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「1+1」で「2」になるか?

昨日から世の中を賑わせている「一大経営統合」のニュース。

検索サービス「ヤフー」を展開するZホールディングス(HD)とLINEが経営統合に向けて最終調整に入った。LINEの対話アプリの利用者は約8千万人で、ヤフーのサービスは5千万人に上る。
金融や小売りといった幅広いサービスを手がける1億人規模のデジタル基盤が誕生し、国内インターネット産業の勢力図が大きく変わる。アジアを舞台に米国や中国のメガプラットフォーマーに対抗する。」
(日本経済新聞2019年11月14日付朝刊・第1面、強調筆者、以下同じ。)

ヤフー(というかZホールディングス)にとっては、ちょうどZOZOの公開買い付けが終わったタイミングで、今度は自身の株主構成が変わる、という微妙な話になったわけだが、14日付のプレスリリースでは、「現時点で決定した事実はありません」としつつも、協議を行っている事実自体は否定せず*1

一方のLINE側でも、検討を進めている事実自体は否定せず*2、さらにこの動きを報じた日経紙が、極めてポジティブにことを煽ったこともあって、14日の両社の株価はとてつもなく跳ね上がり、一方、楽天をはじめとする他の競合企業の株価は下がる、という実に分かりやすい展開となった。

記事にもあるとおり、確かにヤフーのポータルサイトのユーザーとLINEアプリのユーザーを単純に合算すれば、「1億人」を優に超えることになるだろうし、売上高を単純に合算すれば1兆円を超えて楽天を抜く。

だからこそ、まだ何も決まっていないのに、先走って独禁法の企業結合規制を気にするような記事も出てくる*3

だが、そういった話がなかったとしても、ことがそう簡単に運ぶだろうか?、そして、仮にこの話が実現したとしても、日経紙の記事で描かれているような「統合効果」が発揮されるだろうか?と、自分は素朴な疑問を抱いている。


日経紙に限らず、多くのメディアでは、ヤフーもLINEも「インターネット産業」と一括りにしてしまっているが、かたや”創世記”からインターネットの歴史と共に歩み、ポータルサイトから小売、トラベルまで幅広く事業を営んできた「日本の老舗」ヤフーと、普及し始めてからまだ日が浅くしかも事実上対話アプリ一本足打法でここまで来たLINEとでは、事業構造が全く異なる。

加えて、両社に外から接したことのある者としては、かたや経団連加盟企業、かたや新経連加盟企業、という点に象徴されるように、両者の社風も決して親和的なものではないと思っている*4

「合併」ではなく、あくまでZホールディングスの下に併存してぶら下げる、という形で進めるのだとしても、そんな両者を同一の企業集団の中に組み込んで果たしてPMIがうまく回るのかどうか、外野の人間以上に、今、中にいる人々が気にしていることは多いのではないだろうか?

また、そういったものを乗り越えて構想が実現したとしても、単純な合算で統合効果を発揮できるかどうか? という点には疑問符が付く。

なぜなら、両社の有償サービスを利用している顧客層はかなりの部分重複しているように思えるからで、頑張って「1+1」を実現したとしても、そのアウトプットを「1」以上の値にするためには、相当いろいろな仕掛けをしなければいけなくなる。

いろいろと注目が集まっているQRコード決済にしても、「ペイペイ」と「LINEペイ」をいずれも存続させたのでは経営統合の意味がなくなるし、一方で、ブランドを一つに集約してしまった時点で”目減り”する部分はたぶんにある。

おそらく、今回の経営統合の背景には、Zホールディングスの大株主の”総帥”の意向もかなり強く働いているように思われるから、「それでもなお突き進む」という道を進んでいく可能性は高いのだけど、当の”総帥”の最近の戦略には一時期の冴えが見られないこともあって、それがより焦りを生んでこういう話が出てきた可能性もあること、そして、それが結果的に、経営判断としては必ずしも合理的ではない方向に舵を切ることにつながる可能性も念頭に置かねばなるまい。

・・・ということで、眺めれば眺めるほど、そんな単純な話じゃないだろう、と思ってしまう一連の報道。

長年日本のインターネット産業を支えてきたヤフーが他国資本の元にあるLINEを「呑み込む」形で決着するならそれはそれでよいのかもしれないけど、追いかけるのが単純な「規模」だけなのだとしたら、それは決して良い結果にはつながらないと思うだけに、ここからの関係者の「知恵」に注目したいところである。

*1:一部報道について(Zホールディングス株式会社) - プレスルーム - ヤフー株式会社

*2:LINE[3938]:当社に関する一部報道について 2019年11月14日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞

*3:ヤフー、LINE統合に立ちはだかる独禁法の壁:日経ビジネス電子版

*4:ヤフーのアドミ部門の堅固さは他の伝統的日本企業と比べても遜色ないが、LINEの方はいい意味でも悪い意味でもベンチャー気質が未だに色濃く残っている、というのが自分の印象である。

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