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3組の夫婦のうち1組が離婚はウソ? データで見る離婚のリアル

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「独身のままでいればよかった」「結婚前はこんなつもりじゃなかった」――。

結婚したことがある人ならば、一度は離婚について考えたこともあるのではないでしょうか。

日本国内の離婚件数は昨年で20万7000件(厚生労働省・人口動態統計)に上りました。その背景には、性格の不一致や経済状況、はたまた不倫など、様々な理由がありますが、離婚理由は非常にプライベートなこととされ、あまり公で語られることはありません。

ある種、闇に包まれている離婚の実態ですが、「データの観点」から見たとき、どのような傾向が浮かび上がってくるのでしょうか?

『「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』の著者、東京大学経済学部の山口慎太郎准教授に話を聞きました。

BLOGOS編集部

離婚が3組に1組というのは正しい数字ではない?

「夫婦の3組に1組は離婚する」ということはかなり一般的な常識になりつつあります。しかし、実はこの数字は実態よりも大きな数字になっています。

現在、離婚率は、便宜的にその年に起こった離婚数を、同じ年の結婚数で割って数字を出しています。この場合、ある問題が残ります。

それは、少子高齢化や人口減少でそもそもの結婚数が年々少なくなっているという点です。つまり、分母の数字が小さくなっていくことで、あたかも離婚率が高く見えてしまう可能性があるのです。

そのことを裏付けるデータとして、結婚している人1000人あたりの離婚率の推移は、1990年代から2000年代にかけ低下したものの、この20年間の変化で捉えるとその増加は1ポイントほどと横ばいで変わっていません。

離婚の経済学より

3組に1組が離婚というのはショッキングな数字であり、わかりやすいものではあるのですが、こうした数字と比べてみると、一人歩きしてしまっている印象を持っています。

背景に、メディアで取り上げられる機会が多くなり『離婚』という言葉を耳にする機会が増えたという心理的な要因が関係しているのかもしれません。

また、海外と比べて離婚するカップルが少ないというイメージがありますが、これも一概にそうとは言えません。

人口1000人あたりの離婚件数を国際比較したデータがあります。この統計によると、離婚が多い国のトップはロシアで、4.7件と日本の3倍弱。続いてアメリカの3.2件が続きます。

離婚の経済学より

日本人の1000人あたりの離婚件数は1.7件とOECD29カ国の平均1.9件を少し下回る程度。イギリスや中国、イスラエルがほぼ日本と同じ水準です。チリやアイルランドといった国では非常に件数が低くなっていますが、キリスト教などが離婚を認めてこなかったという経緯が影響しています。

離婚しやすくなった社会に何が起きたのか

先ほどお伝えした通り、ヨーロッパでは宗教上の理由などから、離婚に対するハードルが極めて高い地域もありましたが、1970年代に離婚法改革がされてからは離婚の法的用件がどんどん緩められていきました。

具体的には、これまで離婚のために「相手に非があること」を証明しなければいけませんでしたが、別居期間など結婚生活が実質的に破綻していれば離婚は認められるようになりました。同様のことはアメリカでも起こるようになり、欧米ではより簡単に離婚しやすくなりました。

写真AC

日本は、両者の合意がある「協議離婚」の場合は届出だけで済み、裁判所を介した手続きは不要という簡単な側面があるなど、制度の違いから一概に諸外国と比較することはできないかもしれませんが、アメリカやヨーロッパでこの離婚法改革によって何が起きたのかをデータでご紹介しましょう。

まず、変化のひとつ目としては、DV(家庭内暴力)が減ったことがわかりました。

アメリカの研究では、ある年に夫が妻に暴力をふるった割合が3.4%から2.3%と1.1ポイント減りました。また、逆に妻が夫に暴力をふるった割合も4.6%から1.7%へと、2.9ポイント減少しました。スペインでは法的に結婚している夫から妻への暴力が30%も減少したという研究結果が明らかになりました。

やはり相手が逃げないとわかっているから、強気に出ることができ、暴力をふるいやすくなります。

アメリカの場合で言えば、暴力をふるわれ追い込まれたとき、身を守るために銃を使用してしまうかもしれません。そういった極端な葛藤を避けることができるようになったのではないかと思います。

また、このアメリカの研究では、相手の暴力から逃れるためのひとつの手段「自殺」が大幅に減少したという結果が出ました。離婚法改革後の20年間で10%以上も自殺率が下がったのです。

さらに、こうした暴力や自殺の抑止だけではなく、社会進出でもプラスの要素をもたらしました。それは、女性の就業が増えたということです。

「離婚できる世の中になったところで、自分ひとりで稼げないんだったら食べていけないし、仕方がない」と思っていた女性が、離婚を諦めないために働きに出た。その結果、「食べていくために我慢して相手の言うこと聞く必要なんてないんだ」という意識は、離婚のハードルを下げることにつながっていきました。

「親権は母親」昔は当たり前ではなかった

では、離婚後の家族の形についての変化もデータで見ていきましょう。

日本で離婚する際、合意に至らず裁判になるケースで多いのが「子どもの親権をどちらが持つか」ということだと思います。

離婚が成立した場合、現状では母親が親権を持つケースが約9割近くに上っています。これは、「母性優先の原則」と呼ばれ、子どもの発達には母親の存在が不可欠であるとする考え方です。

写真AC

しかし、実はこの制度は決して日本古来の考え方ではなく、過去には父親が親権を持つケースが多い時期もあったのです。

『「家族の幸せ」の経済学』より

厚生労働省が発表しているデータでは、1950年から約10年間は、父親が親権を持つ割合が母親よりも多かったのです。そのあと60年を過ぎたあたりから裁判所が母性を尊重するようになり、60年代半ばにその割合は逆転。女性が親権を持つ割合がどんどん増えていきました。

なぜ裁判所にそのような判断の変化が起きたのかということは調べてもはっきりとはわからなかったのですが、母親が有利という傾向は、戦後の数十年間で徐々に一般的なものとなっていったといえるでしょう。

近年では「イクメン」として父親の育児参加が進んだこともあり、父親が親権を希望するケースが増えてきています。父母の両方が親権を持つ「共同親権」の議論も進んでおり、時代の変化によって、またこの割合も変わっていくかもしれません。

Getty Images

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