張っているのに、成績が上がらない原因

お母さん思いのやさしい性格のカズマくんは、言われたままに勉強をする。だが、その表情には生気がない。あと1年持つのだろうかと心配になる。

受験指導をしていると、多くの母親から相談を受ける。その多くが「頑張っているのに、成績が上がらないんです……。あと何をやらせればいいのでしょうか?」といったものだ。

長年、受験指導をしてきた私から見ると、成績不振の原因の多くは、「間違った勉強のやり方をしている」ことが挙げられる。中でも勉強のやらせすぎが多い。そういう親の多くが、「自分は努力をして成功をつかんだ」という経験者だ。高学歴のカズマくんのお母さんが、量にこだわるのも、自分はたくさん勉強をしてきたから結果を出すことができたと思い込んでいるからだ。

だが、成長途中の小学生の子供は無理が利かない。夜遅くまで勉強をさせれば、そのダメージは翌日に必ず響く。教育熱心な親は「間引きをする」という発想がない。

習い事のやらせすぎは「遊び」の機会を奪う

やらせすぎは勉強に限らない。近頃は幼い時からたくさんの習い事をさせる親が増えている。インターネットの普及で情報があふれている今、子育てに関する情報に振り回されてしまう親が多いのだ。

「東大生のほとんどは幼い時に公文とピアノを習っていた」と知れば、目の前にいるわが子の興味などお構いなしに教室に入れる。「4年生から始まる人気受験塾に入れたいのなら、低学年のうちから席を確保しておかないと入れなくなってしまう」という噂が流れれば、われ先にと入塾させる。なんでも早く始めるのが有利という風潮が、以前にも増しているように感じてならない。

習い事をさせるのが悪いと言いたいのではない。子供が関心を示せばどんどんやらせていいと思う。だが、やらせすぎには注意が必要だ。なぜなら、幼い時からの習い事の詰め込みは、子供の自由を奪うからだ。

子供は遊びや生活を通して、いろいろなことを学ぶ。鬼ごっこ一つをとっても、鬼に捕まらないようにするのはどうしたらいいのか、遊びをもっと盛り上げるには、どのあたりにいるとおもしろくなるのかなど、考えて行動する。また、子供同士の遊びには喧嘩がつきものだ。そういう時にどうしたらいいのか考える機会も得られる。判断力、問題解決力、予想力、想像力、表現力など、遊びを通じて身につくものは多い。その機会を奪うこと自体が、私は教育虐待だと思っている。

遊ばなかった子は、5年生で伸び止まる

遊ばない子供は発想力が乏しい。親に言われたことしかできないし、塾から習ったことしか解けない。そういう応用力のない子は、いつかどこかで壁にぶつかる。幼い時から習い事をたくさんやってきた子は、中学受験では4年生の基礎学習まではなんとかなる。だが、5年生以降に応用力が求められるようになると、そこで伸びが止まる。

幼い時からたくさんのお金を教育に投資してきたのに、成績がまったく上がらない。むしろ、下がっていく一方となった時、教育熱心な親はさらに量を増やす。そして、自分の思い通りにいかない子育てにイライラする。

実は、母親が不機嫌な家の子供は、成績が伸びにくい。小学生の子供にとって、母親は誰よりも大切な存在だ。その母親が自分のことでイライラしていると、子供はどうしていいのかわからなくなってオロオロしてしまう。幼い子供にそうさせてしまうことも、教育虐待だと思う。

言葉で責める「努力で成功した」父親

教育虐待に走るのは、母親だけではない。中学受験といえば、ひと昔前までは母親と子供の二人三脚と言われてきた。ところが今は、共働き家庭が増え、教育熱心な父親も増えている。

教育虐待に走る父親には2つのタイプがある。一つは言葉で責める父親、もう一つは過剰な管理をする父親だ。

言葉で責めるタイプは、自分に成功体験がある父親が多い。俺は学生の時に必死に努力をして勉強をした。だから、一流の大学にも入れたし、一流の企業にも就職できた。自分ができたのだから、わが子にもできるだろうと自己投影してしまうのだ。特に息子に対してその傾向は強い。

「何で分からないんだ!」
「俺が子供の時はこんな問題は簡単に解けたぞ」
「成績が上がらないのは努力が足りないからだ」
「俺の子ならできるはずだ」
「俺の子とは思えない」

その口調が強くても、冷静でも、冗談っぽくっても、何度もそれを聞かされる子供にしてみれば、うれしいものではない。相手が嫌だな、つらいなと思った時点で、それはもう立派な教育虐待になる。

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