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官邸前デモで考える、誰もがジャーナリスト時代のメディアリテラシー

毎週金曜日に開かれている反原発の官邸前でのデモ(首都圏反原発連合による)。6月22日は1万人を超える参加者があったようで、テレビや新聞もデモの模様を取り上げています。FacebookやTwitterでの呼びかけ、会社帰りのサラリーマンなども気軽に立ち寄っているようです。(写真はJCEJ運営委員の赤倉さんから)

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ソーシャルメディア上では、マスメディアの取り上げ方や参加者数の違いが盛り上がっていました。

ウェブ版ですが朝日、毎日、読売、産経、東京の見出しと記事の人数を比べてみましょう。

  • 大飯再稼働撤回求める 官邸前で「4万人」抗議(朝日新聞)
    • 『主催者発表で約4万人、警視庁調べで約1万人が参加。プラカードや横断幕を手に、「再稼働決定は許せない」と参加者が次々に声を上げた』とあり、動画も同じページに掲載されています。
  • 大飯再稼働:撤回求め官邸前でデモ 列は700メートルに(毎日新聞)
    • 『主催者によると約4万5000人、警視庁によると約1万1000人が参加。周辺の歩道を埋め尽くした人が「再稼働反対」と、約2時間にわたって声を上げた』とあります。毎日は写真特集へのリンクもあります。
  • 原発再稼働反対 市民団体がデモ(読売新聞)
    • 『「ツイッター」や「フェイスブック」などを使った呼びかけで集まった若者ら約1万1000人(警視庁調べ)が「原発はいらない」などと書かれた横断幕を掲げ、首相官邸前の道路約500メートルにずらりと並んだ』
  • 反対派1万1千人、首相官邸前でデモ産經新聞
    • 『参加者約1万1千人が再稼働の反対と脱原発を訴えた。午後7時ごろ、首相官邸前を先頭とする参加者の列は、約500メートルに』に加え、『午後8時35分ごろには、近くにある東京メトロ丸ノ内線の国会議事堂前駅の男子トイレで、使用済みで焦げた発煙筒が見つかった。警視庁麹町署は威力業務妨害容疑などで捜査しており、デモとの関連も調べている』との記述もあります。
  • 首相官邸前 再稼働反対デモ(東京新聞)
    • 『この日は、官邸から霞が関方向へ約五百メートルにわたり、人の波が歩道から車道にあふれ、主催者発表で約四万五千人が加わった』

朝日、毎日が、主催者と警察発表併記。東京が主催者のみ。読売と産経が警察発表です。列の長さは、朝日と毎日が700メートル、読売と産経、東京が500メートルです。

22日のデモに関しては「メディアが取り上げていない」は間違いであることが分かります。取り上げているが、扱いも中身も違うということになります。ちょっと調べれば分かるはずです。デモ推進の人からすれば「扱いが小さい(こんなものは取り上げているうちに入らない)」ということかもしれませんが…

次に、参加者の人数について。

主催者側が数字を「盛る」ことはデモや集会などの社会運動で古くから行われています。記者時代に労組の集会に取材にいくと、自分で数えた数字と発表が10倍ぐらい盛ってて驚く時もあったほどです。人出は、面積(歩道の広さや列の長さ)×密度で計算できます。ちょっとでも参加した人も含めれば、延べ人数は相当になりそうですが、官邸周辺の道路で4.5万人というはさすがに多すぎる気がします。

デモに関して、Twitterで朝日新聞モスクワ支局の関根記者 @usausa_sekine: や毎日新聞の石戸記者@satoruishido:とTwitter上でやり取りしましたが、デモは多くの場合、現在の体制に反対するものです。反原発や再稼働反対は、野田政権の方向性とは異なります。警察は治安を維持する組織ですから、小さく見積もるのが「お仕事だ」と言えるでしょう。むしろ、警察が1万を超える数字を発表したのはインパクトがあるなあと感じたほどです。

これまで同じようにデモをしていてもマスメディアに取り上げられなかったのが、記事になったのは、この数字の大きさによるところもあります。主催者側は「いいことをやっている」「たくさんの人が来ているのに」と言うのですが、正義は多様ですし、前述したように運動団体は「盛る」傾向があるため、記者も警戒しています。目に見えて数字が大きくなってくると、ニュースバリューも上がります。

運動団体やネットの一部にもありますが、「マスメディアは偏向している。信じられない」と言いながら、「取材せよ」とか記事が掲載されると紹介したり、というのは一貫性に欠けます。多様な意見を認めるということは、どんなに大規模になっても報じないメディアがあっていいということではないでしょうか。そう、テレビ東京のように…

また、今回のデモでは、ソーシャルメディアを使って現場から発信も行われています。「すごい人」「数万人はいる」など写真や動画とともに書き込みがあり、さらにソーシャルメディアで拡散していくわけですが、これもどこかの一瞬を切り取ったに過ぎません。

官邸前の密集地帯にいれば「人がギューギュー」になるでしょうし、デモの後部であれば「まばら」になるでしょう。よく、マスメディアが一部を切り取っている、と批判されるのですが、デモの参加者が密集地帯だけを切り取る事も可能です。その時に反対側の道路はガラガラだったりするかもしれません。発信する時は、マスメディアも含めて、どこか一部を切り取ったに過ぎないという意識も大切です。

ソーシャルメディア時代になって、素晴らしいのは、マスメディア以外に、人々が発信してくれるので多様な切り口が見えることです。「タクシーで1周しながら撮った首相官邸周辺デモの状況(2012.6.22 19:00-19:10)」という動画は、デモが行われている官邸周辺をタクシーに乗って一週して、立体的に現場の状況を浮かび上がらせてくれます。

この動画からは、マスメディアの報道や写真は、より分かりやすく、印象的なものになりがちです。デモの場合は、プラカードを持った人や、過激な言動をしているといった、いかにも「デモ参加者」っぽいところから取材するわけですが、この動画を見ると、スーツ姿のおじさんやカジュアルな服装の若者などが、参加していることが分かります。

この記事で紹介した、写真、動画、そしてTwitterやFacebookに書き込まれたデモの状況は、一人一人がジャーナリストであることの証です。マスメディアの報道が自分が見た、思った現場と違うことを責めるのではなく、自分の目や耳、マスメディアの報道や人々の情報という断片(繰り返しますが、現場にいて見て、聞いたとしても、断片的なものでしかない)を組み立てて、判断する事が大切です。物事は多面的です。マスメディアの数字が違うとか、偏向しているという人は、そんなに同じにしたいのでしょうか。どのメディアも同じ数字で、同じ内容、同じ考え、という国はとても息苦しいと思うんですが…

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