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【大赤字ソフトバンク】Uber、Pepper、WeWork……孫社長はなぜ「ハズレ」を引くのか? - 石川 温

「ボロボロでございます。真っ赤っかの大赤字」

 11月6日に行われたソフトバンクグループの2019年7~9月期連結決算会見。最終損益が7001億円の赤字に転落した。孫正義社長は開口一番、冒頭の言葉で反省の弁を述べた。さらに「3カ月でこれだけの赤字を出したのは創業以来のこと。累計でも上期の利益を全部吹っ飛ばしてしまった」と、今回の赤字が同社にとって最大の危機であることを明かした。

2019年9月中間連結決算を発表する、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長 ©共同通信社

 赤字の要因は、投資先のオフィスシェア企業「WeWork」の経営悪化だ。ソフトバンクグループは、WeWorkに1兆円近い投資を行おうとしている。

 ここ最近、孫社長は「AI群戦略」と銘打って、AIのテクノロジーで成功しようとしている企業にしか出資しないというスタンスを持っていたはずだった。

 しかし、単なるオフィスシェア企業であるWeWorkが「AI群戦略」の中核に入っていたため、アナリストやメディアから「なんで、シェアオフィスがAIなのか」「孫社長はWeWorkを高く評価し過ぎている。投資額が異常だ」と総ツッコミを受けていた。

 ソフトバンクグループや、投資しているソフトバンク・ビジョン・ファンドのなかでも「シェアオフィスはAIなのか」と孫社長に冷静に注意できる人はいなかっただろう。

 孫社長自身、WeWorkの創業者による不祥事によって経営悪化に陥ったことについて、「私自身の投資判断がまずかった。大いに反省している。WeWork創業者のいい部分の価値を多く見すぎてしまったかもしれない。マイナス部分がたくさんあったが目をつぶってしまった」と投資判断が鈍っていたと反省していた。

なぜ“千里眼”は狂ったのか?

 ただ、孫社長の「判断ミス」はWeWorkに限った話ではない。ここ数年の孫社長が熱を上げて、のめり込んでいる投資に限って「ハズレ」を引いている感がある。孫社長の千里眼がことごとくボヤけているのだ。

 例えば2016年の株主総会でのこと。孫社長は、2014年に米Uberに出資できるチャンスがあったにもかかわらず、手を出さなかったことを後悔していると打ち明けた。

 Uberは2012年には、アメリカでクルマで移動するには画期的なサービスとして定着していた。高額なタクシーではなく、気軽に一般ユーザーの自家用車をタクシーのようにスマホで見つけられるとあって、そのビジネスモデルは瞬く間に世界中に広がった。しかし、孫社長は出資を見送るという失態を犯したのだ。

 その後、孫社長はこの分野に出資しなかったことを反省したのか、相次いでインドや東南アジアで同様のサービスを提供する会社に出資しはじめる。

 Uberについても諦めていなかった。ソフトバンクは2017年から2018年にかけて、満を持してUberの1兆円規模の株式を取得する。しかし、現在は大幅赤字を計上中で、株価は上場時がピークで現在は公開価格を下回っている。孫社長が2014年の段階でUberに出資できていれば、状況は全く異なり、大儲けしていたはずだ。

 このUberへの投資についての後悔から「出資のタイミングを逃がしたくない」という焦りが生まれ、結果として、WeWorkの大失敗に繋がったともいえる。

あまりに無能だったあのロボット

 孫社長の「判断を見誤った」という点においては、アメリカへの進出も同様だ。

 日本での携帯電話事業を軌道に乗せた孫社長は2013年に「これからはアメリカ市場だ」と声高らかに宣言。当時アメリカ市場で第3位だった携帯電話会社のスプリントを約2兆円で買収した。当初の目論見としては、第4位(当時)のTモバイルUSも買収して、スプリントと合併させて、上位2社と戦おうとしていた。しかし、米連邦通信委員会(FCC)の反対にあって計画は頓挫した。

