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古巣への愛があってこそ?企業を巻き込み炎上する「退職エントリ」、あなたは許容できる?


 近年、しばしばネット上で話題を呼ぶ「退職エントリ」。中には「ぶっちゃけていってしまえば、ニコニコがもうダメだから」「NTTの社内システムは非常に使いづらい」「ホンダは私の愛したホンダではない」など、一流企業の名前を堂々と晒し、不平不満を綴っているものも少なくない。

 書く側のメリットとしては「これまでの反省と目標を整理」「前職で悩んだことを書いてストレス発散」「転職先が見つかることも(技術職ならでは?)」が挙げられるようで、読む側の若者たちからも「日本には表現の自由があるから別にいいのでは。会社がちゃんとしていれば書かれないと思うし。全然あり」(20代、女性)、「入る前に会社のことがわかるので、退職率も下がると思う。めっちゃいいと思う」(10代、男性)との声が聞かれた。

 終身雇用が当たり前、愛社精神が強かったかつての日本の企業社会。しかし転職は当たり前、組織に属さないフリーの誕生やワークライフバランスが重要視されるようになった時代、とくにIT企業では「賛」の方が多いようだ。


 4年半務めた大手IT企業を辞め、今年5月に退職エントリを書いたのが、エンジニアの健さん(50)だ。「ネタ半分。楽しそうだったねというのが伝わればいいかなというくらいの軽い気持ちで」と書いた、1万字に及ぶ退職エントリを見てみると、「民度低めの人が多かった。承認欲求無駄に強め、他人の妬みや悪口が好物。根本原因を解決せずに、誰誰さんのせい、みたいな嘘やごまかしも発生」と、古巣に対する厳しい表現が並ぶ。


 しかし健さんは会社に深い恨みはなく、退職エントリはIT業界発の文化、とくにエンジニアのような技術職の人にとっては普通のことだと説明。「引っ越したとか、結婚したとか、そういう報告をなるべく手抜きしてやるというのが退職エントリ。自分の元いた会社への“最後のラブレター”みたいな形で割と楽しかった。過去資料引っ張り出してみたり。むしろ褒めているのではないかなと」。後に会長と対面した際には「“すみません、変なの書いて”」と声をかけたのだという。「ちょっとドキドキはしたけど、会長は“別に嘘書いてないし、いいんじゃないの。楽しかったよ、読んだけど”って言われて“あ、すみません”みたいな」と明かした。

 この退職エントリがきっかけで、転職の誘いも受けたという健さん。「転職エントリ」という文化への批判に対しては、「“嘘を書かない”は絶対。名誉棄損になるとよろしくない。悪口とか、炎上とかが大好きな人が増えたので、退職エントリは炎上するのではないか、と色々な人が見に来るようになった。そういう社会が悪いのではないか」と指摘した。


 一方、「ライトコード」は、批判も込みの「退職エントリ」を会社の公式ブログ上に書いてもらっているユニークな取り組みを行ってきたIT企業だ。中には「私の3年間は代表取締役社長である金城直樹氏との戦いの歴史だった。それはそれは“面倒だな”と思える存在だった」といった社長disも。


 しかし当の金城社長は、この退職エントリのプラスの効果を強調する。「懐の広い会社なんだなということを知ってもらいたかったというのはある。綺麗事を書いていた方が新入社員は入って来ると思うが、そこで入った後に“こんなはずではなかった”と言って辞められるよりは、それをわかった上で入ってくれて、一緒に頑張ってくれる人の方がいい」。


 一方、「退職エントリ」を書く側には「本人特定され晒される可能性」「周りから批判される」「会社に訴えられるリスク」も否定できない。「普通にコンプライアンス違反だなと思って。守秘義務を守らなければいけない。人にも迷惑を掛けるし」(30代、女性)、「正直、辞める人間がつべこべ言えることではないかな。働いている人たちの気持ちを考えた時に何とも言えないかな」(20代、男性)と冷静な意見もある。

 弁護士の深澤諭史氏によると、過去には転職サイトへの書き込みをめぐる訴訟があるが、「内容が本当でも嘘でも会社への名誉棄損で訴えられるリスクがあるが、現状では裁判例はほとんどない」という。また、守秘義務や秘密保持契約違反の観点から「適用の範囲は取引先情報、技術的情報、ノウハウなどの情報を公開すると、企業から損害賠償請求される可能性がある」とのことだ。


 こうした風潮に対して、「立つ鳥は濁していきたくない」と主張するのが、ライター兼イラストレーターの山田ゴメス氏だ。

 「健さんのエントリを読むと達者な文章で、8割は会社を褒めている。残りの2割だけ嫌味というか、チクリという感じだ。逆に言えば、健さんくらいの筆力がない人に退職エントリを書く権利はないと思う。そうでない人が勢いに任せて悪口ばかり書くのは、見ていて気持ち良くない。実際、過激なことを書く人の方が多く、僕の美学に反するという考えは変わらない。言ってみれば、一度好きになった女の人を振って、その人の悪口を書いているようなものだ。やはり今も働いている人たちに対する感謝の念を持つことが必要だし、他人に見せても大丈夫なレベルでの“自己分析”をし直して書くべきだ」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:スタジオでの議論の模様

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