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もうこれ以上、社会保障費の負担を後代にツケまわしできない -「賢人論。」第104回(後編)香取照幸氏

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日本の介護保険制度の導入に大きな役割を果たした香取照幸氏だが、「将来世代にツケを回して成り立っている日本の社会保障制度は、危機に瀕している」と警鐘を鳴らす。「社会保障と税の一体改革」は、消費税率の引き上げという国民に負担増を求める改革だが、日本の社会保障の持続可能性を維持するためには必要不可欠な改革だった。2010年から内閣官房の担当審議官としてこの改革を支えた香取氏の目に、今の日本社会はどのように写っているのだろうか?

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

国の借金はGDPの2倍。これは非常事態である

みんなの介護 赤字国債による国の借金は、現在1,100兆円。GDPの2倍以上の規模になっていますが、これまでにない危機的な状況と言えそうですね。

香取 日本の債務がGDPの2倍を超えたことは、実は今が初めてではありません。いつがそうだったかというと、日本が戦争に負けて焼け野原になったときです。

旧大蔵省(現・財務省)が編纂した『昭和財政史』という本を読むと、大蔵省が戦時中から日本の債務をどのように返済し、日本を復興させるかを懸命に考えていたことがわかります。

そこで彼らがとった手段が、財産税法です。10万円以上(現在価格で約5,000万円以上)の財産を保有する個人に最高税率90%(資産1,500万円超)を課税したのです。

1948年に発表された財産税の納税番付のトップは天皇家です。その納税額は37億4,300万円におよび、残りの皇室財産は国有財産になりました。

そのほかにも財閥解体、華族制度の廃止、農地解放、預金封鎖、デノミ敢行、新円発行、ドッジ税制などなど、できることはすべてやって、ようやく危機を乗りきったのです。連合国の占領下だからできたことには違いありませんが、これはもう革命に近い出来事ですよ。

みんなの介護 今の国の借金を返すには、敗戦時と同じ革命を起こさねばならないわけですね。何だか空恐ろしい感じがします。

香取 今の借金は、橋を架けるとか、鉄道を敷くとか、港湾を整えるといった、将来世代の成長につながるようなインフラ整備とは訳が違います。

人口が減少し、社会が高齢化した結果として社会保障関係費が膨らみ、税収で払いきれなくなった分を借金しているわけですから、将来世代の成長を先食いしているのと同じことになります。

負担のない「社会保障」はあり得ない

みんなの介護 「社会保障と税の一体改革」は、まさに今の日本に必要不可欠な改革だと言えますね。

香取 この改革によって消費税率は5%から8%になり、そして予定より4年遅れで10%になりました。

計5%の増収分のうちの4%は、「社会保障の安定化」のために使います。これは、後代への負担のツケまわしを軽減するためのお金です。

「社会保障の充実」のために使うのは、残りの1%です。ですから、「負担が重くなるんだから、サービスに対する給付を多くしろ」というのはお門違いです。これ以上借金を増やさず、せめて自分たちが受ける分のサービスくらいは自分たちの負担でまかなう努力をする、くらいのことしかできないからです。

多くの人は、給付はして欲しいけど負担はしたくないと考えます。だから改革は、なかなか進まない。だけど、負担のない給付はないんです。実際のところ、今の社会保障費をすべて消費税でまかなおうとしたら、税率10%どころか、欧米なみの20%にしなければならないですよ。

みんなの介護 ともあれ、この改革によって消費税の使い途が高齢者3経費(基礎年金、老人医療、介護)から「子ども・子育て支援」が加えられて4経費になったことは大きな変化ですよね。

香取 戦後間もなくのころに創設された日本の社会保障制度が貧弱なものだったことは、前編のインタビューでもお話ししましたよね。それが高度経済成長期、団塊の世代を中心とする大量のサラリーマンが働くことで充実したものになっていった。

当時のサラリーマン家庭の多くは専業主婦でしたから、子育て支援は地域の中で解決することができた。それから、サラリーマンを雇っている企業の保障も手厚かったから労働政策はそれほどやらずに済んできたのです。

ところが、雇用が不安定になって社会の不確実性が高くなった今、「子ども・子育て支援」は喫緊の課題になりました。ですから、これからは現役世代の支援を含めた「全世代型社会保障」でやっていくということです。

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