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【読書感想】TikTok 最強のSNSは中国から生まれる

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 TikiTokの大きな武器として、著者は「協力なレコメンド機能」を挙げています。

 TikTokというアプリの最大の特徴の1つは、ユーザーが「自分で動画を探さなくてよい」ことにあります。バイトダンス社が誇る強力な機械学習の技術が、視聴者ごとに最適化された動画をお薦め(レコメンド)してくれるのです。そしてユーザーがTikTokを使えば使うほど、その精度は高くなります。

 加えてTikTokは、「画面をスワイプするとすぐに次の動画あり、動画終了後には自動リピート」と、ユーザーに次々と動画をみせる連続性にも長けています。

 動画メディアにとって、この「ユーザーが連続して視聴してくれるか否か?」はとても重要な指標です。

 ほかのサービスでも、たとえばNetflixのユーザーであれば、この「連続視聴」を強く意識した仕様の強力さを体感しているはずです。たとえば連続ドラマのコンテンツであれば、1話をみおわるとシームレスに、絶妙に計算された間でストレスなく次の話に移っていきます。Netflixをみはじめると、ついつい「あともう1話だけ……」を繰り返してしまう、という人も多いのではないでしょうか。

 一方で、YouTubeはまだまだユーザーに連続視聴をさせる設計が弱いと感じます。たとえばYouTubeで動画をみていると、途中でまったく関係ないCMが挟み込まれることがあります。この中断は、視聴者の連続性を損なってしまう仕様です。それに対してTikTokの場合、CM動画すらも完全にコンテンツに溶け込んでいるため、視聴体験が中断される感覚がほぼありません。それによって、ユーザーが圧倒的にハマってしまう中毒性が生まれているのです。

 YouTubeは、「ここで広告か……」と興ざめしてしまうことが多いですよね。配信側とすれば、「いいところ」にCMを挟んだほうが、視てもらえる確率が高くはなるのでしょうが、それは「視聴者の反感」と背中合わせです。

 ただし、TikTokに関しても、今後、さらに広告で稼ごうとするのであれば、「お金になりやすい動画」ばかりになってしまう、という可能性はありそうです。

 また、TikTokでは、クリエイター(配信側)のモチベーションを保つための工夫もなされているのです。

 TikTokのレコメンドのシステムは、視聴者だけでなくクリエイターにとっても重要な意味を持ちます。

 TikTokのレコメンドのシステムは、「クリエイターのフォロワー数に限らず、優良なコンテンツを評価し、適切なユーザーに届ける」という理念のもとで設計されています。よって、たとえ駆け出しのクリエイターが投稿したコンテンツであっても、平等に一定量の初期アクセスが付与されます。そこから、コンテンツのいいね数、シェア数、視聴完了率、コメント率など、アクセスを配布した先のユーザーからの評価を見て、良ければさらに大きなアクセスを渡す……といった仕組みになっているのです。

 したがって、フォロワーがまったくいない新参者のクリエイターでも、良質で面白いコンテンツを作れば、一発目で評価されて膨大なアクセスを獲得する可能性もあります。一方で、フォロワー数百万人のようなビッグアカウントのインフルエンサーでも、手を抜いた面白くないコンテンツを上げれば、広く拡散されることはないのです。

 この仕組みは、フォロワー数絶対主義の他SNS(Twitter、Instagram、YouTube)とは一線を画しています。

 女子高生たちのダンスやリップシンクなどの「アイデア」は、ブームとして遠からず過ぎ去っていくでしょう。しかし、こうしたTikTokの裏側にあるバイトダンス社の圧倒的な技術力は、一朝一夕に真似できるものではないのです。

 バイトダンス社は、もともとニュースアプリで、機械学習の最適化に注力してきた会社なのだそうです。

 そのアプリの開発で、ユーザーへのレコメンド機能を追求してきたことが、TikTokで活かされているのです。

 バイトダンス社は、動画配信サービスの会社というより、機械学習によって、そのユーザーが求めるものを選択し、届ける企業なのです。

 ブログを書いたり、Twitterで発言したりしていると、新規参入の難しさというか、「いまさら新しい人が何かを発信しても、見てもらう選択肢に入れてもらえない」という現実に直面するわけです。

 既得権益者、すでにフレンド数やフォロワー数が多い人が、圧倒的に有利になっている。

 ところが、TikiTokは、機械学習によって、これを改善し、新規参入者のモチベーションを上げることに成功しているのです。

 テキスト文化から、通信インフラの改善にともない、動画がメインになっていくことは、避けられない。

 そのなかで、TikTokは、機械学習という、ユーザーが意識していないところでの差別化で、優位に立とうとしています。

 正直、「あなたが見たいのは、これなんでしょ?」と、次から次に目の前に出されるのが、観客として幸せなのだろうか、という疑問はあるのです。

 生まれてから死ぬまで、「あなたへのレコメンド」に従って生きるのが正解、なんて時代は、想像すると怖い。

 とはいえ、そのほうがラクなんだろうな、とも思うし、経済的にもデジタルコンテンツでも豊かになった中国の人たちは、格差を嘆きつつも、けっこう幸せそうにも見えるのです。

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