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なぜ新規事業の立ち上げに“エリート君”は不向きなのか? 企業の未来は「藪漕ぎ力」でわかります - 牧野 知弘

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「藪漕ぎ」という行為をご存知だろうか。

 山野を歩くとき、森林の中では木々の間を縫うようにして歩く。そこが背の低い草地なら草を踏みしめて歩くことができるので、それほど苦労はいらない。しかし、高さ2メートル程度のススキやササが生い茂る藪の中を歩くのは、実はもっともやっかいだ。

 こうした草の群落は、人が歩ける歩幅も確保できないほどに密生している。その中を歩くには、これらの丈の高い草を「掻き分けて」進む必要がある。新たに道を切り開く際などに必要となるこの行為を「藪漕ぎ」と言う。

「藪漕ぎ」はビジネスにも必要

 藪漕ぎを職業にしている人は、例えば警察や消防の人たちだ。遭難者や行方不明者の捜索にあたって山の中に入っていく姿には頭が下がるが、彼らは決然として道なき道を、藪を漕ぎながら進んでいく。軍隊などのレンジャー部隊もそうだ。また、鹿や猪などの獲物を狙って藪に入る猟師、山菜取りに山に入る人たちも藪漕ぎをしている。

 さて、この藪漕ぎ、実はビジネスの世界にも当てはまる話だ。たとえばある会社が新規事業に進出する、あるいは未知の領域に挑むとき、自分たちが歩むべき道は藪の中だ。これまでは決められた道順どおりに車を走らせていればよかったのが、その道を自ら作っていかなければならない。そこで必要となるのが藪漕ぎだ。

©iStock.com

“体育会系根性社員”が道を切り開く

 ただ、藪漕ぎにはリスクもある。背の高いススキやササに行く手を阻まれるかもしれない。鋭いススキの葉で指を切るかもしれない。足を踏み外そうものなら大怪我をするかもしれない。そこで多くの企業では、藪漕ぎには優秀な“エリート君”ではなく、言われたことを忠実に死ぬ気でやってくれる“体育会系根性社員”を配置する。

 彼らはちょっとやそっとのことでは“めげない”。切り開くべき方向を見定め、その目標に向かってひたすら藪を漕ぐ。多少犠牲者が出ても、あるいは大怪我を負っても、この手の社員ならば「替え」がいるので大丈夫だ。もし藪漕ぎをやっても道がわからず、撤退の事態になったとしても、エリート君たちの傷にはならないのでそれほど気にする必要もない――。

 では、仮にうまくいったらどうなるか。彼らが必死こいて切り開き踏みしめた道を、まずはブルドーザーなどで整地していく。さらに後続部隊によって道はきれいに舗装され、整備が進んでいく。こうして企業は新しい事業領域を確保できることになる。

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