 当時ソフトバンクでは、日本から社員を大量に現地に赴任させ、日本で成功したビジネスモデルをスプリントに注入しようとした。しかし、いきなり押しかけてきた日本人をスプリントの社員が相手にするはずもなく、早々に日本から赴任した社員は撤退を余儀なくされていた。

 その後、何度かTモバイルUSとの合併話を進めるが、そのたびにFCCからの反対で断念。一時は、スプリントの再建に注力するものの、まもなく5Gが始まるとなればさらなる設備投資が必要になるとして、再度、TモバイルUSとの合併を模索した。

 その結果、所有する電波や顧客を別の会社に売却し、4社目の携帯電話会社が参入しやすい条件をつくることに合意したことで、ようやく昨年になってTモバイルUSとの合併が認められた。これによって、晴れて、ソフトバンクグループは、スプリントを連結対象から外すことができ、アメリカ市場から撤退となったのだ。

 結局、スプリントはソフトバンクグループにとっての「金食い虫」でしかなかった。

 買収案件だけでなく、孫社長が自ら本腰を入れて仕掛けた「ロボティクス事業」も、本当に先見性があったのか疑問符がつく。ソフトバンクのロボティクス事業といえば代表格は「Pepper」だ。

 発表された2014年当時は「感情を持つロボット」として、驚きを持って迎えられたが、製品化されてみると、まともに会話も成立しないポンコツぶりに失望の声が相次いだ。筆者も大枚をはたいて、Pepperを購入して自宅に設置したが、あまりの無能ぶりに、数カ月後には「白い塊」としてリビングの端っこに放置してしまった。

 ソフトバンクロボティクスというロボット専門会社は、いまはPepperよりも業務用お掃除ロボットの販売に注力。孫社長もPepperのペの字も言わなくなってしまい、ロボティクス事業にもすっかり飽きてしまったようだ。

惚れ込んだ“恋人”も放逐

 孫社長の判断ミスで、もう一つ忘れてはいけないのが後継者選びだ。

 ワンマン企業だけに、早くから後継者問題を意識していた孫社長。2010年には、後継者を養成する社内組織「ソフトバンクアカデミア」を設立し、多くの社内外の若き事業家たちが孫社長の後継者を目指していたが、孫社長のお眼鏡に適う人物は一人も現れなかった。

 そこで、孫社長は2014年、元グーグルのシニア・バイスプレジデントだったニケシュ・アローラ氏を引き抜き、「私の後継者候補であることは間違いない」と明言した。

 しかし、わずか1年でニケシュ氏がソフトバンクを去ることになる。2016年の株主総会で、孫社長は「(私の)60歳の誕生パーティで、ニケシュに社長の座を譲ろうと大々的に発表するつもりだったが、60歳を目前にして、社長をまだまだ続けたいと思った。その気持ちを伝え、ニケシュに辞めてもらうことになった」と語った。

 当時、副社長であったニケシュ氏は、ソフトバンクが保有していたアリババやガンホー、スパーセルなどの株式を売却し、現金化を急いでいた。この行動が孫社長との意見の「食い違い」を生んだようだった。

 孫社長は当時、ニケシュ氏について「朝起きたときも、寝るときも常に電話して意見交換をしている」と、まるで恋人のような存在だと明かしていた。それだけに「考え方が違う」というだけで辞めてもらう訳もいかず、結果として「自分が社長を続けたい」という建前上の理由を語らざるを得なかったと思われる。

 孫社長は後継者選びについて、19歳の時に「人生50カ年計画」を立てている。

 20代で事業を興し、30代で軍資金をためる。40代で数千億円規模の企業にし、一勝負をかける。50代で数兆円の企業にし、ビジネスモデルを完成させる。そして60代で後継者に継承する――というものだ。

 現在、孫社長は62歳。後継者に継承するまであと8年弱。それまでに正しい判断で投資戦略を立て直し、新たな後継者を見つけられるのか。厳しい視線が注がれている。

(石川 温/週刊文春デジタル)

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