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「終身会員なら100万円!?」ネトウヨ向け“サロンビジネス”はどのくらい儲かるのか 「保守系言論人」の財布の中身 #2 - 古谷 経衡

1冊3000万円も ネット右翼のビジネスモデル――なぜ私は「愛国商売」と決別したか から続く

「愛国ビジネス」の実態に迫った衝撃の小説『愛国商売』(小学館文庫)をこのたび上梓した古谷経衡氏(37)が、作品の舞台裏を描く集中連載。第2回は、保守系言論人が主催する各種勉強会、いわゆる「私塾」の旨みを解説する(全3回の2回目/#1より続く)。

◆ ◆ ◆

「信徒囲い込みビジネス」こそ生活の中核

 ネット右翼に寄生される「保守系言論人」はどうやって生活をしているのか? 前回4パターンを紹介した。

(1)出版専業の保守系言論人として(地上波露出なし)
(2)信者を囲い込む(各種勉強会、私塾等を主宰)
(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける
(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る

 そして地上波テレビには滅多に出ない(出られない――ただしネット番組を除く)が、出版の世界の中では不況を救う救世主として大きな権勢を誇る(1)「出版専業の保守系言論人」の生活や収入について書いた。


靖国神社の前で旭日旗を掲げる政治団体の一員(※本文とは直接関係ありません)  ©️時事通信社

 前回、嫌韓本を20万部当てると推計で、その印税収入は約3,000万円としたが、正確に言えばここから翌年度以降、各種税金が差っ引かれるので、いかに原価がタダ同然だったとしても、3,000万円が丸々著者の手元に残るわけではない。

 よしんば、ほぼ全額が残ったとしても、3,000万円の財貨で5年、10年は安泰だとしても、50年は持つまい。そこでこういった保守系言論人は、出版という一発屋的な「水モノ」に頼らない、「恒常的な集金装置」を創り出すことに躍起となる。それが、各種勉強会、私塾と名を打った(2)エンクロージャー(信徒囲い込み)ビジネスである。実はこの商法こそ、保守系言論人にとって最も重要な生活の中核なのである。

「貴方だけの」「特別な」「真実の」で勧誘

 保守系言論人が主催する各種勉強会、私塾というのは、ちょっと前に流行った(――或いは今でも?)オンラインサロンの走りであると考えれば理解がしやすいであろう。勉強会に来たり、私塾の会員になれば「貴方だけに特別の情報を教えますよ。マスコミや学校では教えない、真実の歴史や社会や経済のことが分かりますよ」という点においてある種宗教的でもある。

 特定の保守系言論人に無批判に追従するネット右翼は、磁石に張り付く砂鉄のように、こういった「貴方だけの」「特別な」「真実の」を謳う会や私塾の勧誘に弱い。元来ネット右翼は虫食い状の歴史知識しか持っておらず、体系的なオピニオンを自ら生成することができない。よってどこかで誰かが言っていた言説をコピペする性質があるから、まさしくこの勉強会・私塾は寄生者にとって格好の「カンダタの糸」である。

「私塾」はどのくらいの収入になるのか?

 実際に保守系言論人のほとんどが、何らかの形でこの勉強会・私塾を運営しているのが現状である。その規模は数十名から数百名以上と幅広く、月会費も数千円から数万円など、中心価格帯を見出すのはなかなか至難の業であるが、多くの保守系言論人は、出版と併用して、自らの勉強会・私塾に会員を誘導するパターンが多い。

 現在では、とりわけネット動画(ネット番組)への出演を一種の出演広告として、自らの勉強会・私塾に間接誘導するのが定石となっている。こういった込み入った利権事情は、拙著『愛国商売』のなかにエンタメとして縷々出てくるのだが、こちらは小説であるから本稿では真面目な省察として考える。私塾の会費が3,000円/月で会員が50名という、比較的小規模・低料金の勉強会の月額収入を想定すると、

