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『ターミネーター:ニュー・フェイト』過去作を犠牲にしてでも作られるべきだった理由

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『T1』の焼き直し? と見せかけて…

 ジョンの死に困惑するヒマもなく、ストーリーはテンポ良く進む。

 本作はメキシコシティが出発点。ヒロインのナタリア・レイエス演じるダニーの元に、未来から悪のロボットと正義の使者が送り込まれる。死にものぐるいでダニーを守る者と、是が非でもダニーを殺そうとする者のし烈なバトルがおっぱじめられる。

 正義の使者グレースを演じるのは、遼河はるひみたいな長身美女マッケンジー・デイヴィスで、これがまためちゃくちゃかっこいい。小柄なナタリアとのコントラストも相まって、今作で最も華がある役どころだ。

 ちょっと待て、未来からやってきた悪者と正義の使者が人類の命運を握る主人公をめぐって攻防を…ってそれ、まんま『T1』と同じやんけ! というツッコミどころで、本作にはすでにそうした「焼き増し」批判もネットでは見かける。

 しかし、この「焼き増し」は十二分に戦略的なのだ。

巧みなミスリードを誘うサラ・コナーの言葉

 ここで、観客は見事にミスリードされる。そうか、今回はダニーの子どもが人類の鍵なのか、と。サラも自分がそうだったように、ダニーに「敵はあんたが怖いんじゃない。あんたの子宮が怖いんだ」という、少々ドギツイ言い回しで説明し、観客の思い込みを肯定しかける。

 しかしその後、未来で起きること少し違ったことが明かされる。未来でグレースが信奉している司令官は、実はダニーその人だったのだ。

 グレースは、勇敢に成長した未来のダニーに救われ、彼女と共にAIとの戦いに身を投じ、そして今回現代でダニー自身を助けるために送り込まれたのだ。

過去作の批判的な“アレンジ”

 この展開は、『ターミネーター』シリーズの批判的な“アレンジ”であることは言うまでもない。

 サラも『T1』では敵方の標的だったが、これは何も彼女自身が狙われていたわけではない。彼女がいつか身籠もるジョンが標的なのだ。だから、ジョンが生まれた後を描く『T2』では一転して、彼を守る側に回る。彼女自身が言ったように「敵はサラが怖いんじゃない。サラの子宮が怖い」のだ。

 でもこれはよく考えてみれば、背景に冷酷な思想が見え隠れしていることに気づく。例えば、サラが死んだとて、その子であるジョンが生まれさえすれば人類は誰も困らない…。「お世継ぎ問題」に似た不気味さが残るのだ。

 「敵はあんたが怖いんじゃない。あんたの子宮が怖いんだ」は、意地悪に言い換えれば、「あんたが重要なんじゃない。あんたの子宮が重要なんだ」ということなのだ。

 『T1』『T2』に慣れ親しんでいるものほど、この事実に麻痺しがちである。

 しかし、ダニーはグレースたちに守られるだけの役目を拒否し、自ら、未来からの刺客に相対することを決意する。最初はメソメソ泣いてばかりいた彼女は、次第に強い自立心に芽生え、成長していく。その延長線上には、もちろん、未来で人類のリーダーとなる姿がある。

 本作は、過去作のストーリー構造(「あなたが大切なのではなく、あなたの子宮が大切なのだ」)を想起させつつも、実はそうではないと否定し、ダニーに対して「私自身が何よりも大切で、私が戦い、未来を作る」という決意をもたせる。

 同時に、ジョンという生きる意味を失ったことで失意のまま孤独に戦い続けたサラに対しても、息子がいなくたって、あなたには生きる意味がある、というメッセージ性において、彼女にも救いを与える。

過去作を“廃棄”してでも作られるべき快作

 なお、賛否両論のバトルシーンだが、ぼくはかなり好きである。特に、主人公らがめちゃくちゃ強い敵に対して総力戦で挑むシーン、血が熱くたぎってきた。

 また、今回新登場の悪役も、ダメージを食らった部分がタールみたいになるビジュアル、また、部下みたいなのと二手に分かれるシーンはよくわからなかったが、その不可解さも含めて好きである。

 とにもかくにも、名作『T2』の余韻と、『T3』を時間軸の彼方に廃棄してでも作った甲斐があった本作『ターミネーター:ニュー・フェート』。文句なしだ。

 どう見てもロボットの演技する気がねえだろというシュワちゃんはご愛嬌、ということで。

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