記事

日本の高齢者は20年前より10歳は若返っている

1/2

いまのお年寄りは、かつてのお年寄りより元気ではないだろうか。統計データ分析家の本川裕氏は「スポーツ省や厚労省のデータを分析すると、現在の75歳は20年前の65歳と同じレベルの体力がある。また物忘れの自覚症状を訴える人も激減している。全体として日本の高齢者は若返っている」という——。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JohnnyGreig

昔と今の高齢者の体力知力はどう変化したのか?

日本では、世界のどの国も経験したことのないような高齢化社会を迎え、経済を支える労働力の不足に対しては、これまでを大きく上回る女性・高齢者の社会進出に大きな期待がかけられている。

女性の社会進出をめぐっては、家事の夫婦分担の見直しや保育所の整備などが課題として大きく取り上げられているが、高齢者の社会進出にとってキーとなるのは高齢者の健康度である。そもそも体力が充実してなければ、各分野でこれまで以上の活躍を高齢者に期待することは無理だからだ。

高齢者はますます元気になっている。あるいは若返っているとも言われる。これは本当だろうか。

今回は、高齢者の体力や健康度はどの程度向上しているのかを統計データで検証してみることにする。最初にスポーツ庁によって全国で実施されている体力テストの結果を紹介し、次に、厚生労働省の健康調査の結果から、高齢者のからだの不調の様子をうかがうことにする。そして、最後に、高齢者間で元気な層と不元気な層とに両極化していないかも確認してみよう。

この20年間に高齢男性は5歳以上、高齢女性は10歳若返った

スポーツ庁(設置以前は本局の文部科学省)では、生徒・学生や65歳未満の成年層に加えて、65歳以上の高齢者層を対象に体力・運動能力を47都道府県で毎年継続的に調査している。ここでは、測定方法が変更されて新体力テストがはじまった1998年度から20年間の時系列変化をテストの合計点で追ったグラフを掲げた(図表1参照)。

65歳以上の高齢者対象のテストの内容は、握力、上体起こしなど6項目である。各項目の得点基準は各年齢で同じだが、男女では異なるので同じ年齢層であっても男女の体力を合計点で比較することはできない。しかし、それぞれの時系列比較は有効であるし、年齢間の比較も可能である。

5歳刻みの年齢層を比較すると、当然ながら、歳を重ねるごとに体力が落ちていく。しかし、時系列的には、男女ともに各年齢層で体力向上が目覚ましい点が目立っている。高齢者の体力や運動能力は明らかに向上しているのである。

高齢者の体力向上

図表から、1998年の「65~69歳」の点数(青線)が、20年後の2018年のどの年齢層の点数と同程度かを調べてみると(矢印のついた点線で表示)、男性の場合は、「70~74歳」と「75~79歳」の中間程度、女性の場合はほぼ「75~79歳」と同じ水準となっていることがわかる。「70~74歳」の点数についてもほぼ同様の傾向にある。

つまり、この20年間に、高齢男性は5歳以上、高齢女性は10歳程度、体力的に若返ったと見なすことができる。

何歳ぐらいになると加齢による心身の衰えが目立ってくるのか

何歳ぐらいになると加齢による心身の衰えが目立ってくるのだろうか。この点がはっきりわかる統計データを次に見てみよう。

厚生労働省が行っている国民生活基礎調査は、毎年の簡易調査の他に3年ごとに大規模調査が行われ、この際には毎年の世帯票、所得票に加えて健康票、介護票による調査が実施されている。

健康票では、体の具合の悪いところ(自覚症状)があればどんなところかを聞いており、大規模調査だけに、それぞれの症状について、男女年齢別に細かく集計されている。

年齢別の有訴率の変化

調査票の選択肢には、「熱がある」「眠れない」「肩こり」をはじめ42の症状が掲げられているが、齢を重ねると多くなると考えられる「腰痛」「目のかすみ」「もの忘れする」「耳がきこえない」について、「ここ数日それらの症状に悩んでいる」と回答した者(有訴者と呼ぶ)の割合を年齢別に図表2にあらわした。グラフには最新の2016年データを実線で示し、約10年前の2007年データを点線で示して対比させた。

いずれの症状の有訴者も加齢に伴って増えてくる点では共通であるが、「腰痛」と「目のかすみ」は比較的若い年齢からも増えてくるのに対して、「もの忘れする」と「耳がきこえない」は特に65歳以上になって急増する老人特有の症状であることがわかる。

「腰痛」は40歳代後半になると1割以上の人が悩むようになる国民病ともいうべきものである。進化論的には、人類は、脳の発達にむすびついた「二足歩行」と引き換えに、「腰痛」「内臓下垂」「難産」という三重苦を負ったといわれるが、確かにそうだろうと思わせるデータである。

「腰痛」と「目のかすみ」は老人特有ではないが、それでも60歳代から加齢に伴う上昇カーブの傾斜がきつくなることが図表から見て取れることから老人病的な側面もかなりあることが理解される。

あわせて読みたい

「高齢者」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    HDD転売事件が世界最悪級なワケ

    新倉茂彦 / ITmedia オルタナティブ・ブログ

  2. 2

    アンダーヘア脱毛 医師から賛否

    NEWSポストセブン

  3. 3

    貧困シングルマザー生む単独親権

    田中俊英

  4. 4

    前夜祭巡りホテルが5000円否定か

    田中龍作

  5. 5

    HDD流出 騙しで揺らぐ信用業務

    自由人

  6. 6

    オタク差別扇動? 社会学者に呆れ

    狐志庵

  7. 7

    できる人の当たり前 通じぬ人9割

    藤沢数希

  8. 8

    土井善晴語る 日本の食の問題点

    村上 隆則

  9. 9

    「人のせいにする」ことの大切さ

    紫原 明子

  10. 10

    歳費の返納 拒否議員が大量判明

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。