 3,000円×50人=150,000円

 である。月に15万円。額としては小ぶりに思うかもしれないが、年に換算すると180万円。けっして馬鹿にできる金額ではない。そもそも、40年間国民年金保険料を毎月律義に遅滞なく納めて、やっとこさ老後貰える国民年金の満額が月額約65,000円なのだから、15万円/月というのは安定した収入だと言えるだろう。

私塾には明確な目標がない

 またこれらの勉強会や私塾の運営費には、原価というものがほとんどかかっていない。オンラインサロンと同様、これらの会はネット上で会員入会から会費決済までを完結している場合が多く、かかるのはシステム運営費くらいのものである。

 ただし、主催者である保守系言論人との交流が必須となってくるから、都内交通至便地域などに貸会議室を都度借りる室料というのがしいて言えば原価となろう。

 また、学習塾や予備校と違って、保守系言論人の主催する私塾には明確な目標や目的が定まっていない。単なるネット右翼を相手としたファンサービスにすぎないからである。学習塾や予備校は、偏差値の向上、試験の結果、そして志望校の合否という、年限の定まった最終目標があるのでその消費者による査定はシビアにならざるを得ない。

「終身会員100万円より」

 私がリサーチしたところ、某保守系言論人の主催する勉強会は、一般会員年間12,000円(月額1,000円)、賛助会員年間5万円(月額約4,000円)というのがあって、まあ標準的な部類と思ったが、最後に「終身会員100万円より」と書いてあって思わずウーロン茶を吹き出してしまった。凄まじい商魂である。どこかの篤志家が1名入会するだけでただ100万円が降ってくるのだ。

 この終身会員の「終身」というのは、篤志家の寿命を言うのか。はたまた保守系言論人の寿命を指すのか。篤志家よりも早く主催者が死んだらどうなるのだろうか? 大した説明もなく「100万円より」と書くところが私にはすさまじいエセ商人の魂魄を感じる処である。

 そして当該勉強会はどうかわからないが、この手の勉強会や私塾では会費や追加費用をその場で現金にてやり取りするケースも多々見受けられる。その収入は税務申告されているのかどうか、私は知らない。

「中小企業経営者」というパトロン

 しかしまあ、適当に話して、アイドルでも何でもない右傾おじさんが、毎月ファンから15万とか20万とかが定期で入ってくるのだから、こんなに楽な商売はないとは思わないだろうか。

 それは私塾の参加者の主体であるネット右翼が、何を隠そう中産階級だからに他ならない。こういう私塾に参加する中年のおじさんには中小零細企業経営者が多い。さらにその中から、熱狂的に保守系言論人を思慕し、既定の会費を超えて、自分から積極的に寄進し、金銭的便宜を図ることを名乗り出てくるものがいる。先に述べた「(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける」だ。 

 中小零細企業経営者の中でも、社員が10名以上100名未満、という絶妙な規模であって、しかも自身は創業者ではなく、二代目、三代目、という経営者には、この手のエンクロージャー商法に嵌って、いわれもしないのにパトロン、スポンサーを買って出る人が少なくない。

 私の知っているこの手の経営者には、わざわざ自社のウェブサイト1ページ目に保守系言論人の講演会情報などを堂々と載せていたりする例がある。その保守系言論人の講演会情報が、自社の製品と少しでも関連があるモノや話題ならばまだしもわかるが、自社と全く関係がないどころか、ガソリンとトマトジュースぐらい異質なものを堂々と併記して憚らないこの経営者の経営感覚の無さというか、異常な塩梅を疑う。

 良く調べてみるとやはり、くだんの経営者は三代目で創業者ではなかった。創業者はきっと墓の下で泣いているだろう。

 誰か1人でもパトロンを見つけさえすれば、ひょっとしたら一生食っていけるかもしれない。出版は二の次で、保守系言論人がせっせと私塾の経営に奔走するのはこうしたうま味が無尽蔵に広がっているからだ。「愛国商売」とは本当に楽な稼業ときたものだ。実に羨ましい。

(#1を読む/#3に続く)

(古谷 経衡)

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