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くだらない飲み会は"砂金集め"の気持ちで臨め

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やらなくてはいけないことに対して気が進まないとき、どうすれば前向きになれるのか。ブロガーのフミコフミオ氏は、「『どうせやるなら何か得られるものを探そう』と貪欲に取り組むと、何事にも意味が生まれる」という——。

※本稿は、フミコフミオ『ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taa22

■世の中は無意味に見えることであふれている

45歳。人生も残り半分になったので何をするにも「どーせやるなら」の精神で取り組み、そこで得られるもの全部を得ていきたいと考えるようになった。現在取り組んでいること、目の前にあるものが人生で最後かもしれない。そんな解散ライブに臨むロックバンドのような気分。アンコールを求められなくてもアンコールに応える気概。

仕事、学業、研究、それから法事。人生はやりたくないけどやらなきゃいけないことの連続だ。年齢を重ねるにつれ、会議、ミーティング、接待……、やりたくないけどやらなきゃいけないことは増える一方である。

「大人になるための我慢」と諭され、クソつまらないテスト勉強や受験戦争を耐え抜き、やっとの思いで大人になったのに、それでもやりたくないことが増える一方というのは、どういうことなのだろう。騙(だま)されたのだろうか。

やらなきゃいけないことのうち、意味のあるもの、今やらなきゃならないものがどれだけあるというのか。いいところ3割くらいだろう。社会に出れば無意味な会議や意味不明なミーティングがあるとは薄々わかっていたから、驚きはなかった。「世の中にはアホなことにアホなくらい真面目に取り組んでいるアホがいるのだなあ」と感動すらした。

何か考えているようで、何も考えていない。いい大人たちが仕事しているポーズをすることで会社という組織のなかで大真面目に真剣に生き残ろうとしているのが、滑稽で、哀しかった。

■「自分はこんなバカにはなれない」と思った会社の飲み会

会社勤めでしんどいのは、バカバカしいこと、無理なことを正気のままやらなければならないときがあることだ。朝礼でラジオ体操をしたあとに会社愛を叫ぶなんて正気でできるはずがない。

僕が大学を出て最初に入った会社は、いい会社だった。ただし、それを帳消しにするような酷(ひど)い点も多い職場であった。毎晩のように繰り返される、上司の自慢話を聞かされるだけの飲み会。完全無欠にくだらない飲み会。

もし当時の飲み会に意義を見出すとするならば、平均的な酒の強さしか持ち合わせていなかった僕が、ストロングゼロを一気飲みしてもびくともしない酒への耐性を身に付けられたことくらいだろう。

「俺が」「俺なら」「俺みたいに」——バリエーションの乏しい自慢話を披露する上司。「うわっ! それはすごいですね!」「自分なら逃げ出しています!」「どうやってそのピンチを乗り切ったのですか!」とアホのように目を見開き、モンキーのように手を叩(たた)いて上司から気に入られようとする先輩や同僚。すべてがバカバカしく見えた。いやバカそのものだった。

「慣れればわかる」と先輩は言ってくれたけれど、申し訳ないが宴(うたげ)に呼ばれて顔を出せば出すほど、自分はこんなバカにはなれない、つまり出世はできない、という絶望は深くなるばかりだった。

能力的には決してバカではない先輩たちのバカな姿を見ているうちに、「あんなすごい先輩たちでも生きるためにバカになっておられる。やりたくないことから逃げ続けるのは不可能なのだな」という諦めも強くなっていった。

■先輩の頭を便器にダンクシュートした

ある日の宴会の途中で、それほど親しくない先輩がべろべろに酔っぱらって姿を消した。「様子を見てこい」と命令されて捜索すると、トイレで倒れた先輩を発見。なんとか担ぎ上げると「ウ〜キモチワリー」と震え出した。

大噴火されたら直撃は免れない。僕は先輩を個室まで引きずっていき、頭をバスケットボールに見立ててダンクシュートする要領で便器へ突っ込み、背中をさすった。その後の地獄絵図は描写するのは控えるが、吐き出すものを吐き出してスッキリした先輩の言葉は今でもよく覚えている。

「バカをバカのままで終わらせてはダメだぞ……」

たいした言葉ではない。だけどこれは、バカみたいに泥酔して頭を便器にダンクシュートされてゲロった人間が脂汗を額に浮かべながら口にした言葉。素の言葉だ。ピュアな言葉は人の心を打つ。「バカをバカのまま終わらせるな」は僕にとって大事な言葉になった。

「バカをバカで終わらせない」は「ムダにする時間はない」ということ。等しく時間は流れていく。バカなことを回避できないのなら、バカをただのバカにしないようにすればいいとダンクシュート先輩は教えてくれた。

先輩はバカな飲み会でバカを演じ続けて、本当のバカになった。今は、立派なアル中になって昼間は窓際の席で死んだような顔をしているらしい。バカもほどほどにしなければならないと命を削って教えてくれた先輩には感謝している。

■「どーせやるなら」と宝探しのように考える

あのトイレの出来事から20年ほど経った。平社員から管理職になれば状況は好転するかと思いきや、管理職になれば管理職のやりたくないがやらなきゃいけないことが僕を追ってきている。ただ、どうしても対峙しなければならないときは、「どーせやるなら」と考えるようにしている。

もちろん、どーせやるならと考えてみたところで全部が有意義なものになるわけじゃない。バカ上司の自慢を聞かされるだけの飲み会から得られるものはない。ただ、皆無でもない。1万回に1回くらいは、ためになるものは転がっている。言ってみれば宝探しである。

僕は今、転職を重ねて食品業界に身を置いている。きっかけになったのは、参加したくなかった異業種名刺交換会に「どーせ参加するなら」という心構えで顔を出して、ヤケクソ気味に「名刺いかっすかー」「名刺いかっすかー」と行商ライクに名刺を配り歩いたすえに、同じ年齢の食品メーカー営業マンと出会ったことである。

このような場に参加して、「違う世界で頑張っている同年代の人からエネルギーをもらいましたー」というエピソードを手に入れる人は幸せだ。僕は不幸であった。その食品メーカー営業マンは当時僕が身を置いていた運輸運送業界をこき下ろしたのである。

「キミたちの会社は何かを生み出しているわけじゃない。運んでいるだけだ。価値観を生んでいると言いたいのかい? 価値観を持ち出すのは何も生んでいない証拠だぜ」と彼は言ったのだ。

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