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ついに死者も……2019年の香港デモが過去に比べて“ヤバい”理由 『13・67』の著者・陳浩基が語る - 陳 浩基

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 6月の逃亡犯条例改定案に端を発した香港の大規模デモは、10月23日に立法会で正式に改定案の撤回が決まった後も依然として続いている。デモ隊と警察の衝突も実弾での発砲、マスク禁止条例が緊急発動されるなどエスカレートし、11月に入ってついに死者も出てしまった。香港デモの現状と意味、過去の同様な事態との比較などを、香港の現代史をテーマにした『13・67』(文藝春秋)で2017年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位を獲得したミステリー作家・陳浩基さんに聞いた。

◆ ◆ ◆

「黒い服を着ていると、いろいろと問題が起こります(笑)」

――6月9日に始まった香港の反政府デモは100日を経過した現在も沈静化の兆しが見えません(インタビューは9月26日に行われた)。デモ発生以降、陳さんの日常生活になにか変化はありますか。


陳浩基さん ©玉田誠

 いまのところ、私自身の生活にはたいした変化はありませんが、土曜日と日曜日は外出ができません。街中のいろいろな場所でデモが発生するので、政府が突然地下鉄の駅を閉鎖してしまいます。デモに巻き込まれるかどうかの心配よりも先に、目的地や家に辿り着くことができるかどうかを考えなくてはいけないのです。

 9月に入ってからも、土曜日の夕方6時から誠品書店でイベントが予定されていたのですが、その日は銅鑼灣でデモがあり地下鉄の駅も封鎖されたので、私たち出演者もお客さんも会場に行けないだろうと判断され、イベントは延期になりました。結局、この日は誠品書店も早仕舞いになったそうです。

 あと、黒い服を着ていると、いろいろと問題が起こります(笑)。デモ隊の人たちは黒服を着ているので、うっかり黒服で出かけると警察から無差別に標的にされます。

 これがいまの香港の現状です。実際に自分の身に危険が迫ったり、不自由な思いをしているわけではないのですが、新聞には連日気が滅入るような記事が躍っていますので、気分は落ち着きません。デモが始まってからの日々の変化というのは決して大きいものではないのですが、だんだんと雰囲気が変わっていっているというふうに感じています。

Amazonでの購入品の中身を調べられた

――8月に陳さんがガスマスクを購入したというツイートをご自分のTwitterにアップされて、日本でも陳さんは大丈夫なんだろうかという声が上がりました。いまのところ危ない目に合うようなことはないと思っていいのでしょうか。

陳さんのツイート

 私がいま住んでいるあたりは平穏ですが、いつか状況が変わって危険なことが起こるかもしれないという心配はあります。例えば、太古城(タイクーシン)という香港島の北東部にある高級住宅街でデモ隊と警察の衝突があり、友人のこどもが催涙ガスで怪我をしました。今の香港では、どんな場所でも突発的にこういった事態が起こりうるということです。

――この太古城のお友だちの事件をきっかけにガスマスクを購入したとツイートしてましたね。しかも、Amazonで購入したガスマスクが家に届いた時にはパッケージが半分開封されていて、どうやら配送の途中で中身を調べられたようだと。「もしかしたら要監視対象のリストに載せられたかもしれない」と呟いていました。

 これも現在の香港の日常生活です。警察にしてみても、あらゆる場所でデモが突発的に起こるので、誰も彼も監視対象に見えてしまうわけです。

――6月のデモには香港の全人口の7分の1に当たる人数が参加したと言われていますね。

 もちろん参加しない人も大勢いますが、そういう人の中でもデモの参加者を支持する人が多いと思います。年配の人たちの中にはデモに反対する人もいますが、若い世代はデモを支持していますね。

1967年や2014年と較べて2019年のデモはどう違うか?

――陳さんは『13・67』で香港の現代史を描きました。物語の起点として描かれたのは(時系列が逆転した構成ですので作中では第6話に当たりますが)、1967年の反英暴動です。

 1967年は中国で文化大革命が始まった翌年です。文革に触発された香港市民が英国の植民地支配に反対する大規模デモ、左派反英暴動を起こしました。香港警察は暴動の鎮圧に尽力したことで英国の女王エリザベス二世から「ロイヤル(皇家)」の称号を与えられ、皇家香港警察(ロイヤル・ホンコンポリス)が誕生しました。

――現在とは左右正反対の図式だったわけですね。『13・67』は1967年から1997年の香港返還を挟んで、雨傘革命の前年2013年までが描かれています。1967年や2014年と較べて2019年のデモはどう違いますか?

 一言で言えば、いまはもっと「ヤバい」です。いまは1967年当時と違ってインターネットの時代です。ネット上では様々な流言蜚語やフェイクニュースが飛び交っていて、なにが真実なのか誰にも本当のことがわからないのです。

 また、2014年の雨傘革命の時は市民対香港政府という構図ではありましたが、政府側が直接的に民衆の意見を聞く機会もあったので、そこには対話が存在しました。現在は市民の側にもはっきりとした組織がなく、みんなネットを見て三々五々集まってくるので政府側としても誰と対話したらいいのかわからないし、市民側も政府側もネット上の不確かな情報に惑わされて疑心暗鬼になってしまい、まったく対話が成立しないんです。

 また、雨傘の時は取締る側の警察の中にも、市民の側に立ってデモを支持するという動きもあったのですが、いまは完全に政府側になってしまって、市民対警察という構図になってしまっています。

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